[P-NV-26-4] 脳卒中者におけるBalance Evaluation Systems Test(BESTest)の因子構造の検討
Keywords:脳卒中, バランス, BESTest
【はじめに】
Balance Evaluation Systems Test(BESTest)は,システム理論に基づきバランスを6つの制御システム(生体力学的制約,安定限界,姿勢変化-予測的姿勢制御,反応的姿勢制御,感覚機能,歩行安定性)として捉えている。Sibleyらによるバランス概念モデルの検討で,BESTestは全ての姿勢制御要素を網羅する唯一の評価指標であることが報告されている。Mini-BESTestなどの短縮版が開発されているが,バランスを6セクションに分類することが妥当であるかの検証は十分には行われていない。そこで,本研究では脳卒中者においてBESTestの測定特性を確証的および探索的因子分析により検討した。
【方法】
3施設の回復期リハビリ病棟にて理学療法を実施した脳卒中者述べ154名(68.8±12.5歳)を対象とした。評価項目は,BESTest,麻痺側下肢Brunnstrom stage(BRS),歩行速度(MWS)とした。統計解析は,まず確証的因子分析にてBESTestがバランスを6セクションの二次元と仮定するモデルの適合を検討した。その後,36項目の動作課題に対して探索的因子分析(主因子法,バリマックス回転)を実施した。因子数は,MAPおよびSMC平行分析に従って決定した。なお,因子負荷量が0.4未満の項目は解析から除外してモデルを構築した。得られた各因子の内的整合性,合計点の因子間とBRS,MWSとの関連性を検討した。統計処理には,IBM SPSS Statistics 22およびAmos 19,HAD 15.0を用いた。
【結果】
BESTestの項目は1.0~3.0(中央値)であり,BRSは5/24/65/41(III/IV/V/VI)名,MWSは1.0±0.6 m/sであった。
確証的因子分析の結果はカイ二乗=1177.5,自由度=588,有意確率=0.001,GFI=0.706,AGFI=0.667,RMSEA=0.081であり,モデルの適合は不良であった。
5因子が最適解であると判断し,最終的に30項目から構成された。5因子は「応用バランス(14項目)」,「ステップ反応(6項目)」,「静止姿勢保持(5項目)」,「姿勢制御(3項目)」,「座位安定性限界(2項目)」とした。累積寄与率は59.5%,内的整合性はα=0.71~0.94,因子間相関はrs=0.24~0.69(p<0.01),各因子合計点とBRSはrs=0.16~0.54(第4因子以外p<0.01),MWSはr=0.34~0.82(p<0.01)であった。
【結論】
脳卒中者においてBESTestが示す6セクションの分類は適合が不良であり,探索的因子分析では5因子に分類された。各因子とBESTestセクションの関係としては,複数のセクションの項目から構成された因子やセクションの項目が分かれた因子で構成される特徴が認められた。今回,「応用バランス」以外の因子はBESTestセクションに比べ少ない項目で構成されており,バランスを個別かつ簡潔に評価できる可能性が示唆された。また,本結果では運動麻痺や歩行速度と関連性の低い因子が存在し,それらを独立した要素として評価することには意義があると考えられた。今回の結果は,脳卒中者に対する臨床でのバランス介入における問題点把握の一助になると考える。
Balance Evaluation Systems Test(BESTest)は,システム理論に基づきバランスを6つの制御システム(生体力学的制約,安定限界,姿勢変化-予測的姿勢制御,反応的姿勢制御,感覚機能,歩行安定性)として捉えている。Sibleyらによるバランス概念モデルの検討で,BESTestは全ての姿勢制御要素を網羅する唯一の評価指標であることが報告されている。Mini-BESTestなどの短縮版が開発されているが,バランスを6セクションに分類することが妥当であるかの検証は十分には行われていない。そこで,本研究では脳卒中者においてBESTestの測定特性を確証的および探索的因子分析により検討した。
【方法】
3施設の回復期リハビリ病棟にて理学療法を実施した脳卒中者述べ154名(68.8±12.5歳)を対象とした。評価項目は,BESTest,麻痺側下肢Brunnstrom stage(BRS),歩行速度(MWS)とした。統計解析は,まず確証的因子分析にてBESTestがバランスを6セクションの二次元と仮定するモデルの適合を検討した。その後,36項目の動作課題に対して探索的因子分析(主因子法,バリマックス回転)を実施した。因子数は,MAPおよびSMC平行分析に従って決定した。なお,因子負荷量が0.4未満の項目は解析から除外してモデルを構築した。得られた各因子の内的整合性,合計点の因子間とBRS,MWSとの関連性を検討した。統計処理には,IBM SPSS Statistics 22およびAmos 19,HAD 15.0を用いた。
【結果】
BESTestの項目は1.0~3.0(中央値)であり,BRSは5/24/65/41(III/IV/V/VI)名,MWSは1.0±0.6 m/sであった。
確証的因子分析の結果はカイ二乗=1177.5,自由度=588,有意確率=0.001,GFI=0.706,AGFI=0.667,RMSEA=0.081であり,モデルの適合は不良であった。
5因子が最適解であると判断し,最終的に30項目から構成された。5因子は「応用バランス(14項目)」,「ステップ反応(6項目)」,「静止姿勢保持(5項目)」,「姿勢制御(3項目)」,「座位安定性限界(2項目)」とした。累積寄与率は59.5%,内的整合性はα=0.71~0.94,因子間相関はrs=0.24~0.69(p<0.01),各因子合計点とBRSはrs=0.16~0.54(第4因子以外p<0.01),MWSはr=0.34~0.82(p<0.01)であった。
【結論】
脳卒中者においてBESTestが示す6セクションの分類は適合が不良であり,探索的因子分析では5因子に分類された。各因子とBESTestセクションの関係としては,複数のセクションの項目から構成された因子やセクションの項目が分かれた因子で構成される特徴が認められた。今回,「応用バランス」以外の因子はBESTestセクションに比べ少ない項目で構成されており,バランスを個別かつ簡潔に評価できる可能性が示唆された。また,本結果では運動麻痺や歩行速度と関連性の低い因子が存在し,それらを独立した要素として評価することには意義があると考えられた。今回の結果は,脳卒中者に対する臨床でのバランス介入における問題点把握の一助になると考える。