[P-RS-09-2] 高齢重症肺炎患者に対する起立-着席運動の早期介入効果
Keywords:肺炎, 早期リハビリテーション, 起立-着席運動
【はじめに,目的】
肺炎は日本の死因第3位であり,市中肺炎罹患者の7割が65歳以上の高齢者である。また,肺炎治療期間の安静臥床により廃用性筋萎縮を生じ,不可逆的なADL能力低下を来たすことも少なくない。今回,中等度以上の肺炎を起こした高齢患者に対し,発症後早期より起立-着席運動(以下起立)を行い,短期間で発症前のADLまで改善した例を多く経験した。考察を含めてその介入方法について報告する。
【方法】
当院では医師の指示のもと,自覚症状に注意し,血中酸素飽和度や心拍数,血圧などをモニターしながら肺炎発症早期より起立を行う。起立は身体状態に応じてペース,回数やシートの高さで負荷量を調節し実施した。起立が困難な場合には,ベッド上での抵抗運動にて運動量・筋活動量の確保に努め,可能となれば起立へと移行した。
対象は2011年4月から2016年3月の5年間で当院に肺炎で自宅より直接入院した197例のうち,(1)発症前に屋内歩行及びセルフケア(整容・更衣・トイレ動作)が自立,(2)成人市中肺炎重症度分類(A-DROP)で中等度以上の2項目を満たした31例(男性23例,女性8例,平均年齢87.7±6.3歳)とした。調査項目は,リハビリテーション(以下リハ)開始日数,起立開始日数,入院日数,入院時A-DROP,認知症の有無,運動の自発性の有無,1日(午前午後合計)の平均起立回数(開始時・退院時),病前ADLの維持率,自宅復帰率である。
【結果】
リハ開始日数:1.9±0.7日,起立開始日数:2.1±1.8日,入院日数:18.1±12.4日(5~37日),A-DROP:「中等度」26例(83.9%),「重症」3例(9.7%),「超重症」2例(6.4%),認知症:「あり」7例,「なし」24例,運動自発性:「あり」24例,「なし」7例,1日の平均起立回数:開始時186.5±111.3回,退院時290.3±129.4回,病前ADLの維持率:90.3%(28例),自宅復帰率:93.5%(29例)であった。ADLが低下した3例は,全例が中等度肺炎,1例が認知症であり,全例で自発性がないため退院時平均起立回数は全体の平均と比較して少なかった。
【結論】
肺炎加療中の理学療法に関する報告はまれである。前本らは,肺炎を発症した高齢者のADL維持群とADL低下群との間には年齢(維持群76.4歳,低下群84.3歳)と離床開始日(維持群4.4日,低下群11.3日)のみに有意差があったことや,自宅でのADLが自立していた53%の高齢者に退院時ADLの低下を認めたことなどを報告している。本研究結果では,平均年齢87.7±6.3歳と高齢者が対象だったが,90.3%の症例で病前のADLを維持できた。このことから,起立開始日数が2.1±1.8日と短く廃用を最小限にできたこと,ならびに,肺炎急性期において実施するリハビリは起立がADLの維持に有効であったことが示唆された。
肺炎は日本の死因第3位であり,市中肺炎罹患者の7割が65歳以上の高齢者である。また,肺炎治療期間の安静臥床により廃用性筋萎縮を生じ,不可逆的なADL能力低下を来たすことも少なくない。今回,中等度以上の肺炎を起こした高齢患者に対し,発症後早期より起立-着席運動(以下起立)を行い,短期間で発症前のADLまで改善した例を多く経験した。考察を含めてその介入方法について報告する。
【方法】
当院では医師の指示のもと,自覚症状に注意し,血中酸素飽和度や心拍数,血圧などをモニターしながら肺炎発症早期より起立を行う。起立は身体状態に応じてペース,回数やシートの高さで負荷量を調節し実施した。起立が困難な場合には,ベッド上での抵抗運動にて運動量・筋活動量の確保に努め,可能となれば起立へと移行した。
対象は2011年4月から2016年3月の5年間で当院に肺炎で自宅より直接入院した197例のうち,(1)発症前に屋内歩行及びセルフケア(整容・更衣・トイレ動作)が自立,(2)成人市中肺炎重症度分類(A-DROP)で中等度以上の2項目を満たした31例(男性23例,女性8例,平均年齢87.7±6.3歳)とした。調査項目は,リハビリテーション(以下リハ)開始日数,起立開始日数,入院日数,入院時A-DROP,認知症の有無,運動の自発性の有無,1日(午前午後合計)の平均起立回数(開始時・退院時),病前ADLの維持率,自宅復帰率である。
【結果】
リハ開始日数:1.9±0.7日,起立開始日数:2.1±1.8日,入院日数:18.1±12.4日(5~37日),A-DROP:「中等度」26例(83.9%),「重症」3例(9.7%),「超重症」2例(6.4%),認知症:「あり」7例,「なし」24例,運動自発性:「あり」24例,「なし」7例,1日の平均起立回数:開始時186.5±111.3回,退院時290.3±129.4回,病前ADLの維持率:90.3%(28例),自宅復帰率:93.5%(29例)であった。ADLが低下した3例は,全例が中等度肺炎,1例が認知症であり,全例で自発性がないため退院時平均起立回数は全体の平均と比較して少なかった。
【結論】
肺炎加療中の理学療法に関する報告はまれである。前本らは,肺炎を発症した高齢者のADL維持群とADL低下群との間には年齢(維持群76.4歳,低下群84.3歳)と離床開始日(維持群4.4日,低下群11.3日)のみに有意差があったことや,自宅でのADLが自立していた53%の高齢者に退院時ADLの低下を認めたことなどを報告している。本研究結果では,平均年齢87.7±6.3歳と高齢者が対象だったが,90.3%の症例で病前のADLを維持できた。このことから,起立開始日数が2.1±1.8日と短く廃用を最小限にできたこと,ならびに,肺炎急性期において実施するリハビリは起立がADLの維持に有効であったことが示唆された。