[P-RS-09-3] COPD患者と健常高齢者における6分間歩行能力の比較
Keywords:COPD, 6分間歩行, 修正Borgスケール
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患患者(以下COPD患者)は,有病率8.6%であり厚生労働省の発表において死亡率第9位と増加傾向にある。また加齢に伴う運動機能低下,肺炎などの併発に伴い理学療法に難渋する例も少なくない。当院においてもCOPD患者が骨折,変形性関節症などを合併し受傷前の運動機能に回復できない場合や運動中の呼吸苦が強くなる症例を経験し,二次的合併症を含めた包括的な対応が必要と考える。今回われわれは在宅生活が自立しているCOPD患者の運動機能を評価するために,当院に通院のされているCOPD患者のうち,HOT導入がされていないCOPD患者と健常高齢者の6分間歩行能力を比較した。
【方法】
対象は当院に定期的に通院されているCOPD患者で,ADLが自立しHOT導入がされていない22名(以下:COPD群 男性14名,女性8名 平均年齢74.6±9.2歳)と,健常高齢者は呼吸器および循環器疾患がなく日常生活に支障となる運動器疾患のない10名(以下:健常者群 男性4名,女性6名 平均年齢70±4.8歳)である。6分間歩行試験は6mの距離で両端にコーン設置し,通常速度にて6分間歩行を実施した。その際,エニィパルウォーク(フクダ電子)を使用し,経過とともに歩行距離,安静時・2分後・4分後・終了時の静脈血酸素飽和度(以下SpO2),脈拍数,修正Borgスケール(呼吸苦と下肢疲労感)を聴取し計測した。SpO2および脈拍数の変化は二元配置分散分析を使用し,歩行距離および呼吸苦,下肢疲労感の比較にはマンホイットニー検定を行い,統計学的有意水準は5%にて検討した。
【結果】
COPD群において,歩行経過に伴いSpO2低下と脈拍数上昇を認めたが健常者群との有意差は認められなかった。また歩行距離においても両群に有意差は認められなかった。呼吸苦,下肢疲労感はCOPD群で有意差を認め,歩行経過に伴い呼吸苦と下肢疲労感を認めた(P<0.05)。
【結論】
ADLが自立しHOT導入されていないCOPD患者においては,同世代の健常者と同程度の歩行能力を有し,SpO2および脈拍数においても有意差を認めなかった。しかし,呼吸苦と下肢疲労感において有意差がみられた。これは「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」により,COPDの全身的影響として骨格筋機能障害を合併するとされており,今回のCOPD群においてもこれが生じていると考える。また呼吸苦と下肢疲労感を認めることは,日常生活において活動意欲に深く関係する。したがってCOPD患者が呼吸状態の悪化や運動器疾患に起因し,活動意欲の低下を招くことにより生活圏の狭小化が予測される。よってADL自立しているCOPD患者においても予防的対策として早期より介入する必要があると考える。
慢性閉塞性肺疾患患者(以下COPD患者)は,有病率8.6%であり厚生労働省の発表において死亡率第9位と増加傾向にある。また加齢に伴う運動機能低下,肺炎などの併発に伴い理学療法に難渋する例も少なくない。当院においてもCOPD患者が骨折,変形性関節症などを合併し受傷前の運動機能に回復できない場合や運動中の呼吸苦が強くなる症例を経験し,二次的合併症を含めた包括的な対応が必要と考える。今回われわれは在宅生活が自立しているCOPD患者の運動機能を評価するために,当院に通院のされているCOPD患者のうち,HOT導入がされていないCOPD患者と健常高齢者の6分間歩行能力を比較した。
【方法】
対象は当院に定期的に通院されているCOPD患者で,ADLが自立しHOT導入がされていない22名(以下:COPD群 男性14名,女性8名 平均年齢74.6±9.2歳)と,健常高齢者は呼吸器および循環器疾患がなく日常生活に支障となる運動器疾患のない10名(以下:健常者群 男性4名,女性6名 平均年齢70±4.8歳)である。6分間歩行試験は6mの距離で両端にコーン設置し,通常速度にて6分間歩行を実施した。その際,エニィパルウォーク(フクダ電子)を使用し,経過とともに歩行距離,安静時・2分後・4分後・終了時の静脈血酸素飽和度(以下SpO2),脈拍数,修正Borgスケール(呼吸苦と下肢疲労感)を聴取し計測した。SpO2および脈拍数の変化は二元配置分散分析を使用し,歩行距離および呼吸苦,下肢疲労感の比較にはマンホイットニー検定を行い,統計学的有意水準は5%にて検討した。
【結果】
COPD群において,歩行経過に伴いSpO2低下と脈拍数上昇を認めたが健常者群との有意差は認められなかった。また歩行距離においても両群に有意差は認められなかった。呼吸苦,下肢疲労感はCOPD群で有意差を認め,歩行経過に伴い呼吸苦と下肢疲労感を認めた(P<0.05)。
【結論】
ADLが自立しHOT導入されていないCOPD患者においては,同世代の健常者と同程度の歩行能力を有し,SpO2および脈拍数においても有意差を認めなかった。しかし,呼吸苦と下肢疲労感において有意差がみられた。これは「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」により,COPDの全身的影響として骨格筋機能障害を合併するとされており,今回のCOPD群においてもこれが生じていると考える。また呼吸苦と下肢疲労感を認めることは,日常生活において活動意欲に深く関係する。したがってCOPD患者が呼吸状態の悪化や運動器疾患に起因し,活動意欲の低下を招くことにより生活圏の狭小化が予測される。よってADL自立しているCOPD患者においても予防的対策として早期より介入する必要があると考える。