The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本支援工学理学療法学会 » ポスター発表

[P-SK-03] ポスター(支援工学)P03

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本支援工学理学療法学会

[P-SK-03-1] 下肢切断のリハビリテーションに対する理学療法士の実態調査
~神奈川県内の急性期・回復期病院を対象に~

島津 尚子, 隆島 研吾, 小池 友佳子 (神奈川県立保健福祉大学)

Keywords:下肢切断, 理学療法, 実態調査

【はじめに,目的】理学療法の対象となる疾患で「切断」は全体の0.73%と少なく,切断者のリハビリテーション(以下リハ)に関する経験を積み重ねることが難しい。そのため,理学療法士(以下PT)がリハを施行する際に苦慮するとの声は聞かれるが,どの様な点に困難や不安を感じているのかといった詳細な報告はない。今回,下肢切断者のリハに関するPTの現状と問題点を把握することを目的とし,神奈川県内の急性期・回復期病院に勤務するPTを対象にアンケート調査を行った。

【方法】対象は,神奈川県内の急性期・回復期に勤務する経験年数3年目以上のPT(54施設270名)を対象とした。アンケートは郵送による無記名自記式質問紙法で,返信をもち同意を得たものとした。調査項目は,基本属性,下肢切断者に対するリハの経験,リハ施行における不安の有無・程度,不安に対する解消策とした。下肢切断者のリハに対する不安の有無により2群に分け,各評価・プログラム内容に対する自信との関連をχ2乗検定にて検討した。有意水準は5%とした。

【結果】アンケート回収率は37.0%,PT経験年数は9.41±6.61年,勤務先は急性期56.6%,回復期43.4%であった。下肢切断者に対するリハは94.9%が経験しており,経験数は4名以下が56.6%であり,他の疾患と比較し経験数は限定されていた。また,リハを施行するうえで79.8%が不安を有し,切断者のリハ経験数は,不安がある群で有意に少なかった。不安の有無により自信に差がみられた項目は,評価は断端部・疼痛・歩行であり,プログラムは断端管理,義足に関する項目(ソケット・継手の選択・調整,歩行練習),ADL練習,実用的移動手段の決定,生活指導であった。不安がある群では,断端管理,義足ソケット・継手の調整に不安が強い傾向がみられた。不安理由は,切断者のリハの経験不足が44.6%,義足に対する知識不足が30.6%,義足処方の経験がないが14.9%であった。不安を解消するために希望する解決策は,周囲に相談できるスタッフがいることが34.5%,切断のリハ講習会の開催が24.8%,義足に関する講習会の開催が25.5%であった。

【結論】下肢切断者数自体が少ないため,他の疾患のように経験が積み重ね辛く,同一施設内だけでリハの経験・知識を蓄積していくことは難しい。リハを行うにあたり,不安の強い断端管理や義足に関する部分は,医師や義肢装具士などの他職種との連携を十分に図り,進めていくことが重要と思われた。また,下肢切断者に対し,より質の高いリハを提供するためには,PTの知識・技術の向上が必要である。経験が少ないため,下肢切断者の予後予測や退院後の生活がイメージできないとの不安も聞かれ,これらに対しては多施設で情報を共有したり,周辺地域での相談できるネットワークづくりが重要であると考える。