The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本支援工学理学療法学会 » ポスター発表

[P-SK-06] ポスター(支援工学)P06

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本支援工学理学療法学会

[P-SK-06-1] 大腿切断後,義足非装着にて50年経過した後期高齢者に対する義足処方と理学療法介入の意義

岩下 航大, 梅澤 慎吾, 里宇 文生, 永橋 侑, 臼井 二美男 (公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター)

Keywords:義足, 高齢者, 切断

【はじめに 目的】

理学療法ガイドラインでは義足歩行の予測因子として①認知機能②ADL自立度③体力④片脚立位⑤術前の移動性とされ,切断後早期の義足製作と理学療法介入が義足での生活自立度を決めるとされている。しかし,本症例は50年前(20代)に骨肉腫を原疾患とし大腿切断に至り仮義足(治療用義足)を処方するも義足適合困難からその後50年間,義足未装着(両松葉杖)にて日常生活を過ごしてきた症例であった。後期高齢者となった大腿切断者に対しての義足処方(更生用義足),義足構成要素の選択,義肢装具士との連携,理学療法士が行う介入意義について経過とともに考察する。


【方法】症例提示

75歳,女性,仮義足適合困難から50年間,整形外科,リハビリテーション科,形成外科に通院履歴があるが義足処方の提案はなかった症例でもある。平成28年,非切断肢変形性膝関節症(grade2,NRS6,膝関節内反変形,足底アーチ低下)診断,疼痛(荷重時・動作時疼痛)が顕著となり日常生活に支障をきたし大腿義足を勧められる。当センターにて義足製作,理学療法介入開始。初期評価:BMI27,断端長13cm,切断側屈曲拘縮10°,非切断側膝関節伸展-10°,MMT切断側股関節周囲3,片脚立位困難


【方法】経過・介入内容

1,切断からの経過年数2,短断端,軟部組織多い3,屈曲拘縮4,後期高齢者5,変形性膝関節症,荷重時痛5,松葉杖生活歴が長い。以上の条件から理学療法介入初期より義肢装具士と連携し義足構成要素に対して荷重し易い環境,大腿義足装着の恩恵がどこにあるかを段階的に本人・ご家族にも随時説明を行いながら介入を進めた。義足構成要素は≪初期屈曲角15°,キャッチピン式ライナー,膝継手:固定膝(ottobock社3R41強化プラスチック軽量・ロック時音あり,)平行移動パーツ併用,足部:単軸足⇒トライアス,支持性・懸垂性向上のためシレジアバンド装着》とした。軟性支柱付き膝装具,足底にインソール処方。切断側股関節ストレッチ,筋力強化(切断側徒手抵抗)義足装着練習,荷重練習⇒平行棒内⇒平行棒周囲⇒平行棒外歩行(両杖・片杖・リハ室内)⇒階段・傾斜⇒屋外歩行不整地(T字杖)⇒電車(片松葉orT時杖)


【結果】介入結果

最終評価には切断側屈曲拘縮5°膝関節疼痛も軽減し(NRS3,静止立位荷重比:切断側28.4%⇒47.3%非切断側71.6⇒52.7%)10m歩行12秒,6分間歩220m,TUG16秒,となり歩行能力も向上。平地・傾斜・不整地練習毎にアライメント調整を行い,最終的には,屋外応用歩行(階段,傾斜,不整地)電車(T字杖or片松葉杖)自立LVとなり義足装着にて入院14週目で独歩退院。


【結論】義足歩行予測因子①②③⑤とは整合性のある症例であった。④の片脚立位は困難であったが初期より身体的要因を考慮した義足環境により早期に立位保持が可能となった。義足を生活の一部とするには環境(人的・物的資源)や時間を要することが必至だが,適切な手続きを踏むことで高齢切断者が立位,歩行自立となる可能性は高くなると考える。