The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本支援工学理学療法学会 » ポスター発表

[P-SK-06] ポスター(支援工学)P06

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本支援工学理学療法学会

[P-SK-06-4] 表面筋電図を用いてロボットスーツHALの効果検証
脊髄損傷1例での経験

下川 貴大, 岡本 和久, 横瀬 祟光 (独立行政法人国立病院機構徳島病院リハビリテーション科)

Keywords:HAL, 筋電図, 脊髄損傷

【はじめに,目的】

近年,Hybrid Assistive Limb(以下,HAL)を使用したリハビリテーションが注目をされている。効果判定の評価として,10m歩行テストでの歩行速度や歩行率,歩幅などの報告が多い。しかし,表面筋電図を用いた報告は少ない。本報告では,脊髄損傷の患者に対してHALを使用したリハビリテーションを行い,その前後に筋電図などを用いて効果を検証する。

【方法】

症例は,脊髄損傷例66歳,男性(Frankelの分類C,wisci Levels16)に対して,HALを使用した歩行練習を全9回実施した。実施期間は,3週間で週に3回の頻度で全9回実施した。1回あたりの時間は約30分とした。評価項目はHALリハ実施前後で,10m歩行テストと表面筋電図(小沢医科器機社製,EMGマスター)で測定した。10m歩行テストでは2回計測し,その平均値から歩行速度(m/min)と歩数を算出し,平均値を算出した。表面筋電図では,積分値(単位:μV)とwavelet周波数(単位:Hz)の平均値を算出し,歩行中の筋活動のタイミングとリズムを観察した。対象とした筋は,運動障害の程度が強い右下肢の,大腿直筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,腓腹筋に電極は貼り,右足底部にフットスイッチを貼付した。電極間距離は10mmとした。筋電図のデータは,任意に取り出した歩行開始5歩目から7歩目の生データから積分値を算出した。周波数解析はwavelet周波数を用いて,任意に取り出した全歩行周期の歩行開始から5歩目から7歩目の平均値を算出した。又,5目から7歩目の歩行中の筋活動のタイミングとリズムを観察した。

【結果】

10m歩行テスト(実施前/実施後)では,速度は23.4/23(m/min)となり,歩数は25.5歩/25.5歩となった。表面筋電図では,右大腿二頭筋の活動が低下した。前脛骨筋と腓腹筋の活動が上昇した。wavelet周波数解析では,右大腿直筋は上昇し,右前脛骨筋と右腓腹筋は低下した。筋活動のリズムとタイミングは,大腿二頭筋の発揮のタイミングが立脚初期に近づき,前脛骨筋の活動に二峰性が見られ,腓腹筋の活動が向上した。

【結論】

本症例では,結果として,過剰努力していた右大腿二頭筋の発揮張力が下がり,拮抗筋の右大腿直筋は周波数が高くなったことで,筋発揮力を発揮させやすい状態になったのではないかと考える。これらのことが反映し,立脚中期で活動していた大腿二頭筋が立脚初期での活動が確認できるようなった。又,前脛骨筋と腓腹筋でも,一定のリズムの乱れが見られる。これはパターン化されていた動作を崩し,新たな運動戦略を獲得しようとしていると考える。