[P-SK-07-2] 極軽度の早朝運動が睡眠と運動機能,QOLに与える影響
Keywords:高齢者, 睡眠, QOL
【はじめに,目的】
睡眠に問題を抱える高齢者は,運動介入により睡眠状況が改善するとの報告があるが,これらの多くが,長期間にわたる比較的高い運動負荷を用いた介入を採用している。しかし,日常の活動度が低い高齢者には運動の量や時間・期間を配慮することが必要であると思われる。本研究は,地域に居住し,介護保険の適応を受けた者を含む活動度の低い高齢者は,早朝に短時間で比較的低負荷の運動を行うことによって,睡眠のほか,運動機能やQOLがどのように変化するかを明らかにすることを目的に実施した。
【方法】
被験者は,介護保険適応認定で要支援1認定4人,要支援2認定5人を含む地域に居住する高齢者12人(男3人,女9人;平均年齢78.3±5.5歳)であった。被験者は2週間にわたり,Ambulating Monitoring, Inc.(AMI)製腕時計型アクチグラフを非利き手側前腕末梢部に装着し,記録された睡眠状況をAMI製解析ソフトウェアAW2にて解析した。被験者は最初の1週目はそれまでと同様の日常生活を行い,後半の2週間には起床後早期に,臥位と座位にて下肢および体幹の柔軟性を高める運動,上下左右・斜め方向の眼球運動,立位にて踵上げ及び爪先引き上げ運動,椅子の背もたれを上肢で把持して,軽度の下肢屈伸運動等の軽い運動各3回を15分程度かけて行った。1週目と2週目の最終日の午前中に30秒椅子立ち上がりテスト(CS30),機能的リーチテスト(FRT),日本版Epworth Sleepiness Scaleによる主観的眠気度,日本語版POMS短縮版(Profile of Mood States-Brief Form Japanese Version)による生活の質(QOL)を評価した。統計学的解析は統計ソフトウェアSPSS Ver.22.0(日本アイ・ビー・エム社製)を用い,Shapiro-Wilk検定にてデータの正規性を確認した後,正規性が得られたときは対応のあるt検定を,得られないときはMann-WhitneyのU検定を行った。危険率は5%に設定した。
【結果】
早朝運動を実施しない1週目と実施した2週目最終日の前夜の睡眠を比較すると,実施週は実施しなかった週に比し,合計睡眠時間と全睡眠時間は有意に短くなった(P<0.01,P<0.05)。覚醒エピソード数と睡眠エピソード数は減少する傾向が認められた。一方,CS30,FRT,ESS,QOLには差を認めなかった。
【結論】
本研究では,早朝の軽く短い時間の運動実施によって,睡眠の量的指標である睡眠時間は短くなるものの,質的指標である覚醒及び睡眠エピソード数では減少し,運動機能,眠気度,QOLは変化かを受けなかった。このことは,睡眠が適正化されることによって,たとえ睡眠時間が短くなっても眠気指標のほか日常生活に悪影響は与えず,むしろメリハリの生活となったことが示唆された。今後は,運動期間を長くし,各人に沿った運動を選択して実施することにより,QOLを含む睡眠以外のパラメータにも望ましい結果が得られるかを確認する必要性がある。
睡眠に問題を抱える高齢者は,運動介入により睡眠状況が改善するとの報告があるが,これらの多くが,長期間にわたる比較的高い運動負荷を用いた介入を採用している。しかし,日常の活動度が低い高齢者には運動の量や時間・期間を配慮することが必要であると思われる。本研究は,地域に居住し,介護保険の適応を受けた者を含む活動度の低い高齢者は,早朝に短時間で比較的低負荷の運動を行うことによって,睡眠のほか,運動機能やQOLがどのように変化するかを明らかにすることを目的に実施した。
【方法】
被験者は,介護保険適応認定で要支援1認定4人,要支援2認定5人を含む地域に居住する高齢者12人(男3人,女9人;平均年齢78.3±5.5歳)であった。被験者は2週間にわたり,Ambulating Monitoring, Inc.(AMI)製腕時計型アクチグラフを非利き手側前腕末梢部に装着し,記録された睡眠状況をAMI製解析ソフトウェアAW2にて解析した。被験者は最初の1週目はそれまでと同様の日常生活を行い,後半の2週間には起床後早期に,臥位と座位にて下肢および体幹の柔軟性を高める運動,上下左右・斜め方向の眼球運動,立位にて踵上げ及び爪先引き上げ運動,椅子の背もたれを上肢で把持して,軽度の下肢屈伸運動等の軽い運動各3回を15分程度かけて行った。1週目と2週目の最終日の午前中に30秒椅子立ち上がりテスト(CS30),機能的リーチテスト(FRT),日本版Epworth Sleepiness Scaleによる主観的眠気度,日本語版POMS短縮版(Profile of Mood States-Brief Form Japanese Version)による生活の質(QOL)を評価した。統計学的解析は統計ソフトウェアSPSS Ver.22.0(日本アイ・ビー・エム社製)を用い,Shapiro-Wilk検定にてデータの正規性を確認した後,正規性が得られたときは対応のあるt検定を,得られないときはMann-WhitneyのU検定を行った。危険率は5%に設定した。
【結果】
早朝運動を実施しない1週目と実施した2週目最終日の前夜の睡眠を比較すると,実施週は実施しなかった週に比し,合計睡眠時間と全睡眠時間は有意に短くなった(P<0.01,P<0.05)。覚醒エピソード数と睡眠エピソード数は減少する傾向が認められた。一方,CS30,FRT,ESS,QOLには差を認めなかった。
【結論】
本研究では,早朝の軽く短い時間の運動実施によって,睡眠の量的指標である睡眠時間は短くなるものの,質的指標である覚醒及び睡眠エピソード数では減少し,運動機能,眠気度,QOLは変化かを受けなかった。このことは,睡眠が適正化されることによって,たとえ睡眠時間が短くなっても眠気指標のほか日常生活に悪影響は与えず,むしろメリハリの生活となったことが示唆された。今後は,運動期間を長くし,各人に沿った運動を選択して実施することにより,QOLを含む睡眠以外のパラメータにも望ましい結果が得られるかを確認する必要性がある。