[P-SN-02-4] 神奈川県立特別支援学校における知的障害のある児童生徒への集団・個別支援
Keywords:養護学校, 知的障害, 評価
【はじめに,目的】
平成28年現在,神奈川県立特別支援学校には自立活動教諭(専門職)として10名の理学療法士(以下学校PT)が配置されている。知的障害児の運動機能面に対するPTの関わりが全国的に広まりつつある中,神奈川県立特別支援学校に配置されている学校PTでは平成26年度より知的障害のある児童生徒に対する学校支援について協議を重ねてきた。実践例として(1)集団で行う「からだ作り」の授業改善に向けた取組の経過と,平成27年度に作成した(2)個別評価表について以下に報告する。
【方法】
(1)平成26年度より年3回,学校PTの他,作業療法士,臨床心理士,体育指導教員等で授業改善に向けて協議し,視覚支援,物品使用等の環境設定,教員との協働といった視点から支援策を考えた。それを参考に,平成27年度A特別支援学校知的障害教育部門高等部の生徒を,文部科学省の新体力テストの結果から,「ストレッチグループ」「姿勢グループ」「バランスグループ」「フットワークグループ」といった4つの集団に分け,週1回,各30分,実態に応じた運動を約半年間行った。年度末に,新体力テストを再度実施し,前期と後期の結果を比較した。また生徒の集団運動に対する満足度をアンケート式で調査した。
(2)学校PTの支援の際には,教員と共に評価表による実態把握をし,支援方法の検討を行った。評価表を使用した結果について,それぞれのの意見を集約し,教育につながる評価表となるよう改善を図った。
【結果】
(1)前期と後期の新体力テストのデータに各グループとも著明な変化は認められなかったが,障害の程度が重い生徒ほど,各データは低値となる傾向があった。また,障害の程度による改善率の差異はみられなかった。生徒の満足度アンケートからは,生徒自身による運動課題や運動の必要性についての認識がすすんだことがわかった。また,集団運動に対する満足度が高かった。
(2)評価表については,教員からは情報量が多い,応援体制を組まなければ実施しにくい,といった意見がでた。学校PTからは,全体を評価できることで他職種に相談をつなげやすい,児童生徒の実態を捕えやすくなったが具体的な支援策の提案をすることが難しい,模倣に関する評価は障害の程度が重い生徒には取り組みにくい,といった意見がでた。
【結論】
集団運動の取組によって生徒自身が主体的に健康管理する意識を持てたことは良かったが,身体機能が改善するためには運動頻度や継続期間を増やすことや,生徒の障害の程度や状態によって支援方法に工夫を加える必要もあるだろう。また評価表は今後も項目の整理が必要ではあるが,集団運動だけでは対応しきれない個別支援時には有用であり,集団と個別の両者の支援をしていくことが学校PTに求められている。知的障害のある児童生徒が健康な生活を送り,自信をもって社会に出ていくことができるよう,特別支援学校教育の中で学校PTができることは大いにある。
平成28年現在,神奈川県立特別支援学校には自立活動教諭(専門職)として10名の理学療法士(以下学校PT)が配置されている。知的障害児の運動機能面に対するPTの関わりが全国的に広まりつつある中,神奈川県立特別支援学校に配置されている学校PTでは平成26年度より知的障害のある児童生徒に対する学校支援について協議を重ねてきた。実践例として(1)集団で行う「からだ作り」の授業改善に向けた取組の経過と,平成27年度に作成した(2)個別評価表について以下に報告する。
【方法】
(1)平成26年度より年3回,学校PTの他,作業療法士,臨床心理士,体育指導教員等で授業改善に向けて協議し,視覚支援,物品使用等の環境設定,教員との協働といった視点から支援策を考えた。それを参考に,平成27年度A特別支援学校知的障害教育部門高等部の生徒を,文部科学省の新体力テストの結果から,「ストレッチグループ」「姿勢グループ」「バランスグループ」「フットワークグループ」といった4つの集団に分け,週1回,各30分,実態に応じた運動を約半年間行った。年度末に,新体力テストを再度実施し,前期と後期の結果を比較した。また生徒の集団運動に対する満足度をアンケート式で調査した。
(2)学校PTの支援の際には,教員と共に評価表による実態把握をし,支援方法の検討を行った。評価表を使用した結果について,それぞれのの意見を集約し,教育につながる評価表となるよう改善を図った。
【結果】
(1)前期と後期の新体力テストのデータに各グループとも著明な変化は認められなかったが,障害の程度が重い生徒ほど,各データは低値となる傾向があった。また,障害の程度による改善率の差異はみられなかった。生徒の満足度アンケートからは,生徒自身による運動課題や運動の必要性についての認識がすすんだことがわかった。また,集団運動に対する満足度が高かった。
(2)評価表については,教員からは情報量が多い,応援体制を組まなければ実施しにくい,といった意見がでた。学校PTからは,全体を評価できることで他職種に相談をつなげやすい,児童生徒の実態を捕えやすくなったが具体的な支援策の提案をすることが難しい,模倣に関する評価は障害の程度が重い生徒には取り組みにくい,といった意見がでた。
【結論】
集団運動の取組によって生徒自身が主体的に健康管理する意識を持てたことは良かったが,身体機能が改善するためには運動頻度や継続期間を増やすことや,生徒の障害の程度や状態によって支援方法に工夫を加える必要もあるだろう。また評価表は今後も項目の整理が必要ではあるが,集団運動だけでは対応しきれない個別支援時には有用であり,集団と個別の両者の支援をしていくことが学校PTに求められている。知的障害のある児童生徒が健康な生活を送り,自信をもって社会に出ていくことができるよう,特別支援学校教育の中で学校PTができることは大いにある。