第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本小児理学療法学会 » ポスター発表

[P-SN-03] ポスター(小児)P03

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本小児理学療法学会

[P-SN-03-1] 先天性多発性関節拘縮症を発症した乳児期女児に対する理学療法介入効果について

高嶋 美和1, 菊次 幸平1, 池田 拓郎2, 岡 真一郎2, 高嶋 幸男1 (1.柳川療育センター, 2.国際医療福祉大学)

キーワード:先天性多発性関節拘縮症, 乳児期, 理学療法介入効果

【はじめに,目的】

先天性多発性関節拘縮症(AMC)は,非進行性の複数の関節拘縮と筋萎縮を主症状とする症候群である。しかしながら,生後6ヶ月未満の乳児に対する報告例は少ない。今回,AMCと診断された乳児初期の女児に対する理学療法介入効果について報告することを目的とする。

【方法】

在胎40週0日,2550gで出生した0歳6ヶ月の女児。両側対称性の肘伸展拘縮,手屈曲拘縮,手指伸展拘縮,膝伸展拘縮(脱臼),両足内反尖足があり,AMCと診断された。MRI,代謝,遺伝子,視力,聴力検査には異常を認めず,整形外科でLCCギプス装着を開始した。生後5週目に両膝関節脱臼に対するギプス治療を開始し,生後6週目に当センター初診,生後7週目より理学療法を開始した。初診時の遠城寺式・乳幼児分析的発達検査では,移動運動1ヶ月,手の運動0ヶ月,基本的生活習慣2ヶ月,対人関係2ヶ月,発語2ヶ月,言語理解2ヶ月レベルであった。ROM(以下,右/左,単位°)は,肩関節屈曲80/90,肘関節屈曲30/45,手関節背屈-40/-60,股関節屈曲60/75・伸展-20/-20・外転40/30・内転-5/-5,膝関節屈曲25/10・伸展30/30,足関節背屈-50/-35であり,自発運動は,わずかな頭部の挙上と回旋,両股関節開排位での下肢の抗重力屈曲運動が可能であった。理学療法は1回/週(1日3単位)の頻度で実施し,母親が自宅でも可能な関節運動や歌に合わせた体操(関節可動域運動)の指導,抱っこや浮き輪,バスタオルを用いた姿勢ケアの導入から始め,自発運動を引き出すために,遊びや環境に配慮した。また,生後2ヶ月目より長下肢装具療法を開始した。

【結果】

粗大運動発達は頸定が4ヶ月,寝返りが5ヶ月で可能となり,玩具を見つけると口を近づける,足で触るなどの自発的な遊びがみられるようになった。生後6ヶ月時のROMは,肩関節屈曲130/120,肘関節屈曲60/70,手関節背屈-20/-20,股関節伸展-5/-20・外転40/45・内転15/5,膝関節屈曲35/25・伸展5/15,足関節背屈-25/-35へと改善した。また,発達検査は,移動運動6ヶ月,手の運動0ヶ月,基本的生活習慣5ヶ月,対人関係6ヶ月,発語7ヶ月,言語理解6ヶ月レベルへと変化した。手の自発運動は,生後4ヶ月時に,背臥位で左手上腕を床から持ち上げる動きがみられはじめ,生後6ヶ月時にはボールプール内で,左右肩関節の屈伸と内外転運動を用いたボール遊びが観察された。

【結論】

今回,生後早期からの装具療法と理学療法に加えて,自宅でのトレーニングを実施した結果,ROM改善とともに,児の興味を考慮した遊びの経験が,全般的な発達につながったと考える。この結果は,出生早期からのリハ介入があった症例で,ROM改善や自発運動による筋力増強が基本動作を含む日常生活活動に影響を及ぼしていたとする過去の報告と類似する(坪田ら,1999,勝山ら,2015)。今回の結果は,AMC患児に対する乳児初期の理学療法プログラム立案を考える上での一助となりうる。