[P-SN-03-5] 市中病院における生後3ヶ月の小児脊髄型筋萎縮症(SMA1型)に対する呼吸理学療法の経験
~ブラジル人の男児のケースを通じて~
Keywords:脊髄型筋萎縮症(SMA1型), 外国人患者受入れ医療通訳拠点病院, ブラジル人
【はじめに,目的】
近年,地域在住外国人の増加に伴い,日本語が拙い患者に遭遇することが増加している。当院は,「外国人患者受入れ医療通訳拠点病院」であり,国内19医療機関のうちのひとつである。そのため,国際医療連携に取り組み,外国人の患者にも安心して診療を受けられるよう支援している。今回,主介護者である母親が日本語の拙いブラジル人であり,男児が脊髄型筋萎縮症(Werdnig-Hoffmann病:SMA1型)を発症したことで,在宅における人工呼吸器管理や吸引・排痰手技などが必要となった症例に対し,在宅指導を経験したため報告する。
【方法】
3ヶ月の男児(X日当時)。周生期では正常分娩で出生(在胎週数40週,出生体重3512g,Apgar score1分値9点)。家族背景は父,母,姉(3歳)が同居し,母親の兄弟が隣接県に在住。1ヶ月健診にて低緊張を指摘され当院紹介受診し外来での理学療法(以下:PT)開始(X-89日)。その後SMA1型と診断された。経管栄養やNPPV導入のための入退院を繰り返し,X日に誤嚥性肺炎を契機にした呼吸不全で入院加療となった。
【結果】
X日,誤嚥性肺炎と診断され入院。手関節掌背屈,手指・足趾屈伸が軽度可能。胸郭はベル型。呼吸状態は,陥没呼吸,シーソー呼吸,呼吸音両側換気不良,胸部X線像で右肺野透過性不良。SpO2:100%(10L),HR:150bpm,同日より入院PT開始。翌日呼吸状態が悪化し,挿管され人工呼吸器管理となる(PC-SIMV,FiO2:0.4,PS:7cmH2O,PEEP:5 cmH2O,吸気時間:0.6秒,呼吸回数:15回)。排痰や呼吸介助を実施し,白黄色の喀痰が多量に吸引された。X+18日に単純気管切開術施行,術後右上葉に無気肺出現。日本語が拙く,より不安が助長される母親に対して精神的な支援を行いX+28日より抱っこ開始。X+49日に一般病棟に転棟し在宅指導開始。男児の呼吸苦の訴えに対して,不安な母親に対し,日本語が拙いため,男児の状態を言葉でリアルタイムに詳細に伝達することが困難であり,呼吸介助などのタイミングや回数を指導することに難渋した。また,男児の耐久性を考慮することも何度も指導した。母親は,毎日のPTの手技を詳細に観察して習得した。X+133日に自宅退院となった。
【結論】
本症例は,SMA1型を基盤とした呼吸不全により入院加療となった。全身状態などから本来は,より専門的な病院での対応が望ましいものの,家族の希望が強く,当院での入院加療となった。日本語での詳細なコミュニケーションが困難な場合の呼吸介助などの指導では,母親はより詳細にPTの方法や手技を観察して介助方法を習得することが分かった。そのため,在宅指導の際には,呼吸介助などの問題点を明確にし,それらに対して具体的にどのようにアプローチしているかを繰り返し観察させながら指導することが有用であることが示された。
近年,地域在住外国人の増加に伴い,日本語が拙い患者に遭遇することが増加している。当院は,「外国人患者受入れ医療通訳拠点病院」であり,国内19医療機関のうちのひとつである。そのため,国際医療連携に取り組み,外国人の患者にも安心して診療を受けられるよう支援している。今回,主介護者である母親が日本語の拙いブラジル人であり,男児が脊髄型筋萎縮症(Werdnig-Hoffmann病:SMA1型)を発症したことで,在宅における人工呼吸器管理や吸引・排痰手技などが必要となった症例に対し,在宅指導を経験したため報告する。
【方法】
3ヶ月の男児(X日当時)。周生期では正常分娩で出生(在胎週数40週,出生体重3512g,Apgar score1分値9点)。家族背景は父,母,姉(3歳)が同居し,母親の兄弟が隣接県に在住。1ヶ月健診にて低緊張を指摘され当院紹介受診し外来での理学療法(以下:PT)開始(X-89日)。その後SMA1型と診断された。経管栄養やNPPV導入のための入退院を繰り返し,X日に誤嚥性肺炎を契機にした呼吸不全で入院加療となった。
【結果】
X日,誤嚥性肺炎と診断され入院。手関節掌背屈,手指・足趾屈伸が軽度可能。胸郭はベル型。呼吸状態は,陥没呼吸,シーソー呼吸,呼吸音両側換気不良,胸部X線像で右肺野透過性不良。SpO2:100%(10L),HR:150bpm,同日より入院PT開始。翌日呼吸状態が悪化し,挿管され人工呼吸器管理となる(PC-SIMV,FiO2:0.4,PS:7cmH2O,PEEP:5 cmH2O,吸気時間:0.6秒,呼吸回数:15回)。排痰や呼吸介助を実施し,白黄色の喀痰が多量に吸引された。X+18日に単純気管切開術施行,術後右上葉に無気肺出現。日本語が拙く,より不安が助長される母親に対して精神的な支援を行いX+28日より抱っこ開始。X+49日に一般病棟に転棟し在宅指導開始。男児の呼吸苦の訴えに対して,不安な母親に対し,日本語が拙いため,男児の状態を言葉でリアルタイムに詳細に伝達することが困難であり,呼吸介助などのタイミングや回数を指導することに難渋した。また,男児の耐久性を考慮することも何度も指導した。母親は,毎日のPTの手技を詳細に観察して習得した。X+133日に自宅退院となった。
【結論】
本症例は,SMA1型を基盤とした呼吸不全により入院加療となった。全身状態などから本来は,より専門的な病院での対応が望ましいものの,家族の希望が強く,当院での入院加療となった。日本語での詳細なコミュニケーションが困難な場合の呼吸介助などの指導では,母親はより詳細にPTの方法や手技を観察して介助方法を習得することが分かった。そのため,在宅指導の際には,呼吸介助などの問題点を明確にし,それらに対して具体的にどのようにアプローチしているかを繰り返し観察させながら指導することが有用であることが示された。