[P-SN-05-3] 視覚障がい(明暗弁)を伴った運動発達遅滞児に対する乳幼児期の理学療法の経験
Keywords:視覚障がい, 運動発達, 幼児
【はじめに,目的】明暗弁とは,明暗の感覚だけが判る状態の視覚障がいである。視覚は運動の制御と深く結びついており,運動を評価し,実行し,身体を制御するには,環境情報,身体各部の運動や身体の位置に関する情報,環境と身体の相対的な位置関係に関する情報が不可欠であり,これらの大部分の情報は視覚によってもたらされるといわれている。そのため,運動発達には視覚機能が大きく関与すると考えられる。今回,視覚障がい(明暗弁)を伴った運動発達遅滞児に対し,乳幼児期から理学療法(以下PT)を経験する機会を得たため,考察を加え経過を報告する。
【方法】症例は3歳7ヶ月男児,在胎週数37週4日,出生体重3742g多発性嚢胞腎にて腹膜透析治療を行う。月齢9ヶ月時に運動発達遅滞と診断され,11ヶ月よりPT開始。PT開始当初,身体機能は全身低緊張で頸定,寝返りのみ可。視覚機能は全盲と診断されており,光刺激に対しても反応は乏しかったが,1歳2か月頃から光に対する反応見られるようになり,1歳4ヶ月時に盲学校教育相談を受け明暗弁と評価された。
治療内容は,手掌・足底の内在筋に対して伸長,圧刺激を行い,支持するための末梢器官の筋の賦活から,四つ這い,つかまり立ち等の抗重力姿勢を促し,体性感覚情報を入力させ,身体図式を確立させる事を行った。また,身体の支持機能の向上を促すと共に,支持面の探索活動から,能動的な動きに繋げるために姿勢変換の誘導を行った。
【結果】PT開始時:全身低緊張で立ち直り反応なし。PT開始~1歳半:体幹の抗重力活動が得られるようになり,机にもたれた胡坐座位可。1歳半~2歳:胡坐座位,端座位,四つ這い,つかまり立ちの設定した姿勢保持可となるが,能動的な姿勢変換は見られない。2歳3ヵ月:足底・手掌の支持面を児が探索し,端座位から机を使用した立ち上がり動作獲得。また,すり足での伝い歩きを行う様子見られた。しかし,2歳4ヶ月~3歳5ヶ月まで,腎臓移植手術目的で長期入院となり,3歳6ヶ月時にPT再開。姿勢保持能力に変化ないが,床からの起き上がり・座位から四つ這い位への姿勢変換・四つ這い移動・四つ這い位からの立ち上がり・伝い歩きは未獲得である。
【結論】本児は身体の支持活動から,身体図式が確立し,姿勢保持能力の向上・探索活動に繋がったが,抗重力的な移動は現在未獲得である。乳幼児期後期からは,姿勢の安定と探索活動の広がりと共に移動の発達を獲得するが,視覚障がいを伴う障がい者は身体図式の確立に加え,体性感覚情報を頼りに外界の環境へ働きかけ,身体との相対的な位置関係を理解しなければ,能動的に姿勢変換を行う事が難しいと考えられる。
今回の症例は,姿勢保持は遅れつつも獲得し,探索活動を行っているが,移動の発達は未獲得である。しかし,早期から探索活動を行わせるための身体機能の準備を行っていたことにより,能動的な動きの発達に繋がっていくと考えられる。
【方法】症例は3歳7ヶ月男児,在胎週数37週4日,出生体重3742g多発性嚢胞腎にて腹膜透析治療を行う。月齢9ヶ月時に運動発達遅滞と診断され,11ヶ月よりPT開始。PT開始当初,身体機能は全身低緊張で頸定,寝返りのみ可。視覚機能は全盲と診断されており,光刺激に対しても反応は乏しかったが,1歳2か月頃から光に対する反応見られるようになり,1歳4ヶ月時に盲学校教育相談を受け明暗弁と評価された。
治療内容は,手掌・足底の内在筋に対して伸長,圧刺激を行い,支持するための末梢器官の筋の賦活から,四つ這い,つかまり立ち等の抗重力姿勢を促し,体性感覚情報を入力させ,身体図式を確立させる事を行った。また,身体の支持機能の向上を促すと共に,支持面の探索活動から,能動的な動きに繋げるために姿勢変換の誘導を行った。
【結果】PT開始時:全身低緊張で立ち直り反応なし。PT開始~1歳半:体幹の抗重力活動が得られるようになり,机にもたれた胡坐座位可。1歳半~2歳:胡坐座位,端座位,四つ這い,つかまり立ちの設定した姿勢保持可となるが,能動的な姿勢変換は見られない。2歳3ヵ月:足底・手掌の支持面を児が探索し,端座位から机を使用した立ち上がり動作獲得。また,すり足での伝い歩きを行う様子見られた。しかし,2歳4ヶ月~3歳5ヶ月まで,腎臓移植手術目的で長期入院となり,3歳6ヶ月時にPT再開。姿勢保持能力に変化ないが,床からの起き上がり・座位から四つ這い位への姿勢変換・四つ這い移動・四つ這い位からの立ち上がり・伝い歩きは未獲得である。
【結論】本児は身体の支持活動から,身体図式が確立し,姿勢保持能力の向上・探索活動に繋がったが,抗重力的な移動は現在未獲得である。乳幼児期後期からは,姿勢の安定と探索活動の広がりと共に移動の発達を獲得するが,視覚障がいを伴う障がい者は身体図式の確立に加え,体性感覚情報を頼りに外界の環境へ働きかけ,身体との相対的な位置関係を理解しなければ,能動的に姿勢変換を行う事が難しいと考えられる。
今回の症例は,姿勢保持は遅れつつも獲得し,探索活動を行っているが,移動の発達は未獲得である。しかし,早期から探索活動を行わせるための身体機能の準備を行っていたことにより,能動的な動きの発達に繋がっていくと考えられる。