[P-SN-06-1] 成人脳性麻痺者に対する神経筋電気刺激の痙縮抑制効果について
~拮抗筋or対象筋どちらに当てた方が有効か~
Keywords:脳性麻痺, 痙縮抑制, 神経筋電気刺激
【はじめに,目的】
脳性麻痺者では,痙縮による姿勢筋緊張亢進が正常発達を阻害している。神経筋電気刺激(以下:NMES)は,痙縮抑制や筋萎縮予防及び改善を目的として実施される物理療法であり,脳性麻痺患者を対象とした痙縮や筋緊張の変化についての報告はほとんど見当たらない。また,NMESによる筋緊張抑制には,拮抗筋刺激(相反性抑制)を利用したIa-NMESおよび痙縮筋直接刺激(自己抑制)を利用したIb-NMESが知られている。先行研究では,脳性麻痺者の痙縮に対して,Ia-NMESとストレッチを行い,筋緊張抑制に少し効果があったとされているが,健常人においてはIa-NMESとIb-NMESを比較した場合Ib-NMESのほうがストレッチ前処置としては効果が高かったと示されている。今回,通常行っている可動域練習(ROM)と比べ各NMESを与えることで痙縮の改善が得られるのかを検証した。
【方法】
対象はGMFCSIIIレベルの成人脳性麻痺者1名(19歳)とし,対象筋はヒラメ筋とした。介入期間は1ヶ月半とし,足関節可動域練習,Ib-NMES,Ia-NMESの3つの介入をそれぞれ日を分けて行ない,セッションごとの即時効果を検証した。
NMES刺激は総合電気治療器ES-520,刺激電極5cm×9cmの粘着パッド使用し,設定は周波数20Hz,刺激強度12~14mA,刺激時間10分間,立ち上がり2sec,持続4sec,減衰0.5sec,休止4secとし,刺激はIb-NMESはヒラメ筋,Ia-NMESは前脛骨筋に与えた。
足関節可動域練習は徒手による持続的伸張を下腿三頭筋に伸張反射が出現しない速度で最終可動域付近まで行い,一回につき20秒,休息2秒,5分間実施した。
評価は足関節背屈角度,Modifield Ashwonh Scale(MAS),筋硬度,足関節背屈抵抗トルクの測定を各介入前,介入後に実施し,結果値は3回測定した結果の平均値を採用した。
【結果】
足関節背屈角度とMASにおいてはROM後は抵抗が少し低下,背屈角度改善し,Ib-NMES後は抵抗増加,背屈角度低下し,Ia-NMES後は抵抗が少し低下したが,角度は大きく変わらなかった。ヒラメ筋の筋硬度はROM後は変化が少なく,Ib-NMES後は増加し,Ia-NMES後は少し低下した。足関節背屈抵抗トルクはROM後はやや低下し,Ib-NMES後は増加,Ia-NMES後は少し低下した。
【結論】
今回,ヒラメ直接刺激はIb抑制による緊張緩和を期待していたが,反対に電気刺激により緊張している筋を余計に緊張させてしまった。一方,拮抗筋である前脛骨筋刺激はIa相反抑制により,ヒラメ筋の緊張低下に効果があったと考える。しかし,足関節背屈角度は有意な変化が少なかった。この要因としては,痙縮抑制が生じても長年の痙縮持続による筋短縮や関節構成体自体の拘縮が存在しているため,角度変化については限りがあるのだと考える。今回,一例であるが即時効果が得られる可能性が示唆されたため,運動療法の介入前に電気刺激を実施し痙性を抑制させることで,その後の正常な運動パターン学習を行いやすくする可能性が考えられた。
脳性麻痺者では,痙縮による姿勢筋緊張亢進が正常発達を阻害している。神経筋電気刺激(以下:NMES)は,痙縮抑制や筋萎縮予防及び改善を目的として実施される物理療法であり,脳性麻痺患者を対象とした痙縮や筋緊張の変化についての報告はほとんど見当たらない。また,NMESによる筋緊張抑制には,拮抗筋刺激(相反性抑制)を利用したIa-NMESおよび痙縮筋直接刺激(自己抑制)を利用したIb-NMESが知られている。先行研究では,脳性麻痺者の痙縮に対して,Ia-NMESとストレッチを行い,筋緊張抑制に少し効果があったとされているが,健常人においてはIa-NMESとIb-NMESを比較した場合Ib-NMESのほうがストレッチ前処置としては効果が高かったと示されている。今回,通常行っている可動域練習(ROM)と比べ各NMESを与えることで痙縮の改善が得られるのかを検証した。
【方法】
対象はGMFCSIIIレベルの成人脳性麻痺者1名(19歳)とし,対象筋はヒラメ筋とした。介入期間は1ヶ月半とし,足関節可動域練習,Ib-NMES,Ia-NMESの3つの介入をそれぞれ日を分けて行ない,セッションごとの即時効果を検証した。
NMES刺激は総合電気治療器ES-520,刺激電極5cm×9cmの粘着パッド使用し,設定は周波数20Hz,刺激強度12~14mA,刺激時間10分間,立ち上がり2sec,持続4sec,減衰0.5sec,休止4secとし,刺激はIb-NMESはヒラメ筋,Ia-NMESは前脛骨筋に与えた。
足関節可動域練習は徒手による持続的伸張を下腿三頭筋に伸張反射が出現しない速度で最終可動域付近まで行い,一回につき20秒,休息2秒,5分間実施した。
評価は足関節背屈角度,Modifield Ashwonh Scale(MAS),筋硬度,足関節背屈抵抗トルクの測定を各介入前,介入後に実施し,結果値は3回測定した結果の平均値を採用した。
【結果】
足関節背屈角度とMASにおいてはROM後は抵抗が少し低下,背屈角度改善し,Ib-NMES後は抵抗増加,背屈角度低下し,Ia-NMES後は抵抗が少し低下したが,角度は大きく変わらなかった。ヒラメ筋の筋硬度はROM後は変化が少なく,Ib-NMES後は増加し,Ia-NMES後は少し低下した。足関節背屈抵抗トルクはROM後はやや低下し,Ib-NMES後は増加,Ia-NMES後は少し低下した。
【結論】
今回,ヒラメ直接刺激はIb抑制による緊張緩和を期待していたが,反対に電気刺激により緊張している筋を余計に緊張させてしまった。一方,拮抗筋である前脛骨筋刺激はIa相反抑制により,ヒラメ筋の緊張低下に効果があったと考える。しかし,足関節背屈角度は有意な変化が少なかった。この要因としては,痙縮抑制が生じても長年の痙縮持続による筋短縮や関節構成体自体の拘縮が存在しているため,角度変化については限りがあるのだと考える。今回,一例であるが即時効果が得られる可能性が示唆されたため,運動療法の介入前に電気刺激を実施し痙性を抑制させることで,その後の正常な運動パターン学習を行いやすくする可能性が考えられた。