[P-SN-07-4] Shuffling babyの発達的特徴
Keywords:shuffling, 寝返り, 発達障害
【はじめに,目的】
Shuffling babyとは座位までの運動発達は正常で,歩行獲得が遅いが予後の良い非定型な運動発達の児の総称である。しかし,後に自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の特性が認められる頻度が高いとの報告がある。本調査の目的は,これまでに理学療法(以下PT)を実施し歩行を獲得したshuffling babyについてその運動発達経過や歩行獲得後の小児科による追跡状況について調査することである。
【方法】
2010年4月~2016年3月に岩手県立療育センターでPTを受けた症例のうち,初診時またはPT実施中にshufflingを認め,その後,歩行を獲得してPTを終了した25例(男児6例,女児19例)を対象とした(在胎週数37週未満,出生体重2,500g未満および脳性まひなど基礎疾患のある症例は除外した)。そして,PT開始時月齢,歩行獲得月齢,座位までの運動発達の経過,PT実施中にみられた行動上の特徴および歩行後の小児科による追跡状況について診療録より後方視的に調査した。
【結果】
PT開始月齢は12~22か月(中央値16か月),歩行獲得月齢は15~27か月(中央値20か月)であった。座位までの運動発達の経過は,寝返り獲得月齢が4~24か月(中央値7か月),座位保持獲得月齢が6~12か月(中央値8か月)で,座位姿勢獲得後に寝返りを獲得した症例が11例(44%)あった。また,PT実施中に14例(56%)の症例に強い人見知りなどの行動上の特徴がみられ,うち6例が座位獲得後に寝返りを獲得した。
歩行獲得後も精神発達面にアンバランスがあるため小児科によって追跡がされた症例は7例(28%)あった。最終的に2例はASD,2例は発達障害の疑い,1例は精神発達遅滞,そして,2例は正常範囲内と診断された。この7例のうち座位獲得後に寝返りを獲得した症例と行動上の特徴を示した症例は各5例あった。また,両方の特徴を示したものは7例中4例あり,小児科の追跡がなかった18例と比較して多い傾向があった(Fisherの正確確率検定で有意差あり。危険率5%)。この4例のうち2例はASDであった。
【結論】
Shuffling babyは座位までの運動発達は正常といわれている。我々の症例でも座位保持は全例12か月までに獲得されており正常範囲内と思われた。しかし,座位保持獲得後に寝返りが獲得されるといった不規則な発達を示した症例が存在した。坪倉は広汎性発達障害の運動の問題として運動の獲得順序が前後する不規則な運動発達や特徴的な運動の一つとしてshufflingをあげている。また,三浦らは32例のshuffling babyのうち11例がASDと診断されたと報告している。小児科で追跡された我々の症例にも不規則な運動発達と行動上の特徴を示しASDと診断された症例があり,同様な傾向がみられた。
以上のことから,shuffling babyは比較的予後良好と思われているが,その運動発達の獲得経過や行動上の特徴から,症例によっては発達障害の可能性も考慮しPTを含む早期からの療育の検討が必要と思われた。
Shuffling babyとは座位までの運動発達は正常で,歩行獲得が遅いが予後の良い非定型な運動発達の児の総称である。しかし,後に自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の特性が認められる頻度が高いとの報告がある。本調査の目的は,これまでに理学療法(以下PT)を実施し歩行を獲得したshuffling babyについてその運動発達経過や歩行獲得後の小児科による追跡状況について調査することである。
【方法】
2010年4月~2016年3月に岩手県立療育センターでPTを受けた症例のうち,初診時またはPT実施中にshufflingを認め,その後,歩行を獲得してPTを終了した25例(男児6例,女児19例)を対象とした(在胎週数37週未満,出生体重2,500g未満および脳性まひなど基礎疾患のある症例は除外した)。そして,PT開始時月齢,歩行獲得月齢,座位までの運動発達の経過,PT実施中にみられた行動上の特徴および歩行後の小児科による追跡状況について診療録より後方視的に調査した。
【結果】
PT開始月齢は12~22か月(中央値16か月),歩行獲得月齢は15~27か月(中央値20か月)であった。座位までの運動発達の経過は,寝返り獲得月齢が4~24か月(中央値7か月),座位保持獲得月齢が6~12か月(中央値8か月)で,座位姿勢獲得後に寝返りを獲得した症例が11例(44%)あった。また,PT実施中に14例(56%)の症例に強い人見知りなどの行動上の特徴がみられ,うち6例が座位獲得後に寝返りを獲得した。
歩行獲得後も精神発達面にアンバランスがあるため小児科によって追跡がされた症例は7例(28%)あった。最終的に2例はASD,2例は発達障害の疑い,1例は精神発達遅滞,そして,2例は正常範囲内と診断された。この7例のうち座位獲得後に寝返りを獲得した症例と行動上の特徴を示した症例は各5例あった。また,両方の特徴を示したものは7例中4例あり,小児科の追跡がなかった18例と比較して多い傾向があった(Fisherの正確確率検定で有意差あり。危険率5%)。この4例のうち2例はASDであった。
【結論】
Shuffling babyは座位までの運動発達は正常といわれている。我々の症例でも座位保持は全例12か月までに獲得されており正常範囲内と思われた。しかし,座位保持獲得後に寝返りが獲得されるといった不規則な発達を示した症例が存在した。坪倉は広汎性発達障害の運動の問題として運動の獲得順序が前後する不規則な運動発達や特徴的な運動の一つとしてshufflingをあげている。また,三浦らは32例のshuffling babyのうち11例がASDと診断されたと報告している。小児科で追跡された我々の症例にも不規則な運動発達と行動上の特徴を示しASDと診断された症例があり,同様な傾向がみられた。
以上のことから,shuffling babyは比較的予後良好と思われているが,その運動発達の獲得経過や行動上の特徴から,症例によっては発達障害の可能性も考慮しPTを含む早期からの療育の検討が必要と思われた。