[P-SN-08-1] 頭蓋骨縫合早期癒合症(craniosynostosis)を呈する子どもの問題行動の調査
Keywords:頭蓋骨縫合早期癒合症, 子どもの強さと困難さアンケート, 子どもの行動チェックリスト
【目的】
アペール症候群などの頭蓋骨縫合早期癒合症は,出生時より頭蓋骨縫合が癒合しており眼球突出や顔面の変形を伴う疾患である。欧米では頭蓋顔面変形をもつ患者のQOLが低いこと(Topolski, et al., 2005)や,アペール症候群の子どもでは社会的問題や注意の問題,引きこもり行動を示す割合が高いことが報告されている(Sarimski, 2001)。本研究では,本邦における頭蓋骨縫合早期癒合症の子どもの問題行動について調査した。
【方法】
対象は頭蓋骨縫合早期癒合症を呈する子ども18名(疾患内訳:アペール症候群16名,クルーゾン症候群1名,ファイファー症候群1名,年齢幅4-17歳,平均年齢9.1±3.8歳,男10名,女8名)と定型発達児18名(年齢幅4-15歳,平均年齢8.2±2.9歳,男10名,女8名)であった。方法は,対象児の両親に子どもの問題行動を調査するための質問紙である子どもの強さと困難さアンケート(Strengths Difficulties Questionnaire:SDQ),子どもの行動チェックリスト(Child Behavior Checklist:CBCL/4-18)を用いて,対象児の最近3ヵ月の行動について評価してもらった。SDQでは行為,多動・不注意,情緒,仲間関係,向社会性の各下位尺度と上位尺度である内在化行動,外在化行動,総合点,CBCLではひきこもり,身体的訴え,不安・抑うつ,社会性の問題,思考の問題,注意の問題,非行的行動,攻撃的行動の各下位尺度と上位尺度である内向尺度,外向尺度,総合点についてT得点を算出し,各々の得点,境界域と臨床域に分類された子どもの割合について2群間で比較した。統計解析は,Mann-Whitney U検定,Fisherの正確確率検定を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
定型発達児と比較して頭蓋骨縫合早期癒合症児は,SDQの仲間関係(p<0.01),内在化行動,総合点(いずれもp<0.05),CBCLのひきこもり(p<0.05),身体的訴え(p<0.05),社会性の問題(p<0.01),注意の問題(p<0.01),内向尺度(p<0.05),総合点(p<0.01)において有意に得点が高かった。境界域または臨床域となった子どもの割合は,SDQの仲間関係(p<0.01),CBCLのひきこもり,社会性の問題,注意の問題の各下位尺度(いずれもp<0.05)と,上位尺度である内向尺度(p<0.05),総合点(p<0.01)で頭蓋骨縫合早期癒合症児のほうが定型発達児よりも有意に高かった。
【結論】
頭蓋骨縫合早期癒合症の子どもは,多動や不注意行動,他者との社会的関係性における問題行動が定型発達児よりも多いこと,またひきこもりなど内向的な傾向が明らかとなった。これはアペール症候群の子どもの問題行動について調べたSarimskiら(2001)の先行研究と類似した結果であった。多動・不注意行動については頭蓋内圧亢進など脳への影響から一次的に起こっている可能性が考えられ,社会性の問題は疾患特有の顔貌など外見上の違いから二次的に起こっている可能性が考えられた。
アペール症候群などの頭蓋骨縫合早期癒合症は,出生時より頭蓋骨縫合が癒合しており眼球突出や顔面の変形を伴う疾患である。欧米では頭蓋顔面変形をもつ患者のQOLが低いこと(Topolski, et al., 2005)や,アペール症候群の子どもでは社会的問題や注意の問題,引きこもり行動を示す割合が高いことが報告されている(Sarimski, 2001)。本研究では,本邦における頭蓋骨縫合早期癒合症の子どもの問題行動について調査した。
【方法】
対象は頭蓋骨縫合早期癒合症を呈する子ども18名(疾患内訳:アペール症候群16名,クルーゾン症候群1名,ファイファー症候群1名,年齢幅4-17歳,平均年齢9.1±3.8歳,男10名,女8名)と定型発達児18名(年齢幅4-15歳,平均年齢8.2±2.9歳,男10名,女8名)であった。方法は,対象児の両親に子どもの問題行動を調査するための質問紙である子どもの強さと困難さアンケート(Strengths Difficulties Questionnaire:SDQ),子どもの行動チェックリスト(Child Behavior Checklist:CBCL/4-18)を用いて,対象児の最近3ヵ月の行動について評価してもらった。SDQでは行為,多動・不注意,情緒,仲間関係,向社会性の各下位尺度と上位尺度である内在化行動,外在化行動,総合点,CBCLではひきこもり,身体的訴え,不安・抑うつ,社会性の問題,思考の問題,注意の問題,非行的行動,攻撃的行動の各下位尺度と上位尺度である内向尺度,外向尺度,総合点についてT得点を算出し,各々の得点,境界域と臨床域に分類された子どもの割合について2群間で比較した。統計解析は,Mann-Whitney U検定,Fisherの正確確率検定を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
定型発達児と比較して頭蓋骨縫合早期癒合症児は,SDQの仲間関係(p<0.01),内在化行動,総合点(いずれもp<0.05),CBCLのひきこもり(p<0.05),身体的訴え(p<0.05),社会性の問題(p<0.01),注意の問題(p<0.01),内向尺度(p<0.05),総合点(p<0.01)において有意に得点が高かった。境界域または臨床域となった子どもの割合は,SDQの仲間関係(p<0.01),CBCLのひきこもり,社会性の問題,注意の問題の各下位尺度(いずれもp<0.05)と,上位尺度である内向尺度(p<0.05),総合点(p<0.01)で頭蓋骨縫合早期癒合症児のほうが定型発達児よりも有意に高かった。
【結論】
頭蓋骨縫合早期癒合症の子どもは,多動や不注意行動,他者との社会的関係性における問題行動が定型発達児よりも多いこと,またひきこもりなど内向的な傾向が明らかとなった。これはアペール症候群の子どもの問題行動について調べたSarimskiら(2001)の先行研究と類似した結果であった。多動・不注意行動については頭蓋内圧亢進など脳への影響から一次的に起こっている可能性が考えられ,社会性の問題は疾患特有の顔貌など外見上の違いから二次的に起こっている可能性が考えられた。