[P-SN-08-3] 通所介護を利用しているSIDAsを有するコフィンローリー症候群にリハビリテーションが有効であった症例
Keywords:コフィンローリー症候群, 刺激誘発転倒発作, 通所施設
【はじめに,目的】コフィン・ローリー症候群(以下CLS)はX連鎖遺伝性疾患であり,中等度から重度の知的障害を認める。特徴的な顔貌,小頭症,先細りの指などの特徴を有する。不意の触覚刺激,音刺激,興奮刺激で誘発される意識消失を伴わない「刺激誘発転倒発作」(以下SIDAs)が約20%に認められる。その他にも,心疾患・脊柱後側彎症などが合併症として認められる。知的障害を主症状とするため,理学療法に関する報告は非常に少ない。SIDAsが頻発するケースではADLに大きく影響を与え,保護帽を着用して車いすを利用することが多い。SIDAsに対しては,移動動作等において危険を伴いやすいため,周囲の環境にも配慮する必要がある。今回,筆者等はSIDAsを有したCLSに対するリハビリテーションを経験し,歩行効率の改善がみられたため,経過も含めて報告する。【症例】24歳男性。身長149.7cm,体重43.3kg。両親と弟,妹との5人暮らしである。弟,妹はCLSを発症していない。キーパーソンは母親である。【経過】1歳6か月の時にK病院を受診。遺伝子検査の結果,CLSと診断された。小学校を卒業するまでは独歩で移動していた。中学校2年次に心臓手術を施行(詳細不明)。以降,SIDAsが出現するようになり,ADLに介助が必要となった。高校卒業後は作業所を利用していたが,作業所では座ったままのことが多く,介助歩行の機会も激減した。結果,下肢筋力が著しく低下し,四つ這い,もしくは車椅子の移動となった。現在は,作業所から知的障害者中心の通所施設に移り,以前よりも歩行機会は増加した。しかし,歩行練習以外は座って過ごしていることが多く,活動性は低い(FIM48点)。精神面においては重度の知的障害を伴っているが,言語による簡単な指示は理解できている。平成28年4月に活動性低下の予防のため,介助方法や歩行練習等の指導を開始した。PT介入以前は施設周辺を手引きによる歩行練習を実施していたが,SIDAsの影響により本人,介助者ともに歩行後は疲労困憊となっていた。そこで,サークル歩行器(アルコー1S型:以下歩行器)を導入し,10分間程度の歩行練習を2か月間継続した。その後,1分間歩行テストを実施した結果,手引きでの歩数は98.2±9.0歩,歩行距離は16.7±1.5mであった。歩行器での歩数は134.0±7.6歩,歩行距離は40.2±2.3mであった。t検定の結果,歩数・歩行距離共に手引きと歩行器との間には有意な差が認められた。現在は監視下ではあるが,買い物等で実用的に歩行器を利用し,移動できている。【結論】SIDAsを有したCLSの歩行練習に歩行器を導入した。歩行器のアームレストに体重を荷重できることで,SIDAsに対する不安が解消され,歩数が増加し,連続歩行距離が延長したと考える。結果,本人と介助者の疲労は軽減し,行動範囲の拡大に繋がった。今回,歩行器の導入と簡易的な方法ではあったがSIDAsの抑制には有効であることが示唆された。