[P-SN-08-4] 小児緩和ケアにおける理学療法の役割
家族のBereavement Careに有用と思われた3症例
Keywords:小児緩和ケア, 終末期, Bereavement care
【はじめに,目的】小児がんは成人に比し絶対数が少ないが,1~19歳のいずれの年齢層でも死因の第1~3位を占めており,早期からのがん治療と緩和ケアの連携は重要である。親と医療従事者間の予後や目標に対する一致性は低く,小児緩和ケア特有の対応が必要とされることは,理学療法も同様である。しかし,身体的に回復困難な緩和ケア期における理学療法の有効性を判断・評価することは容易ではない。終末期患児の理学療法のあり方を検証するにあたり,今回,我々は小児進行がん患者に対し,家族から理学療法の有用性について聴取できた3症例を経験したので報告する。
【方法】症例1は原発不明癌の17歳男性。両親と妹の4人暮らし。介入当初より右膝関節と陰部に疼痛があり(NRS10),腹部膨満と陰部,両下肢の著明な浮腫を認め,常に下肢外旋位を強要されていた。起居動作は全介助を要し,Performance Status(PS)4であった。本人の希望(HOPE)は聴取できなかったが,理学療法には積極的であった。ベッド上での下肢の筋力トレーニングと家族で行えるリラクゼーション,ポジショニング指導を中心に実施した。症例2は急性リンパ性白血病再々発の18歳男性。既往歴に二分脊椎があり,車椅子生活であった。母親と2人暮らし。再々発後,起居動作は全介助を要し,PS4となった。HOPEは友達に会いに行きたいであった。外出・外泊を実現するために母親への介助指導と環境調整を中心に実施した。症例3は神経芽腫の10歳女性。母親と祖父母,兄の5人暮らし。介入当初より右足底と腹部に疼痛(NRS8)があり,介入6週目から右下垂足を認めた。起居動作は自立していたが,歩行は困難であり,PS3であった。HOPEは歩いて遊びたいであった。歩行獲得のために寒冷療法と装具療法を中心に実施した。
【結果】症例1は死亡する6時間前まで家族と一緒に理学療法を実施した。家族から後日「最期まで本人らしく過ごせるように関わって頂いた」と聴取できた。症例2は患児と母親が希望した外出・外泊を3度達成できた。また,意識レベルが低下した後も母親と一緒にリラクゼーションやポジショニングを実施した。母親から死亡する前日に「リハビリが彼の心の支えになった」と聴取できた。症例3は一時的に独歩獲得に至り,在宅で兄や犬と遊ぶことが可能となった。最終的に自宅で死亡された。後日,母親と祖母が来院し「自宅で兄や犬と走ったりする姿が見れて嬉しかった」と聴取できた。今回の3症例において,家族からポジティブな発言が得られた要因として,患児だけでなく家族への介入を促す理学療法を行えたことが挙げられる。最期の時まで目標を持って「生きた」という思い出を残すことが,家族のBereavement careに役立つ可能性があると考えられた。
【結論】小児緩和ケアにおける理学療法の評価方法として患児への効果のみならず,家族へのケアとして捉えていく必要があると考えられた。
【方法】症例1は原発不明癌の17歳男性。両親と妹の4人暮らし。介入当初より右膝関節と陰部に疼痛があり(NRS10),腹部膨満と陰部,両下肢の著明な浮腫を認め,常に下肢外旋位を強要されていた。起居動作は全介助を要し,Performance Status(PS)4であった。本人の希望(HOPE)は聴取できなかったが,理学療法には積極的であった。ベッド上での下肢の筋力トレーニングと家族で行えるリラクゼーション,ポジショニング指導を中心に実施した。症例2は急性リンパ性白血病再々発の18歳男性。既往歴に二分脊椎があり,車椅子生活であった。母親と2人暮らし。再々発後,起居動作は全介助を要し,PS4となった。HOPEは友達に会いに行きたいであった。外出・外泊を実現するために母親への介助指導と環境調整を中心に実施した。症例3は神経芽腫の10歳女性。母親と祖父母,兄の5人暮らし。介入当初より右足底と腹部に疼痛(NRS8)があり,介入6週目から右下垂足を認めた。起居動作は自立していたが,歩行は困難であり,PS3であった。HOPEは歩いて遊びたいであった。歩行獲得のために寒冷療法と装具療法を中心に実施した。
【結果】症例1は死亡する6時間前まで家族と一緒に理学療法を実施した。家族から後日「最期まで本人らしく過ごせるように関わって頂いた」と聴取できた。症例2は患児と母親が希望した外出・外泊を3度達成できた。また,意識レベルが低下した後も母親と一緒にリラクゼーションやポジショニングを実施した。母親から死亡する前日に「リハビリが彼の心の支えになった」と聴取できた。症例3は一時的に独歩獲得に至り,在宅で兄や犬と遊ぶことが可能となった。最終的に自宅で死亡された。後日,母親と祖母が来院し「自宅で兄や犬と走ったりする姿が見れて嬉しかった」と聴取できた。今回の3症例において,家族からポジティブな発言が得られた要因として,患児だけでなく家族への介入を促す理学療法を行えたことが挙げられる。最期の時まで目標を持って「生きた」という思い出を残すことが,家族のBereavement careに役立つ可能性があると考えられた。
【結論】小児緩和ケアにおける理学療法の評価方法として患児への効果のみならず,家族へのケアとして捉えていく必要があると考えられた。