The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本小児理学療法学会 » ポスター発表

[P-SN-09] ポスター(小児)P09

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本小児理学療法学会

[P-SN-09-1] 当センターにおけるイリザロフ創外固定器を用いた下腿延長術後の理学療法

木下 友美, 中川 恵美, 林 真理, 清岡 哲也, 西村 美希, 中村 由紀江, 平島 淑子 (滋賀県立小児保健医療センターリハビリテーション科)

Keywords:イリザロフ創外固定器, 下腿延長, 術後理学療法

【はじめに】当センターでは,四肢短縮型小人症の低身長に対してイリザロフ創外固定器(以下,イリザロフ)を用いた四肢の骨延長を行っている。なかでも下腿は最初に延長を行う部位であり,症例数も多い。下腿延長術後の理学療法(以下PT)は膝関節の屈曲拘縮と尖足の予防・改善を中心に,立位・歩行練習を行っているが,プロトコールは確立されておらず担当セラピストの采配に左右されている。今回,下腿延長術後のPTの状況を調査し,その特徴と注意点について検討した。

【対象と方法】2010年8月から2015年9月において当センターでイリザロフによる下腿延長術を受けた軟骨異栄養症11例(男6名,女子5名,平均年齢10歳8ヶ月)を対象に骨延長量,延長日数,抜釘までの期間,術後のPT開始時期,腹臥位,立位,歩行練習の開始時期を後方的に調査した。

【結果】骨延長量の平均は9.17(7.0~11.2)cmであった。延長日数平均は112(84~143)日,抜釘までの期間は平均265.63(194~343)日であった。術後PTの開始は平均5.3日(1~8日)であり,初日よりベットから車椅子への移乗が可能となっていた。腹臥位への姿勢変換練習はPT開始日より1.8日(1~3日),立位練習は3.3日(1~6日),歩行練習は7.5日(2~17日)で始めていた。腹臥位,立位練習は全例において抜釘まで継続していた。歩行練習は延長期間中も行い,全例抜釘直前には病棟内を独歩可能となっていた。

【考察】骨延長術では骨組織よりも軟部組織への対応が難しく,延長を行いながら軟部組織の伸長を行い,関節機能を維持させることが術後のPTの目標となってくる。股・膝関節の屈曲拘縮を予防するためには,腸腰筋やハムストリングスを伸張するために早期からの腹臥位の導入,足関節の尖足予防には立位台を用いた立位練習による下腿三頭筋の伸張が効果的である。しかし,荷重に影響される立位練習は,固定器による侵害刺激や感染による疼痛の影響を受けやすいため,患者の術後の状態により開始時期のバラつきが生じたと考えた。軟骨異形成症の特徴として,もともと長管骨が短縮し筋肉が相対的に弛緩した状態であるため四肢体幹を屈曲位に保持する傾向がある。術後の疼痛の逃避姿勢でより屈曲位となってしまうため,股関節や膝関節の屈曲拘縮を引き起こしやすい。また,イリザロフは大きくかさばるため日常生活動作や移動動作に支障をきたしやすい。患者はイリザロフを長期間装着して生活するため,早期の移乗動作獲得は筋力低下や関節拘縮予防に重要である。

【まとめ】下腿延長術後PTには関節機能を維持するための軟部組織の伸張,廃用性筋力低下を防ぐための早期からの移乗動作の獲得が重要である。