[P-SN-09-2] ボツリヌス毒素療法で機能改善が明らかになった後,整形外科手術を施行し,屋内での独歩を獲得した脳性麻痺児の一症例
Keywords:脳性麻痺, 整形外科手術, ボツリヌス毒素療法
【はじめに,目的】
脳性麻痺児に対する治療は選択的脊髄後根切断術(SDR),ボツリヌス毒素療法(BoNT-A),整形外科手術と多岐にわたる。これらの治療を実施するに際し,理学療法士が評価を行い,主治医・患者・家族とともに治療方針を決定していくことが求められている。本研究では,BoNT-Aと理学療法の併用で機能改善を認め,その後下肢に対する整形外科手術を施行し,屋内で独歩可能となった脳性麻痺児の症例を経験したので報告する。
【方法】
症例は脳性麻痺痙直型両側性麻痺を持つ男児,GMFCSレベルIII,支援学級に通学。3歳11ヶ月時にSDRを施行(切断率:右57%,左56%)。就学前6歳2ヶ月の時点でFunctional Mobility Scale(FMS)は5m-3,50m-1,500m-1であり,最長2mの独歩が可能であった。セラピストと母親の目標は独歩獲得であった。SDR施行後も下腿三頭筋やハムストリングスの筋緊張亢進は軽減したが,立位・杖歩行時に内反尖足とクラウチング肢位をとっていた。そのため,5歳9ヶ月よりBoNT-Aを下腿三頭筋・後脛骨筋・ハムストリングスを中心に行った。
【結果】
施注後の立位では内反尖足・クラウチング肢位ともに改善された。しかし,GMFM-66は51.8-53.9と変化を認めなかった。粗大運動機能が変化しない原因は,立位保持や独歩するための筋力やバランスの不十分と考え,BoNT-Aを施注しながら週1回の理学療法を行い,ホームエクササイズも実施した。7歳4ヶ月時のBoNT-A(5回目)で立位保持が20秒,独歩が15m可能となり,GMFM-66が56.6と改善した。しかし,施注3ヶ月後にはBoNT-Aの効果が軽減したため立位保持は5秒,独歩は2-3mとなり,GMFM-66は54.2に低下した。この時点ではFMSは3,1,1と就学前と変化がなかった。この経過からBoNT-Aの効果が証明され整形外科手術を行えば独歩ができると考えた。また,身長の増加に伴い,下腿三頭筋やハムストリングスに筋短縮の増悪を認めたため,整形外科医と母親と相談のもと整形外科手術を施行することになった。8歳6ヶ月時に両側半腱様筋切離,右Vulpius法,左アキレス腱Z延長・後脛骨筋延長・前脛骨筋外側移行・長趾屈筋・長母趾屈筋腱切離を行った。術後2週間はストレッチ・筋力トレーニング・ギプス固定のまま平行棒内歩行練習を行った。術後2週後にギプスカットし,立位でのバランス練習やカーボンAFOでの歩行練習に移行した。術前の関節可動域(術後3ヶ月)は膝窩角右60°(15°)・左60°(20°),DKE右0°(25°)・左-15°(35°)であり,GMFM-66は術前56.2から術後6ヶ月60.6・術後1年65.0と有意に改善した。術後1年でFMSは5.3.3となり,独歩は最大で200m可能となり,学校と家庭で独歩となった。
【結論】
本症例は脳性麻痺児に対する客観的指標を用いながら,BoNT-A,整形外科手術と理学療法を行い,独歩を獲得した。客観的指標を用いることにより予後が予測でき,治療方針を決定する際には,理学療法士による評価が重要であることを示した。
脳性麻痺児に対する治療は選択的脊髄後根切断術(SDR),ボツリヌス毒素療法(BoNT-A),整形外科手術と多岐にわたる。これらの治療を実施するに際し,理学療法士が評価を行い,主治医・患者・家族とともに治療方針を決定していくことが求められている。本研究では,BoNT-Aと理学療法の併用で機能改善を認め,その後下肢に対する整形外科手術を施行し,屋内で独歩可能となった脳性麻痺児の症例を経験したので報告する。
【方法】
症例は脳性麻痺痙直型両側性麻痺を持つ男児,GMFCSレベルIII,支援学級に通学。3歳11ヶ月時にSDRを施行(切断率:右57%,左56%)。就学前6歳2ヶ月の時点でFunctional Mobility Scale(FMS)は5m-3,50m-1,500m-1であり,最長2mの独歩が可能であった。セラピストと母親の目標は独歩獲得であった。SDR施行後も下腿三頭筋やハムストリングスの筋緊張亢進は軽減したが,立位・杖歩行時に内反尖足とクラウチング肢位をとっていた。そのため,5歳9ヶ月よりBoNT-Aを下腿三頭筋・後脛骨筋・ハムストリングスを中心に行った。
【結果】
施注後の立位では内反尖足・クラウチング肢位ともに改善された。しかし,GMFM-66は51.8-53.9と変化を認めなかった。粗大運動機能が変化しない原因は,立位保持や独歩するための筋力やバランスの不十分と考え,BoNT-Aを施注しながら週1回の理学療法を行い,ホームエクササイズも実施した。7歳4ヶ月時のBoNT-A(5回目)で立位保持が20秒,独歩が15m可能となり,GMFM-66が56.6と改善した。しかし,施注3ヶ月後にはBoNT-Aの効果が軽減したため立位保持は5秒,独歩は2-3mとなり,GMFM-66は54.2に低下した。この時点ではFMSは3,1,1と就学前と変化がなかった。この経過からBoNT-Aの効果が証明され整形外科手術を行えば独歩ができると考えた。また,身長の増加に伴い,下腿三頭筋やハムストリングスに筋短縮の増悪を認めたため,整形外科医と母親と相談のもと整形外科手術を施行することになった。8歳6ヶ月時に両側半腱様筋切離,右Vulpius法,左アキレス腱Z延長・後脛骨筋延長・前脛骨筋外側移行・長趾屈筋・長母趾屈筋腱切離を行った。術後2週間はストレッチ・筋力トレーニング・ギプス固定のまま平行棒内歩行練習を行った。術後2週後にギプスカットし,立位でのバランス練習やカーボンAFOでの歩行練習に移行した。術前の関節可動域(術後3ヶ月)は膝窩角右60°(15°)・左60°(20°),DKE右0°(25°)・左-15°(35°)であり,GMFM-66は術前56.2から術後6ヶ月60.6・術後1年65.0と有意に改善した。術後1年でFMSは5.3.3となり,独歩は最大で200m可能となり,学校と家庭で独歩となった。
【結論】
本症例は脳性麻痺児に対する客観的指標を用いながら,BoNT-A,整形外科手術と理学療法を行い,独歩を獲得した。客観的指標を用いることにより予後が予測でき,治療方針を決定する際には,理学療法士による評価が重要であることを示した。