[P-SP-04-3] バスケットボール競技における非接触型膝前十字靭帯損傷予防に必要な矢状面上の下肢関節戦略
Keywords:バスケットボール, 膝前十字靭帯, 関節モーメント
【はじめに,目的】
非接触型膝前十字靭帯(ACL)損傷の発生メカニズムとして,着地動作時に生じる力が,下肢へ加えられた際に起こる不適正な動作が考えられている。そこで我々は,非接触型ACL損傷が発生した際に生じる,唯一の外力である床反力を,発生メカニズムのメインリスクファクターとして着目し,床反力の効率的な吸収方法に必要な矢状面上の下肢関節モーメントを考察する着想に至った。先行研究からも,生体内のACLに歪み計を取り付け,その脚で前方へジャンプ着地を行った際の床反力最大値と,ACLの歪み度合が一致している(Cerulli 2003)ことからも,床反力が関節内の負荷に大きな要因となっていることが明確である。本研究の目的は,床反力が小さくなる効率的な着地動作を行うには,どのような下肢関節モーメントが必要なのか検証することである。
【方法】
下肢関節に手術歴がない女性バスケットボール選手30名(19.5歳±3.3歳)を対象に,バスケットゴール中心真下から10m離れた場所をスタート位置とし,ドリブルで4m進んだ直後に左右で片脚ステップをする,いわゆるユーロステップを行い両脚着地,その直後にジャンプシュートを行った。初ステップの方向を左右各3回ずつ行い,両側着地時の初接地脚の床反力と矢状面上の下肢関節モーメント(股関節屈曲伸展,膝関節屈曲伸展,足関節底背屈)を測定した。床反力ピーク値と各関節モーメントとの相関にはPearsonの相関係数を用いて検討し,有意水準は5%とした。
【結果】
着地動作時の床反力の大きさと,膝関節屈曲伸展モーメント,股関節屈曲伸展モーメント共に有意な相関関係は認められなかった。しかしながら,両脚着地時の初接地脚の足関節底屈モーメントと床反力最大値との間に,有意な負の相関が認められた(r=-0.863,P<0.01)。
【結論】
足関節底屈モーメントが床反力に影響を及ぼしている結果から,足関節の矢状面上の動きを効率的に利用して床反力を吸収することが,着地動作時の外傷予防には必要であることが示唆された。また足関節底屈モーメントがマイナスの値を示している試技は床反力が高値を示しており,この原因として着地時の重心位置が後方に移動していることが予想される。これは床反力の大きさをリスクファクターと考える本研究の見解と,先行研究で述べられている非接触型ACL損傷好発肢位(Boden 2000)となる見解が一致している。以上から,今回試行したバスケットボール競技に特化した着地動作では,足関節の底屈モーメントを効率的に働かせ着地を行うことで床反力を小さく抑えることができ,接触型ACL損傷の予防に繫がる可能性がある。
非接触型膝前十字靭帯(ACL)損傷の発生メカニズムとして,着地動作時に生じる力が,下肢へ加えられた際に起こる不適正な動作が考えられている。そこで我々は,非接触型ACL損傷が発生した際に生じる,唯一の外力である床反力を,発生メカニズムのメインリスクファクターとして着目し,床反力の効率的な吸収方法に必要な矢状面上の下肢関節モーメントを考察する着想に至った。先行研究からも,生体内のACLに歪み計を取り付け,その脚で前方へジャンプ着地を行った際の床反力最大値と,ACLの歪み度合が一致している(Cerulli 2003)ことからも,床反力が関節内の負荷に大きな要因となっていることが明確である。本研究の目的は,床反力が小さくなる効率的な着地動作を行うには,どのような下肢関節モーメントが必要なのか検証することである。
【方法】
下肢関節に手術歴がない女性バスケットボール選手30名(19.5歳±3.3歳)を対象に,バスケットゴール中心真下から10m離れた場所をスタート位置とし,ドリブルで4m進んだ直後に左右で片脚ステップをする,いわゆるユーロステップを行い両脚着地,その直後にジャンプシュートを行った。初ステップの方向を左右各3回ずつ行い,両側着地時の初接地脚の床反力と矢状面上の下肢関節モーメント(股関節屈曲伸展,膝関節屈曲伸展,足関節底背屈)を測定した。床反力ピーク値と各関節モーメントとの相関にはPearsonの相関係数を用いて検討し,有意水準は5%とした。
【結果】
着地動作時の床反力の大きさと,膝関節屈曲伸展モーメント,股関節屈曲伸展モーメント共に有意な相関関係は認められなかった。しかしながら,両脚着地時の初接地脚の足関節底屈モーメントと床反力最大値との間に,有意な負の相関が認められた(r=-0.863,P<0.01)。
【結論】
足関節底屈モーメントが床反力に影響を及ぼしている結果から,足関節の矢状面上の動きを効率的に利用して床反力を吸収することが,着地動作時の外傷予防には必要であることが示唆された。また足関節底屈モーメントがマイナスの値を示している試技は床反力が高値を示しており,この原因として着地時の重心位置が後方に移動していることが予想される。これは床反力の大きさをリスクファクターと考える本研究の見解と,先行研究で述べられている非接触型ACL損傷好発肢位(Boden 2000)となる見解が一致している。以上から,今回試行したバスケットボール競技に特化した着地動作では,足関節の底屈モーメントを効率的に働かせ着地を行うことで床反力を小さく抑えることができ,接触型ACL損傷の予防に繫がる可能性がある。