[P-SP-04-4] ACL再建術後の膝関節機能獲得について
~術後超早期の膝関節屈曲可動域と歩行の関連性~
Keywords:ACL再建術後, 膝関節屈曲可動域, 正常歩行獲得
【はじめに,目的】
当院ではACL再建術後,約2週間の入院期間中に膝関節の可動域や筋力改善に加え,正常歩行獲得を目標としてリハビリを行っている。我々は以前からACL再建術後,伸展可動域制限の有無が,術後筋力の回復に影響を与えていることを報告している。そのため,術後早期より伸展可動域獲得を目指しリハビリを進めている。一方,ACL再建術後の膝関節屈曲可動域に関する報告は少ない。そこで今回,ACL再建術後の超早期の屈曲可動域の獲得状況と,歩行の関連性について調査した。
【方法】
対象は2015年1月から2016年4月までに,STまたはSTGによる解剖学的二重束再建を行った200名(29.6±12.4歳,以下STG群)とBTBによる再建を行った60名(23.3±9.0歳,以下BTB群)とし,全例初回再建とした。
当院では初回リハビリを術後2日から装具なしで開始し,屈曲可動域は術後2週で120°を目標としている。歩行は膝関節の支持性やDouble Knee Actionがみられ,安定した正常歩行が獲得された時点で片松葉,杖なしへと移行している。
測定項目は以下の4項目とした。
1.初回リハビリ前の膝関節屈曲角度(以下リハ前屈曲)
2.初回リハビリ後の膝関節屈曲角度(以下リハ後屈曲)
3.片松葉杖歩行獲得時期(以下片松葉)
4.独歩獲得時期(以下杖なし)
統計は群間で各項目の比較と群内で各項目間の相関を,Mann-Whitney検定とSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。データ解析にはSPSSを使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
STG群はリハ前屈曲66.0±15.4°,リハ後屈曲92.6±14.4°,片松葉5.7±1.7日,杖なし6.7±1.7日であった。杖なしとリハ前屈曲(r=-0.17),リハ後屈曲(r=-0.14)に負の相関があった。
BTB群はリハ前屈曲75.4±14.6°,リハ後屈曲95.6±11.6°,片松葉5.6±1.5日,杖なし6.6±1.8日であった。杖なしとリハ前屈曲(r=-0.42),リハ後屈曲(r=-0.48)に負の相関があった。
STG群とBTB群では,リハ前屈曲で有意にBTB群が大きく,その他は有意差がなかった。
【結論】
ACL再建術後に最も多い跛行は,膝関節の関節運動が起こらない棒脚歩行である。棒脚歩行は,立脚後期から遊脚期を通して,膝関節の屈曲が起こらず,骨盤挙上を伴い下肢全体を振り出す歩容である。今回の結果から,初回リハビリの屈曲可動域が良い症例は,患部の状態が良好で術後の炎症症状が少なかったことが予想される。その結果,関節運動が獲得しやすく歩容に反映されたため,早期から杖なしに移行できたと推測される。また,屈曲可動域と杖なしとの相関は,BTB群がSTG群より強い相関を示していた。棒脚歩行は,ハムストリングスの収縮不良による,遊脚期での膝屈曲運動低下が大きな原因となる。STG群は,STを採取することにより遊脚期での膝屈曲運動に弊害が出ている可能性が考えられ,逆にBTB群はその弊害が少ない。そのためBTB群の方が高い相関が得られたと考える。いずれにしても今回の結果から,術後超早期の屈曲角度から正常歩行獲得日が予測でき,術後の経過判断の指標となり得ることが分かった。
当院ではACL再建術後,約2週間の入院期間中に膝関節の可動域や筋力改善に加え,正常歩行獲得を目標としてリハビリを行っている。我々は以前からACL再建術後,伸展可動域制限の有無が,術後筋力の回復に影響を与えていることを報告している。そのため,術後早期より伸展可動域獲得を目指しリハビリを進めている。一方,ACL再建術後の膝関節屈曲可動域に関する報告は少ない。そこで今回,ACL再建術後の超早期の屈曲可動域の獲得状況と,歩行の関連性について調査した。
【方法】
対象は2015年1月から2016年4月までに,STまたはSTGによる解剖学的二重束再建を行った200名(29.6±12.4歳,以下STG群)とBTBによる再建を行った60名(23.3±9.0歳,以下BTB群)とし,全例初回再建とした。
当院では初回リハビリを術後2日から装具なしで開始し,屈曲可動域は術後2週で120°を目標としている。歩行は膝関節の支持性やDouble Knee Actionがみられ,安定した正常歩行が獲得された時点で片松葉,杖なしへと移行している。
測定項目は以下の4項目とした。
1.初回リハビリ前の膝関節屈曲角度(以下リハ前屈曲)
2.初回リハビリ後の膝関節屈曲角度(以下リハ後屈曲)
3.片松葉杖歩行獲得時期(以下片松葉)
4.独歩獲得時期(以下杖なし)
統計は群間で各項目の比較と群内で各項目間の相関を,Mann-Whitney検定とSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。データ解析にはSPSSを使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
STG群はリハ前屈曲66.0±15.4°,リハ後屈曲92.6±14.4°,片松葉5.7±1.7日,杖なし6.7±1.7日であった。杖なしとリハ前屈曲(r=-0.17),リハ後屈曲(r=-0.14)に負の相関があった。
BTB群はリハ前屈曲75.4±14.6°,リハ後屈曲95.6±11.6°,片松葉5.6±1.5日,杖なし6.6±1.8日であった。杖なしとリハ前屈曲(r=-0.42),リハ後屈曲(r=-0.48)に負の相関があった。
STG群とBTB群では,リハ前屈曲で有意にBTB群が大きく,その他は有意差がなかった。
【結論】
ACL再建術後に最も多い跛行は,膝関節の関節運動が起こらない棒脚歩行である。棒脚歩行は,立脚後期から遊脚期を通して,膝関節の屈曲が起こらず,骨盤挙上を伴い下肢全体を振り出す歩容である。今回の結果から,初回リハビリの屈曲可動域が良い症例は,患部の状態が良好で術後の炎症症状が少なかったことが予想される。その結果,関節運動が獲得しやすく歩容に反映されたため,早期から杖なしに移行できたと推測される。また,屈曲可動域と杖なしとの相関は,BTB群がSTG群より強い相関を示していた。棒脚歩行は,ハムストリングスの収縮不良による,遊脚期での膝屈曲運動低下が大きな原因となる。STG群は,STを採取することにより遊脚期での膝屈曲運動に弊害が出ている可能性が考えられ,逆にBTB群はその弊害が少ない。そのためBTB群の方が高い相関が得られたと考える。いずれにしても今回の結果から,術後超早期の屈曲角度から正常歩行獲得日が予測でき,術後の経過判断の指標となり得ることが分かった。