[P-SP-04-5] 膝前十字靭帯損傷受傷から再建術までの待機期間と筋力回復の傾向について
Keywords:前十字靭帯損傷, 筋力, 待機期間
【はじめに,目的】
膝前十字靭帯(ACL)再建術後の筋力回復の要因として,我々は術前の筋力が影響していることを過去に報告している。この術前の筋力には,ACL再建術までの待機期間による影響があると考えられる。今回,術前と術後の患側筋力体重比に着目し,ACL受傷から再建術までの待期期間と術前から術後の筋力回復の傾向について検討した。
【方法】
対象は2011年1月から2015年12月までの間に,関東労災病院スポーツ整形外科で,STまたはSTGを用いた一側の初回ACL再建術(解剖学的二重束再建)を施行した705名(男328名 女377名)である。
ACL損傷受傷日から手術までの待期期間を月換算し,4群に分類した。
A群:受傷1ヶ月以内(中央値1.0)115名(男45 女70),25.7±11.1歳
B群:受傷1.1~3ヶ月(中央値1.8)293名(男129 女164),28.1±12.2歳
C群:受傷3.1~6ヶ月(中央値4.0)129名(男57 女72),28.1±12歳
D群:受傷6.1ヶ月以上(中央値18.0)168名(男97 女71),32.6±12.3歳
筋力は,Biodex3を使用し,術前,術後5ヶ月(5M),術後8か月(8M)の患側膝伸展筋力(60deg/sec)を測定した。この値を体重で除した値を,体重比(Nm/kg)とした。
統計は,各群の経時的変化をRepeated-Measures ANOVAと多重比較法(Turkey)を用い,各群の術前,5M,8Mの平均の差の検定をANOVAと多重比較法(Turkey)を用いて行った。
統計処理はSPSS 23.0を使用し,有意水準5%未満とした。
【結果】
各群の平均値は以下の通りであった。
術前 A:1.8 B:1.7 C:1.8 D:1.9
5M A:2.2 B:2.0 C:1.9 D:1.8
8M A:2.5 B:2.2 C:2.2 D:2.1
A群,B群,C群は術前・5M・8Mのすべてで有意に増加した。D群は,術前と8M,5Mと8Mで有意に増加した。
術前はB群とD群で有意差があった。5Mと8MではA群と,B群・C群・D群それぞれに有意差があった。
【結論】
ACL損傷後は,炎症や可動域制限等の影響で筋力低下が生じるが,炎症症状の改善に伴い筋力回復が得られる。また,再建術の前には膝の正常ROMの獲得が必須となる。我々は術前の理学療法を重要視しており,受傷後の膝機能の回復に努めている。しかし正常ROMの獲得に個人差が生じるため,再建術までの待期期間に差が出る。また,様々な事情により待期期間が長期化することも少なくない。
今回の結果から,患側体重比は術前では各群間にあまり差は見られなかったが,術後は待期期間が最も短いA群が他の群と比べて良好に回復していた。また待期期間が最も長いD群においては,経時的に漸進的な回復がみられなかった。このことから,膝ROMなどの正常機能が獲得できた前提で,待機時期が短い再建術が術後の筋力回復に良い影響を与えることが示唆された。今後は経時的な回復率やスポーツレベルを考慮した,詳細な検討を加えていく必要がある。
膝前十字靭帯(ACL)再建術後の筋力回復の要因として,我々は術前の筋力が影響していることを過去に報告している。この術前の筋力には,ACL再建術までの待機期間による影響があると考えられる。今回,術前と術後の患側筋力体重比に着目し,ACL受傷から再建術までの待期期間と術前から術後の筋力回復の傾向について検討した。
【方法】
対象は2011年1月から2015年12月までの間に,関東労災病院スポーツ整形外科で,STまたはSTGを用いた一側の初回ACL再建術(解剖学的二重束再建)を施行した705名(男328名 女377名)である。
ACL損傷受傷日から手術までの待期期間を月換算し,4群に分類した。
A群:受傷1ヶ月以内(中央値1.0)115名(男45 女70),25.7±11.1歳
B群:受傷1.1~3ヶ月(中央値1.8)293名(男129 女164),28.1±12.2歳
C群:受傷3.1~6ヶ月(中央値4.0)129名(男57 女72),28.1±12歳
D群:受傷6.1ヶ月以上(中央値18.0)168名(男97 女71),32.6±12.3歳
筋力は,Biodex3を使用し,術前,術後5ヶ月(5M),術後8か月(8M)の患側膝伸展筋力(60deg/sec)を測定した。この値を体重で除した値を,体重比(Nm/kg)とした。
統計は,各群の経時的変化をRepeated-Measures ANOVAと多重比較法(Turkey)を用い,各群の術前,5M,8Mの平均の差の検定をANOVAと多重比較法(Turkey)を用いて行った。
統計処理はSPSS 23.0を使用し,有意水準5%未満とした。
【結果】
各群の平均値は以下の通りであった。
術前 A:1.8 B:1.7 C:1.8 D:1.9
5M A:2.2 B:2.0 C:1.9 D:1.8
8M A:2.5 B:2.2 C:2.2 D:2.1
A群,B群,C群は術前・5M・8Mのすべてで有意に増加した。D群は,術前と8M,5Mと8Mで有意に増加した。
術前はB群とD群で有意差があった。5Mと8MではA群と,B群・C群・D群それぞれに有意差があった。
【結論】
ACL損傷後は,炎症や可動域制限等の影響で筋力低下が生じるが,炎症症状の改善に伴い筋力回復が得られる。また,再建術の前には膝の正常ROMの獲得が必須となる。我々は術前の理学療法を重要視しており,受傷後の膝機能の回復に努めている。しかし正常ROMの獲得に個人差が生じるため,再建術までの待期期間に差が出る。また,様々な事情により待期期間が長期化することも少なくない。
今回の結果から,患側体重比は術前では各群間にあまり差は見られなかったが,術後は待期期間が最も短いA群が他の群と比べて良好に回復していた。また待期期間が最も長いD群においては,経時的に漸進的な回復がみられなかった。このことから,膝ROMなどの正常機能が獲得できた前提で,待機時期が短い再建術が術後の筋力回復に良い影響を与えることが示唆された。今後は経時的な回復率やスポーツレベルを考慮した,詳細な検討を加えていく必要がある。