[P-SP-08-4] 360°回転ジャンプ動作における滞空時間と膝関節角度・モーメントの関連性
Keywords:膝前十字靭帯損傷予防プログラム, 回転ジャンプ動作, 滞空時間
【はじめに，目的】
膝前十字靭帯（以下，ACL）損傷はスポーツ場面において，致命的な外傷の一つである。現在，ACL損傷予防プログラムの介入が世界中で多くなされているが未だに何が有効かは明らかではない。しかしながら，ジャンプ動作時に膝関節内外反の中間位と屈曲角度の増加が損傷予防に有効であると報告がある。このジャンプ動作に関して，回転ジャンプ動作も用いられているが，その動作解析の報告は少ない。実際のスポーツ場面では，回転・ねじれが加わったジャンプ動作が多く，回転ジャンプ着地動作時における膝関節の適切なアライメント保持が重要であると考えられる。本研究の目的は，三次元動作解析装置を使用し，360°回転ジャンプ動作と垂直ジャンプ動作の着地時の膝関節動態の相違，更に回転ジャンプ動作時の滞空時間と着地動作時の膝関節角度とモーメントとの関連性を分析し，ACL損傷予防プログラムに有効かを検証することとした。
【方法】
対象は健常女子学生20名（平均年齢：21.1±1.4歳，平均身長：159.9±4.7cm，平均体重：51.8±3.5kg）とした。課題動作は両脚での垂直ジャンプ動作，時計回りの360°回転ジャンプ動作とした。ジャンプ着地動作時の下肢関節角度・関節モーメントの評価を4枚の床反力計（AMTI社）と6台の赤外線カメラを用いた三次元動作解析装置（Vicon社）にて行った。本研究では床反力計の垂直分力が10N以下を足尖離地とし，足尖接地時（以下IC）は10Nを超えた時点とし，その区間を滞空時間と定義した。左右膝関節の屈伸・内外反角度とモーメントの8項目はICの値とICから50ms間の最大値をそれぞれ算出した。統計学的解析は滞空時間とIC・最大値それぞれの膝関節角度とモーメントの相関はピアソン相関係数を用いた。また，垂直ジャンプ動作と回転ジャンプ動作との課題間の差，同一課題間の左右差を検定するために対応のあるt検定を用いた。なお，有意水準は5%未満とした。
【結果】
回転ジャンプ動作における滞空時間と膝関節角度，モーメントそれぞれにおいて相関関係を認めなかった。しかし，IC時に同一課題間で右下肢と比較し，左膝関節外反モーメントが有意に増加した（p＜0.01）。また，課題間の差では回転ジャンプ動作においてIC時に左右膝関節外反モーメントが有意な増加を認めた（p＜0.01）。
【結論】
本研究では，回転ジャンプ動作時において滞空時間と膝関節動態について直接的な関連性は認められなかった。しかしながら，垂直ジャンプと比較して難易度の高い回転ジャンプ動作では，IC時に膝関節外反モーメントが有意に増加し，ACL損傷危険肢位に近づく結果となった。以上より，回転ジャンプ動作時に関して滞空時間が着地時の膝関節動態と直接的な関連はないが，予防プログラムにおいて回転ジャンプ動作を実施する際は垂直ジャンプ動作よりACL損傷危険肢位に近づくことを前提に実施すべきであると考えられる。
膝前十字靭帯（以下，ACL）損傷はスポーツ場面において，致命的な外傷の一つである。現在，ACL損傷予防プログラムの介入が世界中で多くなされているが未だに何が有効かは明らかではない。しかしながら，ジャンプ動作時に膝関節内外反の中間位と屈曲角度の増加が損傷予防に有効であると報告がある。このジャンプ動作に関して，回転ジャンプ動作も用いられているが，その動作解析の報告は少ない。実際のスポーツ場面では，回転・ねじれが加わったジャンプ動作が多く，回転ジャンプ着地動作時における膝関節の適切なアライメント保持が重要であると考えられる。本研究の目的は，三次元動作解析装置を使用し，360°回転ジャンプ動作と垂直ジャンプ動作の着地時の膝関節動態の相違，更に回転ジャンプ動作時の滞空時間と着地動作時の膝関節角度とモーメントとの関連性を分析し，ACL損傷予防プログラムに有効かを検証することとした。
【方法】
対象は健常女子学生20名（平均年齢：21.1±1.4歳，平均身長：159.9±4.7cm，平均体重：51.8±3.5kg）とした。課題動作は両脚での垂直ジャンプ動作，時計回りの360°回転ジャンプ動作とした。ジャンプ着地動作時の下肢関節角度・関節モーメントの評価を4枚の床反力計（AMTI社）と6台の赤外線カメラを用いた三次元動作解析装置（Vicon社）にて行った。本研究では床反力計の垂直分力が10N以下を足尖離地とし，足尖接地時（以下IC）は10Nを超えた時点とし，その区間を滞空時間と定義した。左右膝関節の屈伸・内外反角度とモーメントの8項目はICの値とICから50ms間の最大値をそれぞれ算出した。統計学的解析は滞空時間とIC・最大値それぞれの膝関節角度とモーメントの相関はピアソン相関係数を用いた。また，垂直ジャンプ動作と回転ジャンプ動作との課題間の差，同一課題間の左右差を検定するために対応のあるt検定を用いた。なお，有意水準は5%未満とした。
【結果】
回転ジャンプ動作における滞空時間と膝関節角度，モーメントそれぞれにおいて相関関係を認めなかった。しかし，IC時に同一課題間で右下肢と比較し，左膝関節外反モーメントが有意に増加した（p＜0.01）。また，課題間の差では回転ジャンプ動作においてIC時に左右膝関節外反モーメントが有意な増加を認めた（p＜0.01）。
【結論】
本研究では，回転ジャンプ動作時において滞空時間と膝関節動態について直接的な関連性は認められなかった。しかしながら，垂直ジャンプと比較して難易度の高い回転ジャンプ動作では，IC時に膝関節外反モーメントが有意に増加し，ACL損傷危険肢位に近づく結果となった。以上より，回転ジャンプ動作時に関して滞空時間が着地時の膝関節動態と直接的な関連はないが，予防プログラムにおいて回転ジャンプ動作を実施する際は垂直ジャンプ動作よりACL損傷危険肢位に近づくことを前提に実施すべきであると考えられる。