[P-SP-12-4] 三次元動作解析装置を用いたアキレス腱断裂術後一症例の歩行パラメータの変化
Keywords:アキレス腱断裂, 三次元動作解析, 底屈モーメント
【はじめに,目的】
アキレス腱断裂は10万人当たり6~37人の頻度で発生し,整形外科分野ではでは遭遇しやすい疾患の一つである。術後のリハビリテーションではまずは歩行の獲得,歩容の改善が目的となる。しかし,アキレス腱断裂術後患者の歩行を経時的に調査する論文は渉猟し得ない。今回アキレス腱断裂患者の歩行を経時的に分析をする機会を得たので報告する。
【方法】
症例は20歳代後半の男性。ソフトバレーボール大会中,切り返し動作時に受傷。病院受診し,左アキレス腱完全断裂の診断となり,翌日手術となった。術名はアキレス腱縫合術,術後プロトコルは,手術~2週ギプス固定,免荷。3~4週ヒール付きギプス固定,全荷重許可。5~8週ギプス抜去し,アキレス腱装具での歩行。段階的に踵の補高を除去。9週目~フリー歩行開始。リハビリテーションは術後4週より,足関節背屈可動域練習,筋力増強練習,歩行練習を実施した。
歩行評価はフリー歩行開始となってから実施した。歩行分析は,赤外線カメラ8台で構成される三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社製,Vicon Nexus)および床反力計1枚(AMTI社製,400mm×600mm)を使用した。サンプリング周波数は100Hzとした。三次元動作解析装置に設定されているPlug-in Gait Full Bodyモデルに従い,直径14mmの赤外線反射マーカーを対象者の身体の35か所に貼付した。また,解析には解析ソフトPolygon4を使用した。計測内容は,歩行速度,ストライド長,足関節底屈モーメントとした。また,身体機能として,荷重位での足関節背屈可動域,MMTによる底屈筋力を測定した。計測は術後9週目,11週,13週,15週に実施した。
【結果】
各データの結果を9週,11週,13週,15週の順に示す。歩行分析での歩行速度(m/s)は1.06,1.21,1.30,1.38,ストライド長(m)(右/左)は1.09/1.15,1.23/1.25,1.40/1.36,1.43/1.42,足関節底屈モーメント(N/kg)(右/左)は1.6/0.6,1.6/1.2,1.8/1.5,1.9/1.6であった。足関節背屈角度(°)は,20.3,26.8,29.9,33.7であった。MMT左足関節底屈は2+,2+,3,4であった。
【結論】
本例は,術後13週,フリー歩行を開始してから4週でストライド長,底屈モーメントの左右差が減少した。同時期に身体機能面では底屈筋力の向上がみられ,MMT3となっていた。このことから底屈筋力がMMT3以上有していれば歩容の改善が見込まれることが明らかとなった。
本症例は術後早期より歩行量が保たれており,装具歩行となってからは1日5000歩程度の歩行量であった。底屈筋力トレーニングはセラバンドによる底屈運動やカーフレイズを行っていたが,それほど運動量は多くなかった。そのため,フリー歩行獲得までは歩行量を多くすることが底屈筋力の回復を促すことが明らかとなった。
今後はより長期にわたる動作解析および歩行難渋例の解析を行っていく必要がある。
アキレス腱断裂は10万人当たり6~37人の頻度で発生し,整形外科分野ではでは遭遇しやすい疾患の一つである。術後のリハビリテーションではまずは歩行の獲得,歩容の改善が目的となる。しかし,アキレス腱断裂術後患者の歩行を経時的に調査する論文は渉猟し得ない。今回アキレス腱断裂患者の歩行を経時的に分析をする機会を得たので報告する。
【方法】
症例は20歳代後半の男性。ソフトバレーボール大会中,切り返し動作時に受傷。病院受診し,左アキレス腱完全断裂の診断となり,翌日手術となった。術名はアキレス腱縫合術,術後プロトコルは,手術~2週ギプス固定,免荷。3~4週ヒール付きギプス固定,全荷重許可。5~8週ギプス抜去し,アキレス腱装具での歩行。段階的に踵の補高を除去。9週目~フリー歩行開始。リハビリテーションは術後4週より,足関節背屈可動域練習,筋力増強練習,歩行練習を実施した。
歩行評価はフリー歩行開始となってから実施した。歩行分析は,赤外線カメラ8台で構成される三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社製,Vicon Nexus)および床反力計1枚(AMTI社製,400mm×600mm)を使用した。サンプリング周波数は100Hzとした。三次元動作解析装置に設定されているPlug-in Gait Full Bodyモデルに従い,直径14mmの赤外線反射マーカーを対象者の身体の35か所に貼付した。また,解析には解析ソフトPolygon4を使用した。計測内容は,歩行速度,ストライド長,足関節底屈モーメントとした。また,身体機能として,荷重位での足関節背屈可動域,MMTによる底屈筋力を測定した。計測は術後9週目,11週,13週,15週に実施した。
【結果】
各データの結果を9週,11週,13週,15週の順に示す。歩行分析での歩行速度(m/s)は1.06,1.21,1.30,1.38,ストライド長(m)(右/左)は1.09/1.15,1.23/1.25,1.40/1.36,1.43/1.42,足関節底屈モーメント(N/kg)(右/左)は1.6/0.6,1.6/1.2,1.8/1.5,1.9/1.6であった。足関節背屈角度(°)は,20.3,26.8,29.9,33.7であった。MMT左足関節底屈は2+,2+,3,4であった。
【結論】
本例は,術後13週,フリー歩行を開始してから4週でストライド長,底屈モーメントの左右差が減少した。同時期に身体機能面では底屈筋力の向上がみられ,MMT3となっていた。このことから底屈筋力がMMT3以上有していれば歩容の改善が見込まれることが明らかとなった。
本症例は術後早期より歩行量が保たれており,装具歩行となってからは1日5000歩程度の歩行量であった。底屈筋力トレーニングはセラバンドによる底屈運動やカーフレイズを行っていたが,それほど運動量は多くなかった。そのため,フリー歩行獲得までは歩行量を多くすることが底屈筋力の回復を促すことが明らかとなった。
今後はより長期にわたる動作解析および歩行難渋例の解析を行っていく必要がある。