[P-SP-13-3] 全国大会出場高校サッカー部におけるスポーツ外傷・障害の予防に関する実態調査
スポーツ外傷・障害発生の要因と一次予防介入のタイミングの検討
キーワード:スポーツ傷害, 高校サッカー, 質問紙調査
【はじめに,目的】
スポーツ外傷・障害(以下傷害)への対応で重要なことの一つに傷害発生の予防があり,傷害により練習や試合に影響を及ぼすことは個人やチームにとって重大な損失となり得る。しかし高校部活のカテゴリーでは未だにその普及は十分とはいえない。本研究では全国大会出場高校サッカー部に所属する生徒を対象に傷害の有無と発生時期,ウォーミングアップ(以下WU)やクールダウン(以下CD)・栄養摂取などの傷害予防行動の実態を調査することで競技者への適切な介入や時期・傷害発生要因を検討する目的で行なった。
【方法】
対象は,全国大会出場高校サッカー部で同一チームに所属する男性78名,平均年齢16.9±0.77歳。集合質問紙調査を実施し,競技歴,傷害の有無・部位・発生時期・受傷機転,WU・CDの有無と時間,栄養に関する関心,現在も疼痛を有する者を傷害群としてその傷害の影響について質問した。また統計学的分析では,傷害群と非傷害群間,公式戦登録選手と非登録選手間で傷害予防に有効とされるWU・CDの有無と実施時間,栄養摂取に関してχ2検定の独立性検定を行った。有意水準はp<0.05およびp<0.01とした。
【結果】
競技開始年齢6.5±0.3歳,傷害を有する者51%,傷害の原因となる受傷をした競技経験年数8.36±2.9年,傷害部位は足関節36%,膝関節18%,大腿9%で多かった。受傷機転は非接触76%で,そのうち足関節受傷は37%と最も多かった。傷害によって練習に影響がでた割合は69%で,そのうち8%は半年間以上の練習内容の変更が必要であった。また試合に影響がでた割合は59%で,そのうち21%が試合出場機会を失った。WU・CDは100%実施されていた。栄養摂取に関して毎食の栄養バランスを意識している割合が72%,そのうち実際に摂っている割合は35%であった。公式戦登録選手と非登録選手間での意識的な炭水化物摂取と体重測定の有無(p<0.01),蛋白質摂取の有無(p<0.05)で有意な偏りを認め,公式戦登録選手では体調管理の意識が高い結果となったが,傷害群と非傷害群間で有意な差は認めなかった。
【結論】
傷害発生による慢性疼痛や活動機会減少を防ぐ為の一次予防介入時期は,競技開始年齢と傷害の原因となる受傷をした競技経験年数の和より高校入学以前が望ましいと示唆される。受傷率の高い足関節傷害は再受傷率が高いため一次予防に加え二次予防が重要となる。また活動機会の多い公式戦登録選手では栄養摂取に関して意識が高い結果となった。傷害発生要因として傷害群と非傷害群間でWU・CDの実施や必要栄養素の摂取に差があるのではと考えたが本調査はこの仮説を支持しなかった。しかし,傷害群では試合や練習の機会を失う者もおり,今後の課題としてその他の内的・外的要因に関して傷害群と非傷害群間の差を比較し,高校部活の競技レベルにおいて傷害予防に有効かつ実施可能な内容を検討する必要がある。
スポーツ外傷・障害(以下傷害)への対応で重要なことの一つに傷害発生の予防があり,傷害により練習や試合に影響を及ぼすことは個人やチームにとって重大な損失となり得る。しかし高校部活のカテゴリーでは未だにその普及は十分とはいえない。本研究では全国大会出場高校サッカー部に所属する生徒を対象に傷害の有無と発生時期,ウォーミングアップ(以下WU)やクールダウン(以下CD)・栄養摂取などの傷害予防行動の実態を調査することで競技者への適切な介入や時期・傷害発生要因を検討する目的で行なった。
【方法】
対象は,全国大会出場高校サッカー部で同一チームに所属する男性78名,平均年齢16.9±0.77歳。集合質問紙調査を実施し,競技歴,傷害の有無・部位・発生時期・受傷機転,WU・CDの有無と時間,栄養に関する関心,現在も疼痛を有する者を傷害群としてその傷害の影響について質問した。また統計学的分析では,傷害群と非傷害群間,公式戦登録選手と非登録選手間で傷害予防に有効とされるWU・CDの有無と実施時間,栄養摂取に関してχ2検定の独立性検定を行った。有意水準はp<0.05およびp<0.01とした。
【結果】
競技開始年齢6.5±0.3歳,傷害を有する者51%,傷害の原因となる受傷をした競技経験年数8.36±2.9年,傷害部位は足関節36%,膝関節18%,大腿9%で多かった。受傷機転は非接触76%で,そのうち足関節受傷は37%と最も多かった。傷害によって練習に影響がでた割合は69%で,そのうち8%は半年間以上の練習内容の変更が必要であった。また試合に影響がでた割合は59%で,そのうち21%が試合出場機会を失った。WU・CDは100%実施されていた。栄養摂取に関して毎食の栄養バランスを意識している割合が72%,そのうち実際に摂っている割合は35%であった。公式戦登録選手と非登録選手間での意識的な炭水化物摂取と体重測定の有無(p<0.01),蛋白質摂取の有無(p<0.05)で有意な偏りを認め,公式戦登録選手では体調管理の意識が高い結果となったが,傷害群と非傷害群間で有意な差は認めなかった。
【結論】
傷害発生による慢性疼痛や活動機会減少を防ぐ為の一次予防介入時期は,競技開始年齢と傷害の原因となる受傷をした競技経験年数の和より高校入学以前が望ましいと示唆される。受傷率の高い足関節傷害は再受傷率が高いため一次予防に加え二次予防が重要となる。また活動機会の多い公式戦登録選手では栄養摂取に関して意識が高い結果となった。傷害発生要因として傷害群と非傷害群間でWU・CDの実施や必要栄養素の摂取に差があるのではと考えたが本調査はこの仮説を支持しなかった。しかし,傷害群では試合や練習の機会を失う者もおり,今後の課題としてその他の内的・外的要因に関して傷害群と非傷害群間の差を比較し,高校部活の競技レベルにおいて傷害予防に有効かつ実施可能な内容を検討する必要がある。