[P-TK-10-4] 手すりにもたれて下衣の上げ下げを行う動作の効果
Keywords:トイレ手すり, 下衣の上げ下げ, 立位バランス
【はじめに,目的】
片麻痺者等に対するトイレの手すりとしては,便座に座って非麻痺側の壁に壁離れ寸法が数センチのL字手すりを設置するケースが多くみられる。しかし,麻痺側上肢が機能しない場合,この環境では,健側上肢で手すりを把持すると,下衣の上げ下げ動作が困難になる。そこで,壁離れ寸法を約20cmとした手すりの縦部分に体幹をもたれると,下衣の上げ下げ動作が容易になるのではないかと考えた。本研究では,縦手すりにもたれて下衣の上げ下げをする動作の有効性を客観的に検証することを目的とする。
【方法】
被験者は,A県内の介護老人保健施設Bに勤務する健常な男性10名とした。平均年齢は39.3±5.9歳だった。測定はA県内の介護老人保健施設Bの機能訓練室にて,手すりの代わりにベストポジションバー(ホクメイ社製)を用いて擬似的な環境を設定した。床にWiiボード(任天堂社製)を置き,ノートパソコンをブルートゥースで接続した。矢状面の分析をするために,iPhone 5s(Apple社製)で3 m離れた位置から動画を撮影した。被験者は,同施設のユニフォームの上から短パンを着用し,利き手をアームスリングで上肢を固定した。まず,Wiiボード上でベストポジションバーにもたれない状態で短パンを腸骨上端部から膝蓋骨上端部まで下げる動作,上げる動作を各5回実施した。次に,固定側の肩・胸部をベストポジションバーに付けてもたれる姿勢を取り,同様の動作を行った。Wiiボードにより各動作の重心動揺を測定し,ノートパソコンに取り込んだ後,RA Clarkらが開発したソフトで解析した。矢状面を撮影した動画は,Quick Time7 Pro(Apple社製)によりイメージシークエンスに変換後,ImageJ(NIH社製)によって被験者の耳垂下端の上下移動距離を測定した。時間,重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離に関して,手すりなしと手すりにもたれた状態の間で対応のあるt検定を行った。手すりを使用した動作において有意差がみられた項目については,各項目間でピアソンの相関係数を求めた。統計処理には,SPSS ver.22.0(IBM社製)を用い,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離に関しては,下げ動作,上げ動作ともに手すりありの場合が,手すりなしの場合と比較して有意に低かった。手すりを使用した動作における重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離の相関係数は,上げ動作における重心総軌跡長と矩形面積が0.659,下げ動作における矩形面積と耳垂移動距離が0.734と,それぞれ有意な正の相関を示した。
【結論】
縦手すりにもたれて下衣の上げ下げをすることで,重心動揺・上下移動が小さくなり,バランスが安定することが明らかになった。また,縦手すりにもたれた動作の下げ動作においては,上下移動が少ない姿勢で動作を行うことが,より小さな重心線の移動範囲で動作を行うことにつながるのではないかと推察された。
片麻痺者等に対するトイレの手すりとしては,便座に座って非麻痺側の壁に壁離れ寸法が数センチのL字手すりを設置するケースが多くみられる。しかし,麻痺側上肢が機能しない場合,この環境では,健側上肢で手すりを把持すると,下衣の上げ下げ動作が困難になる。そこで,壁離れ寸法を約20cmとした手すりの縦部分に体幹をもたれると,下衣の上げ下げ動作が容易になるのではないかと考えた。本研究では,縦手すりにもたれて下衣の上げ下げをする動作の有効性を客観的に検証することを目的とする。
【方法】
被験者は,A県内の介護老人保健施設Bに勤務する健常な男性10名とした。平均年齢は39.3±5.9歳だった。測定はA県内の介護老人保健施設Bの機能訓練室にて,手すりの代わりにベストポジションバー(ホクメイ社製)を用いて擬似的な環境を設定した。床にWiiボード(任天堂社製)を置き,ノートパソコンをブルートゥースで接続した。矢状面の分析をするために,iPhone 5s(Apple社製)で3 m離れた位置から動画を撮影した。被験者は,同施設のユニフォームの上から短パンを着用し,利き手をアームスリングで上肢を固定した。まず,Wiiボード上でベストポジションバーにもたれない状態で短パンを腸骨上端部から膝蓋骨上端部まで下げる動作,上げる動作を各5回実施した。次に,固定側の肩・胸部をベストポジションバーに付けてもたれる姿勢を取り,同様の動作を行った。Wiiボードにより各動作の重心動揺を測定し,ノートパソコンに取り込んだ後,RA Clarkらが開発したソフトで解析した。矢状面を撮影した動画は,Quick Time7 Pro(Apple社製)によりイメージシークエンスに変換後,ImageJ(NIH社製)によって被験者の耳垂下端の上下移動距離を測定した。時間,重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離に関して,手すりなしと手すりにもたれた状態の間で対応のあるt検定を行った。手すりを使用した動作において有意差がみられた項目については,各項目間でピアソンの相関係数を求めた。統計処理には,SPSS ver.22.0(IBM社製)を用い,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離に関しては,下げ動作,上げ動作ともに手すりありの場合が,手すりなしの場合と比較して有意に低かった。手すりを使用した動作における重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離の相関係数は,上げ動作における重心総軌跡長と矩形面積が0.659,下げ動作における矩形面積と耳垂移動距離が0.734と,それぞれ有意な正の相関を示した。
【結論】
縦手すりにもたれて下衣の上げ下げをすることで,重心動揺・上下移動が小さくなり,バランスが安定することが明らかになった。また,縦手すりにもたれた動作の下げ動作においては,上下移動が少ない姿勢で動作を行うことが,より小さな重心線の移動範囲で動作を行うことにつながるのではないかと推察された。