第52回日本理学療法学術大会

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[P-TK-10] ポスター(地域)P10

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-10-5] 脊椎脊髄疾患患者における手段的日常生活活動の経時的変化

田島 健太郎1,2, 原田 亮1, 飯塚 隆充1,2, 臼田 滋2 (1.榛名荘病院リハビリテーション部, 2.群馬大学大学院保健学研究科)

キーワード:脊椎脊髄疾患, 手段的日常生活活動, 経時的変化

【はじめに,目的】

当院では脊椎脊髄疾患患者に対する手術後,リハビリテーションを担っている。身体機能も比較的高く,自宅退院が多いが退院後の生活では不安や困難さがある場合も多い印象である。だが,退院後の生活状況の報告は基本的日常生活活動や他の疾患の報告が散見する程度で,横断的な報告が多い。本研究の目的は,脊椎脊髄疾患患者における生活状況を調査し,手段的日常生活活動の経時的変化を分析することである。


【方法】

対象は当院で手術を施行した脊椎脊髄疾患患者とした。基本情報として年齢,診断名,身体機能として入退院時のTimed Up and Go Test(TUG),痛み・しびれ(NRS)を調査した。経時的な調査項目はBarthel Index(BI),Frenchay Activities Index(FAI),SF-8(身体的・精神的サマリースコア:PCS・MCS)とした。FAIは各0-3点,15項目,45点満点で下位項目を家事(食事の準備・片付け,洗濯,掃除,力仕事)・レジャー/仕事(外出,趣味,旅行,家や車の手入れ,仕事)・外出他(買い物,屋外歩行,交通手段の利用,庭仕事,読書)の3領域に分け,各領域・全体の合計点を算出した。調査は入院時・退院時・退院後1ヶ月(1M)・3ヶ月(3M)・6ヶ月(6M)に質問紙調査を行った。調査対象は調査時に同意が得られた124名,分析対象は6Mまで返信のあった70名(63.3±13.9歳),頸椎疾患21名,胸腰椎疾患49名とした。統計解析はTUG,痛み・しびれは対応のあるt検定またはWilcoxonの符号付順位検定を行った。SF-8(PCS・MCS)は反復測定分散分析後に多重比較(Tukey法),BI,FAIはFriedman検定実施後にWilcoxonの符号付順位検定をし,Bonferroni補正を行った。統計ソフトはSPSS Statistics22を使用し,有意水準は5%とした。


【結果】

6M時点の回収率は92.0%であった。TUG・痛み・しびれは入院時に比べ退院時で有意に改善を認めた。BIは各時期ともほぼ満点であったが,入院時に比べ退院時と3Mで有意に改善を認めた。PCSは入院時と比べ各時期で,退院時と比べ3・6Mで,1Mと比べ3・6Mで有意に改善を認めた。MCSは入院時に比べ3・6M,退院時と比べ6Mで有意に改善を認めた。FAI合計点は中央値(四分位範囲)で入院時及び1・3・6Mで22(16-29),19.5(14-27),25(20-32),27(23-31)であり,3領域はそれぞれ,家事は6.5(4-13),7.5(3-12),10(4.75-14),11(6-14),レジャー/仕事は5(3-9),4(2-6),6(4-9),7(4.75-9),外出は9(7-11),9(7-11),10(9-12),11(9-12)であった。合計点・家事・外出は入院時に比べ6M,1Mに比べ3・6Mで有意に改善を認めた。レジャー/仕事は入院時に比べ1Mで有意に低下した後,1Mに比べ3・6Mで有意に改善を認めた。


【結論】

対象者は身体機能が比較的高く,BIもほぼ満点であった。しかし,FAIは退院直後から改善を認めず,時間経過とともに改善を認め,各評価の経過は異なる結果であった。今後は精神面との関係性や退院後の痛み・しびれとも併せて検討する必要があると考える。