[P-TK-12-2] 地域在住高齢女性における転倒恐怖感と姿勢制御能力および下肢筋力との関連
Keywords:転倒恐怖感, 下肢筋力, 姿勢制御能力
【はじめに,目的】
高齢者における転倒に対する過度の恐怖感(転倒恐怖感)は日常生活活動の制限や行動範囲の縮小を引き起こすことから問題視されている。高齢者の転倒恐怖感には下肢筋力や姿勢制御能力といった運動機能が関連することが報告されているが,下肢筋力を膝伸展筋力だけでなく,股・足関節周囲筋も含めて詳細に評価した研究,あるいは姿勢制御能力を安定した支持面上だけでなく不安定な支持面上での姿勢制御能力も含めて評価した研究は少ない。そこで本研究は地域在住高齢者を対象に下肢筋力および姿勢制御能力を詳細に評価し,それらが転倒恐怖感に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は地域在住高齢女性63名(年齢72.1±4.2歳)とした。測定に大きな支障を及ぼすほどの重度の神経学的・整形学的障害や認知障害を有する者は除外した。
下肢筋力として膝関節伸展,股関節外転,足関節底屈,セッティング筋力を測定した。なお,セッティング筋力は専用の筋力測定機器(アルケア製ロコモスキャン)を用いて測定した。姿勢制御能力について,安定した支持面上での姿勢制御能力として,足圧分布測定装置(フィンガルリンク製Win-Pod)を用いて開眼片脚立位を20秒間保持させたときの前後および左右方向の足圧中心(CoP)の偏差・平均移動速度を測定した。また,動的な姿勢制御能力としてファンクショナルリーチを測定した。不安定な支持面上での姿勢制御能力として,不安定傾斜板(酒井医療製DYJOC board plus)上で20秒間片脚立位保持させたときの前後および左右それぞれの角度変動域・総角度変動を測定した。なお,角度変動域は傾斜した角度の絶対値平均で角度変動域が大きいほど不安定であることを示し,総角度変動は変動した角度の総量で総角度変動が多いほど不安定板を動かす速度が速いことを意味する。
転倒恐怖感は質問紙にて屋外活動に対する転倒恐怖感について調査した。「屋外で転ぶのではないかと不安ですか」という質問に対して,少しでも不安があると回答した者を転倒恐怖群,不安はないと回答した者を非転倒恐怖群に分類した。
統計は転倒恐怖感の有無を従属変数とし,下肢筋力および姿勢制御能力を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
【結果】
転倒恐怖群は33名,非転倒恐怖群は30名であり,2群間で年齢の有意差はみられなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果,左右方向のCoP偏差(オッズ比:2.23),左右方向のCoP移動速度(オッズ比:0.876),不安定板の前後角度変動域(オッズ比:3.99)が有意な関連因子として抽出された。
【結論】
本研究の結果,地域在住高齢女性における転倒恐怖感には下肢筋力よりも姿勢制御能力のほうが関連が強く,安定した支持面上での姿勢制御能力のみならず,不安定な支持面上での姿勢制御能力も転倒恐怖感に影響を及ぼしていることが示唆された。
高齢者における転倒に対する過度の恐怖感(転倒恐怖感)は日常生活活動の制限や行動範囲の縮小を引き起こすことから問題視されている。高齢者の転倒恐怖感には下肢筋力や姿勢制御能力といった運動機能が関連することが報告されているが,下肢筋力を膝伸展筋力だけでなく,股・足関節周囲筋も含めて詳細に評価した研究,あるいは姿勢制御能力を安定した支持面上だけでなく不安定な支持面上での姿勢制御能力も含めて評価した研究は少ない。そこで本研究は地域在住高齢者を対象に下肢筋力および姿勢制御能力を詳細に評価し,それらが転倒恐怖感に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は地域在住高齢女性63名(年齢72.1±4.2歳)とした。測定に大きな支障を及ぼすほどの重度の神経学的・整形学的障害や認知障害を有する者は除外した。
下肢筋力として膝関節伸展,股関節外転,足関節底屈,セッティング筋力を測定した。なお,セッティング筋力は専用の筋力測定機器(アルケア製ロコモスキャン)を用いて測定した。姿勢制御能力について,安定した支持面上での姿勢制御能力として,足圧分布測定装置(フィンガルリンク製Win-Pod)を用いて開眼片脚立位を20秒間保持させたときの前後および左右方向の足圧中心(CoP)の偏差・平均移動速度を測定した。また,動的な姿勢制御能力としてファンクショナルリーチを測定した。不安定な支持面上での姿勢制御能力として,不安定傾斜板(酒井医療製DYJOC board plus)上で20秒間片脚立位保持させたときの前後および左右それぞれの角度変動域・総角度変動を測定した。なお,角度変動域は傾斜した角度の絶対値平均で角度変動域が大きいほど不安定であることを示し,総角度変動は変動した角度の総量で総角度変動が多いほど不安定板を動かす速度が速いことを意味する。
転倒恐怖感は質問紙にて屋外活動に対する転倒恐怖感について調査した。「屋外で転ぶのではないかと不安ですか」という質問に対して,少しでも不安があると回答した者を転倒恐怖群,不安はないと回答した者を非転倒恐怖群に分類した。
統計は転倒恐怖感の有無を従属変数とし,下肢筋力および姿勢制御能力を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
【結果】
転倒恐怖群は33名,非転倒恐怖群は30名であり,2群間で年齢の有意差はみられなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果,左右方向のCoP偏差(オッズ比:2.23),左右方向のCoP移動速度(オッズ比:0.876),不安定板の前後角度変動域(オッズ比:3.99)が有意な関連因子として抽出された。
【結論】
本研究の結果,地域在住高齢女性における転倒恐怖感には下肢筋力よりも姿勢制御能力のほうが関連が強く,安定した支持面上での姿勢制御能力のみならず,不安定な支持面上での姿勢制御能力も転倒恐怖感に影響を及ぼしていることが示唆された。