[P-TK-14-4] 骨盤底筋群への理学療法アプローチの考察
便排出障害に対するバイオフィードバック療法の経験から
Keywords:骨盤底筋群, 理学療法効果, 排泄障害
【背景】近年,排泄障害を有する患者は増加傾向にある。理学療法士学会にもウィメンズヘルス・メンズヘルス部門が立ち上がり,排泄障害に関する研究や骨盤底機能障害への治療効果の検証も始まっている。我々は,大腸肛門病の専門病院として,排便障害と骨盤底機能や姿勢に関する研究を重ねてきた。今回,便排出障害に対して理学療法士が行ったBiofeedback(BF)療法の効果を検討したので報告する。
【対象と方法】対象は,2014年4月から2016年9月までに理学療法士が排出訓練を行った145例とした。方法は,retrospectiveに電子カルテから診断に対する理学療法の内容と直腸肛門機能検査の結果をまとめた。また,治療後の症状転機を医師の診療録から抽出し,PAC-QOLとConstipation Scoring System(CSS)で治療前後を比較して効果判定を行った。
【結果】145例は男性65例(平均年齢68.5±17.4歳),女性80例(平均年齢61.4±19.0歳)より成り,排便障害の内訳はnon-relaxing of puborectalis(PR)54例,rectocele50例,anismus22例,intussusception21例,slow transit14例,腹圧低下20例,その他21例(重複有)であった。結腸性の便秘は約10%であり,90%は直腸性の便秘であった。直腸肛門機能検査の結果から,non-relaxing of PRとanismusの症例はrectoceleやintussusceptionの症例よりも怒責時の肛門内圧が高く,バルーン排出検査で排出が困難な症例が多かった(p<0.01)。バルーン排出訓練は骨盤底筋群の収縮と弛緩を反復することで肛門の弛緩を学習する訓練で,non-relaxing of PRの45%,anismusの43%に行った。rectoceleの72%,intussusceptionの76%にdraw-inの指導を行ない,intussusceptionの38%には骨盤底筋群の収縮も併せて指導した。再来した患者117例のうち93例(79%)で症状が軽減した。CSSで判定した16例は治療前の9.8±3.0点より治療後は7.0±3.2点と有意(p<0.01)に低下し,特に排便困難感は治療前の2.3±1.5点よりも治療後の1.3±1.3点へと有意(p<0.05)に軽減した。また,19例で治療前の2.23±0.96から治療後は1.86±0.87へと有意(p<0.01)にQOLが向上した。
【考察】排便障害に対するBFの効果を検証した。便排出障害に対する理学療法は症状に合わせて,non-relaxing of PRやanismusでは努責時の骨盤底筋群の弛緩方法を指導し,rectoceleやintussusceptionでは腹圧を会陰方向へ上手に加えるために腹横筋の収縮方法を指導した。このように,運動器のスペシャリストとして理学療法士が体幹や骨盤底の機能改善を目的とした治療を行うことで,CSSでは排出訓練の効果と考えられる排便困難感が軽減し,QOLが向上したと考えられる。今回の結果から,便排出障害に対して理学療法士が行うBF療法の有効性が示唆された。
【対象と方法】対象は,2014年4月から2016年9月までに理学療法士が排出訓練を行った145例とした。方法は,retrospectiveに電子カルテから診断に対する理学療法の内容と直腸肛門機能検査の結果をまとめた。また,治療後の症状転機を医師の診療録から抽出し,PAC-QOLとConstipation Scoring System(CSS)で治療前後を比較して効果判定を行った。
【結果】145例は男性65例(平均年齢68.5±17.4歳),女性80例(平均年齢61.4±19.0歳)より成り,排便障害の内訳はnon-relaxing of puborectalis(PR)54例,rectocele50例,anismus22例,intussusception21例,slow transit14例,腹圧低下20例,その他21例(重複有)であった。結腸性の便秘は約10%であり,90%は直腸性の便秘であった。直腸肛門機能検査の結果から,non-relaxing of PRとanismusの症例はrectoceleやintussusceptionの症例よりも怒責時の肛門内圧が高く,バルーン排出検査で排出が困難な症例が多かった(p<0.01)。バルーン排出訓練は骨盤底筋群の収縮と弛緩を反復することで肛門の弛緩を学習する訓練で,non-relaxing of PRの45%,anismusの43%に行った。rectoceleの72%,intussusceptionの76%にdraw-inの指導を行ない,intussusceptionの38%には骨盤底筋群の収縮も併せて指導した。再来した患者117例のうち93例(79%)で症状が軽減した。CSSで判定した16例は治療前の9.8±3.0点より治療後は7.0±3.2点と有意(p<0.01)に低下し,特に排便困難感は治療前の2.3±1.5点よりも治療後の1.3±1.3点へと有意(p<0.05)に軽減した。また,19例で治療前の2.23±0.96から治療後は1.86±0.87へと有意(p<0.01)にQOLが向上した。
【考察】排便障害に対するBFの効果を検証した。便排出障害に対する理学療法は症状に合わせて,non-relaxing of PRやanismusでは努責時の骨盤底筋群の弛緩方法を指導し,rectoceleやintussusceptionでは腹圧を会陰方向へ上手に加えるために腹横筋の収縮方法を指導した。このように,運動器のスペシャリストとして理学療法士が体幹や骨盤底の機能改善を目的とした治療を行うことで,CSSでは排出訓練の効果と考えられる排便困難感が軽減し,QOLが向上したと考えられる。今回の結果から,便排出障害に対して理学療法士が行うBF療法の有効性が示唆された。