The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » ポスター発表

[P-TK-15] ポスター(地域)P15

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本地域理学療法学会

[P-TK-15-4] 住民が運営する介護予防取組の現状と課題
~自治会,NPO法人へのインタビュー調査から~

高井 逸史1, 高木 さひろ2, 黒田 研二3 (1.大阪経済大学人間科学部, 2.関西大学大学院人間健康研究科, 3.関西大学人間健康学部)

Keywords:住民, 介護予防, 介護予防・日常生活支援総合事業

【はじめに,目的】平成26年介護保険法改正により,要支援者への介護予防サービスが介護保険給付サービスから市町村が実施する介護予防・日常生活支援総合事業(以下,新総合事業)に移行することが決まった。新総合事業では介護事業所からの介護予防サービスに加え,住民ボランティアやNPOといった多様な主体から訪問や通所の支援が提供される仕組みとなった。住民運営の活動には自治会(町内会)における校区福祉委員会,NPOなどがあり,新総合事業では介護予防が住民ら同士のつながりの中に位置づけられている。血縁・地縁の弱体化が進行する中,互助活動が介護予防の担い手として機能するかどうかが,地域包括ケア実現の大きなカギになると考える。そこで本研究では,介護予防に資する互助活動の現状を把握し,住民主体の健康づくりを構築するため,リハビリ専門職の担うべき役割の可能性を探ることを目的とする。

【方法】本対象地域は大阪府政令指定都市である堺市M区とした。M区は堺市内で最も高齢化が進んでいる区域である。自治会で活動する校区福祉委員会が2グループ,南区を基盤に活動するNPOが2グループ,合計4グループを対象とした。NPOの選択は,介護予防を資する住民グループという条件のもと,社会福祉協議会の協力を得て抽出した。各グループ代表への個別インタビュー調査を行った。質問内容は①回答者の属性,②介護予防に関する取組み内容,③取組みの課題とした。インタビュー対象者の発言をICレコーダー録音,逐語データを作成した。データから重要でないテクストや言い換えを削除して要約を行った。予め質問項目を設定していたが会話の流れで別の質問の回答に移ることがあり,項目を再構成してテーマを設定し分析,要約を行った。要約内容をコーディングし,コード間の意味合いや結びつき,関係性を比較しながらカテゴリー化を行った。

【結果】インタビューの結果,自治会では①校区福祉委員。②閉じこもり予防を目的としたイベントを月1回開催,ラジオ体操なども実施していた。校区内住民ボランティアが20名参加し,近隣商店が商品を無償で提供していた。③課題はイベント内容の固定化,後継者の問題,体操のマンネリ化など。一方NPOでは①堺市シニア向け生きがい講座の元受講生。②ウォーキング講座を中心とした健康づくり講座,喫茶をはじめ歴史講座,俳句講座など開催し地域で交流する場を提供し,会員を募り参加費を徴収していた。③課題は支える側のメンバーが高齢化し将来への不安,自治会組織と協力体制が困難である。

【結論】地域包括ケアを構築するためには,自治会とNPOが補完し合い協力関係を築く仕組みが求められる。また支える側のマンパワー不足を解消するため,後継者の育成制度を整備する必要がある。さらに保健師のみならず,理学療法士も住民運営の介護予防に関わり住民と協働し,健康を通じた地域づくりに参画しなければならない。