[P-TK-20-4] 疼痛を伴うサルコペニア中高年者の特徴
Keywords:サルコペニア, 疼痛, 地域在住中高年者
【はじめに,目的】
近年,高齢化の進展に伴い,筋肉の量的・質的な低下を来たすサルコペニア(SP)の予防について注目が集まっている。SPは生活機能を低下させると報告されている一方で,筋力低下から荷重関節等に対する疼痛を招くものと想像される。しかしながら,SPの診断基準に疼痛評価はなく,SPと疼痛の関連に対する報告も少ない。今回,SPに対して疼痛の有無による群分けを行い,疼痛を有するSPの特徴を明らかにし,SP予防の一助にすることを目的とする。
【方法】
60~70歳代の地域在住中高年者765名のうちAsia Working Group for Sarcopeniaの基準に該当した44名(平均年齢73.0±4.5歳,男性20名,女性24名)を対象とした。しかし本研究では,従来の歩行速度の基準である0.8m/sを下回る対象者が1名(2.3%)と少なかったため,1.0m/sを基準とした。
体組成は,BIA法(タニタ社MC-190)によりBMIおよび体脂肪率,補正四肢筋肉量を測定した。運動機能は,握力,歩行速度(快適,最大)のほか,開眼片脚立位保持時間(片脚立位),5回起立時間,等尺性膝伸展力(膝伸展力),足趾把持力を測定した。アンケートは,日本語版EQ-5D-3L(EQ-5D)および運動器疾患や既往症ならびに50歳以降の骨折の有無や,過去1年間の転倒,運動習慣の有無についての聴取を行った。
本研究では,対象者をEQ-5Dの下位項目「痛み/不快感」の項目にて,「中程度の痛みや不快感がある」,「ひどい痛みや不快感がある」と回答した者を有痛群とし,「ない」と回答した者を無痛群とした。統計解析は,定性的データにはカイ二乗分析を行い,定量的データにはマン・ホイットニーのU検定を行った。統計ソフトにはJMP ver11.0 for Macを使用し,有意水準を5%未満とした。
【結果】
群分けの結果,有痛群19名,無痛群25名となり,年齢および性別に有意差を認めなかった。さらに体組成にも有意差を認めなかった。運動機能では,片脚立位にのみ有意差を認め,中央値11.1秒と27.0秒となり,無痛群が高値を示した。有意差は認めなかったが,膝伸展力が1.32Nm/kg対1.71Nm/kgと無痛群が高い傾向であった(p=0.0632)。EQ-5Dは有痛群0.705,無痛群1.000となり,無痛群が有意に高値であった。既往症や運動器疾患,運動習慣,過去1年間の転倒に有意差を認めなかったが,50歳以降の骨折の有無にて42.1%対12.0%と有痛群が有意に多かった。
【結論】
本研究ではSPに該当者に対して疼痛の有無による群分けを行い,運動機能等の比較を行った。結果,有痛群は片脚立位が低く,50歳以降の骨折経験を持つ者が多かった。SPは骨粗鬆症を伴いやすいと報告されている。骨粗鬆症は,その存在に気づきにくいことから沈黙の疾患といわれている。さらに1度の骨折が再骨折のリスクになることも報告されている。有痛群では,片脚立位が低く,今後骨折する可能性が高いと考えられる。そのためSPを診断する際には,疼痛の評価も重要であると示唆された。
近年,高齢化の進展に伴い,筋肉の量的・質的な低下を来たすサルコペニア(SP)の予防について注目が集まっている。SPは生活機能を低下させると報告されている一方で,筋力低下から荷重関節等に対する疼痛を招くものと想像される。しかしながら,SPの診断基準に疼痛評価はなく,SPと疼痛の関連に対する報告も少ない。今回,SPに対して疼痛の有無による群分けを行い,疼痛を有するSPの特徴を明らかにし,SP予防の一助にすることを目的とする。
【方法】
60~70歳代の地域在住中高年者765名のうちAsia Working Group for Sarcopeniaの基準に該当した44名(平均年齢73.0±4.5歳,男性20名,女性24名)を対象とした。しかし本研究では,従来の歩行速度の基準である0.8m/sを下回る対象者が1名(2.3%)と少なかったため,1.0m/sを基準とした。
体組成は,BIA法(タニタ社MC-190)によりBMIおよび体脂肪率,補正四肢筋肉量を測定した。運動機能は,握力,歩行速度(快適,最大)のほか,開眼片脚立位保持時間(片脚立位),5回起立時間,等尺性膝伸展力(膝伸展力),足趾把持力を測定した。アンケートは,日本語版EQ-5D-3L(EQ-5D)および運動器疾患や既往症ならびに50歳以降の骨折の有無や,過去1年間の転倒,運動習慣の有無についての聴取を行った。
本研究では,対象者をEQ-5Dの下位項目「痛み/不快感」の項目にて,「中程度の痛みや不快感がある」,「ひどい痛みや不快感がある」と回答した者を有痛群とし,「ない」と回答した者を無痛群とした。統計解析は,定性的データにはカイ二乗分析を行い,定量的データにはマン・ホイットニーのU検定を行った。統計ソフトにはJMP ver11.0 for Macを使用し,有意水準を5%未満とした。
【結果】
群分けの結果,有痛群19名,無痛群25名となり,年齢および性別に有意差を認めなかった。さらに体組成にも有意差を認めなかった。運動機能では,片脚立位にのみ有意差を認め,中央値11.1秒と27.0秒となり,無痛群が高値を示した。有意差は認めなかったが,膝伸展力が1.32Nm/kg対1.71Nm/kgと無痛群が高い傾向であった(p=0.0632)。EQ-5Dは有痛群0.705,無痛群1.000となり,無痛群が有意に高値であった。既往症や運動器疾患,運動習慣,過去1年間の転倒に有意差を認めなかったが,50歳以降の骨折の有無にて42.1%対12.0%と有痛群が有意に多かった。
【結論】
本研究ではSPに該当者に対して疼痛の有無による群分けを行い,運動機能等の比較を行った。結果,有痛群は片脚立位が低く,50歳以降の骨折経験を持つ者が多かった。SPは骨粗鬆症を伴いやすいと報告されている。骨粗鬆症は,その存在に気づきにくいことから沈黙の疾患といわれている。さらに1度の骨折が再骨折のリスクになることも報告されている。有痛群では,片脚立位が低く,今後骨折する可能性が高いと考えられる。そのためSPを診断する際には,疼痛の評価も重要であると示唆された。