[P-TK-22-3] 疾患特性により生活の質に影響はあるか?
―SEIQoL-DWによる量と質の両面からの検討―
Keywords:QOL, ADL, 疾患特性
【はじめに,目的】
機能回復の可能性が高い疾患と慢性難治性疾患とでは,その疾患特性に応じて患者のHopeやNeedsが影響されるため,患者の生活の質(QOL)にも量的・質的に差異が生じると推測される。本研究の目的は,回復期の患者と慢性・難治性疾患患者のQOLに関して量と質の両側面から比較を行い,疾患特性によるQOLへの影響を検討することとした。
【方法】
対象は,機能回復が期待される回復期の患者群として脳卒中患者10名(男性5名,女性5名,平均年齢77.6±6.6歳,発症期間0.3±0.1年),慢性・難治性疾患の患者群として維持血液透析(HD)患者17名(男性8名,女性9名,平均年齢73.3±9.0歳,発症(透析)期間10.8±10.0年)およびパーキンソン病(PD)患者17名(男性6名,女性11名,平均年齢70.0±9.7歳,発症期間6.9±4.1年)とした。QOLの評価には,量と質の両面から評価が可能な,半構造化面接法を用いるThe Schedule for the Evaluation of Individual QOL-Direct Weighting(SEIQoL-DW)を採用した。SEIQoL-DWでは,QOLを0~100点に点数化して量的に評価することができるだけでなく,QOLの構成内容についても質的に評価することができる。加えて,各患者の属性として,Barthel Index(BI),発症からの期間,重症度などを調査した。QOLの点数については統計学的に分析し,QOLの構成内容についてはテキスト内容の分析を行った。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
SEIQoL-DWの点数は脳卒中患者76.9±20.0点,HD患者59.9±16.7点,PD患者74.0±17.0点で,HD患者が有意に低かった(p<0.05)。一方で,QOLの点数には,BIと性別が統計学的有意に関連していた。そこで,性別とBIを共変量とし,QOLの点数を疾患別に比較すると,疾患による得点の差は認められなかった。次に,QOLの構成内容を分析した結果,家族,趣味,健康,友人,経済,食事,仕事,外出が主たる構成内容として抽出された。一方で,疾患別に構成内容を比較すると,HD患者群では趣味・健康・友人を構成内容として挙げる割合が低く,脳卒中患者群では経済を構成内容として挙げる割合が低い傾向にあった。一部の構成内容には,疾患による差異が統計学的にも認められた(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果からは,QOLの点数については,疾患特性よりもADLや性差の影響が大きいことが示唆された。従って,ADLの維持・向上は,疾患に関わらずQOLの向上に重要であると考えられた。一方で,QOLの構成内容については,疾患特性で差異がある可能性が示された。疾病特有の生活への制限について,十分に評価し支援していく必要性があると考えられた。
機能回復の可能性が高い疾患と慢性難治性疾患とでは,その疾患特性に応じて患者のHopeやNeedsが影響されるため,患者の生活の質(QOL)にも量的・質的に差異が生じると推測される。本研究の目的は,回復期の患者と慢性・難治性疾患患者のQOLに関して量と質の両側面から比較を行い,疾患特性によるQOLへの影響を検討することとした。
【方法】
対象は,機能回復が期待される回復期の患者群として脳卒中患者10名(男性5名,女性5名,平均年齢77.6±6.6歳,発症期間0.3±0.1年),慢性・難治性疾患の患者群として維持血液透析(HD)患者17名(男性8名,女性9名,平均年齢73.3±9.0歳,発症(透析)期間10.8±10.0年)およびパーキンソン病(PD)患者17名(男性6名,女性11名,平均年齢70.0±9.7歳,発症期間6.9±4.1年)とした。QOLの評価には,量と質の両面から評価が可能な,半構造化面接法を用いるThe Schedule for the Evaluation of Individual QOL-Direct Weighting(SEIQoL-DW)を採用した。SEIQoL-DWでは,QOLを0~100点に点数化して量的に評価することができるだけでなく,QOLの構成内容についても質的に評価することができる。加えて,各患者の属性として,Barthel Index(BI),発症からの期間,重症度などを調査した。QOLの点数については統計学的に分析し,QOLの構成内容についてはテキスト内容の分析を行った。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
SEIQoL-DWの点数は脳卒中患者76.9±20.0点,HD患者59.9±16.7点,PD患者74.0±17.0点で,HD患者が有意に低かった(p<0.05)。一方で,QOLの点数には,BIと性別が統計学的有意に関連していた。そこで,性別とBIを共変量とし,QOLの点数を疾患別に比較すると,疾患による得点の差は認められなかった。次に,QOLの構成内容を分析した結果,家族,趣味,健康,友人,経済,食事,仕事,外出が主たる構成内容として抽出された。一方で,疾患別に構成内容を比較すると,HD患者群では趣味・健康・友人を構成内容として挙げる割合が低く,脳卒中患者群では経済を構成内容として挙げる割合が低い傾向にあった。一部の構成内容には,疾患による差異が統計学的にも認められた(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果からは,QOLの点数については,疾患特性よりもADLや性差の影響が大きいことが示唆された。従って,ADLの維持・向上は,疾患に関わらずQOLの向上に重要であると考えられた。一方で,QOLの構成内容については,疾患特性で差異がある可能性が示された。疾病特有の生活への制限について,十分に評価し支援していく必要性があると考えられた。