[P-TK-22-4] 3大認知症の身体的リハビリテーションの効果の比較
Keywords:認知症, 機能的自立度評価法, 実施期間
【はじめに,目的】
日本社会の高齢化に伴い,認知症患者数は増加の一途をたどっている。今後高齢化に伴い,身体障害者のリハビリテーションにおいても認知症を合併していることが増すと思われる。精神疾患,特に認知症を合併している場合は理学療法実施の阻害因子となり,機能的自立度評価法(以下,FIM)のスコア改善が阻害されると報告されている。我々は前年の日本理学療法学術大会で精神疾患別にFIMの改善や実施期間について調査し,精神疾患を合併していても日常生活活動(以下,ADL)に改善が得られると報告した。一方,有意に改善が得られにくい結果であった認知症に着目し,今回は認知症をアルツハイマー型認知症(以下,ADD),脳血管性認知症(以下,VD),レビー小体型認知症(以下,DLB)に分類しADLの改善や実施期間に違いがあるかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
平成25年3月~28年9月の期間に当院にて身体リハを行った患者を対象とした。方法は認知症の診断があり診断名からADD,VD,DLBに分類。FIMにて身体リハ開始時と終了時に評価を実施。FIM総得点を運動項目,認知項目にわけ,それぞれ終了時から開始時の点数を差し引いた点を利得点(以下,FIM利得点)として算出。各群の身体リハ開始時・終了時のFIM得点および各項目の点をWilcoxonの符号付順位和検定を実施。群間の年齢,実施期間,FIM利得点,各FIM項目の開始時・終了時の点数の比較をKruskal-Wallis検定,多重比較(Scheffe法)を実施。各検定の有意水準は5%とした。
【結果】
男性28名,女性44名,年齢は80.7歳±9.8であった。認知症の内訳はADDが41名,VDが16名,DLBが15名であった。各群内の検定では,すべての群で開始時に比べ終了時の運動項目および総得点が有意に高い結果であった。(p<0.01)改善がみられたFIM項目として,ADDでは更衣(上半身),更衣(下半身),トイレ動作,ベッド・椅子・車椅子移乗,トイレ移乗,浴槽・シャワー移乗,歩行車椅子移動,階段であった。VDではベッド・椅子・車椅子移乗,浴槽・シャワー移乗のみであった。DLBではトイレ動作,トイレ移乗,浴槽・シャワー移乗,歩行車椅子移動,階段,記憶であった。群間の検定では,ADDに比べDLBの開始時・終了時の記憶に有意差がみられたが,それ以外の項目で有意差はみられなかった。年齢は,ADDが有意に高い結果であったが,実施期間,FIM利得点について有意差はみられなかった。
【結論】
今回は認知症をADD,VD,DLBに分類しADLの改善や実施期間に違いがあるかを明らかにすることを目的に実施した。すべての群で運動項目および総得点に改善が得られており,群間において実施期間・FIM利得点に有意差はなかったことから,3大認知症を合併していたとしてもADLが向上し,それに違いはないことが示唆された。改善しやすい項目としては,移乗・移動であった。
日本社会の高齢化に伴い,認知症患者数は増加の一途をたどっている。今後高齢化に伴い,身体障害者のリハビリテーションにおいても認知症を合併していることが増すと思われる。精神疾患,特に認知症を合併している場合は理学療法実施の阻害因子となり,機能的自立度評価法(以下,FIM)のスコア改善が阻害されると報告されている。我々は前年の日本理学療法学術大会で精神疾患別にFIMの改善や実施期間について調査し,精神疾患を合併していても日常生活活動(以下,ADL)に改善が得られると報告した。一方,有意に改善が得られにくい結果であった認知症に着目し,今回は認知症をアルツハイマー型認知症(以下,ADD),脳血管性認知症(以下,VD),レビー小体型認知症(以下,DLB)に分類しADLの改善や実施期間に違いがあるかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
平成25年3月~28年9月の期間に当院にて身体リハを行った患者を対象とした。方法は認知症の診断があり診断名からADD,VD,DLBに分類。FIMにて身体リハ開始時と終了時に評価を実施。FIM総得点を運動項目,認知項目にわけ,それぞれ終了時から開始時の点数を差し引いた点を利得点(以下,FIM利得点)として算出。各群の身体リハ開始時・終了時のFIM得点および各項目の点をWilcoxonの符号付順位和検定を実施。群間の年齢,実施期間,FIM利得点,各FIM項目の開始時・終了時の点数の比較をKruskal-Wallis検定,多重比較(Scheffe法)を実施。各検定の有意水準は5%とした。
【結果】
男性28名,女性44名,年齢は80.7歳±9.8であった。認知症の内訳はADDが41名,VDが16名,DLBが15名であった。各群内の検定では,すべての群で開始時に比べ終了時の運動項目および総得点が有意に高い結果であった。(p<0.01)改善がみられたFIM項目として,ADDでは更衣(上半身),更衣(下半身),トイレ動作,ベッド・椅子・車椅子移乗,トイレ移乗,浴槽・シャワー移乗,歩行車椅子移動,階段であった。VDではベッド・椅子・車椅子移乗,浴槽・シャワー移乗のみであった。DLBではトイレ動作,トイレ移乗,浴槽・シャワー移乗,歩行車椅子移動,階段,記憶であった。群間の検定では,ADDに比べDLBの開始時・終了時の記憶に有意差がみられたが,それ以外の項目で有意差はみられなかった。年齢は,ADDが有意に高い結果であったが,実施期間,FIM利得点について有意差はみられなかった。
【結論】
今回は認知症をADD,VD,DLBに分類しADLの改善や実施期間に違いがあるかを明らかにすることを目的に実施した。すべての群で運動項目および総得点に改善が得られており,群間において実施期間・FIM利得点に有意差はなかったことから,3大認知症を合併していたとしてもADLが向上し,それに違いはないことが示唆された。改善しやすい項目としては,移乗・移動であった。