[P-YB-03-1] 地域在住高齢者の誤嚥リスクと運動機能,心理面,栄養状態との関連
キーワード:地域在住高齢者, 誤嚥リスク, 運動機能
【はじめに,目的】
高齢者における摂食・嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎を引き起こし,生命予後にも影響を与える。また,健康寿命の延伸を目的に,老年症候群の早期発見と介入が重要となっている現在,運動機能低下や心理面の障害,低栄養といった栄養状態のみならず,口腔機能低下に対する取り組みも重要である。摂食・嚥下機能に関する先行研究の多くは,施設入所者といった要介護認定者や虚弱高齢者を対象に,運動機能や心理面,栄養状態との関連性を検討しているが,自立した生活を送る地域在住高齢者を対象とした報告は少ない。本研究の目的は,地域在住高齢者の摂食・嚥下機能と運動機能・心理面・栄養状態との関連性を明らかにし,摂食・嚥下機能に最も影響する要因を検討することである。
【方法】
対象は自立した生活を送る地域在住高齢者で,当施設が地域の公民館等で実施している介護予防事業に参加した高齢者194名(男性22名,女性172名,平均年齢77.3±6.7歳)とした。調査項目は,年齢,摂食・嚥下機能,運動機能,心理面,栄養状態,転倒リスク数とし,摂食・嚥下機能評価は,地域高齢者誤嚥リスク評価指標(DRACE)を用いて評価した。DRACEは12項目からなる質問紙であり,各項目3件法で回答を求め,高得点ほど摂食・嚥下機能低下リスクが高いことを示す。運動機能は,握力,開眼片脚立位,椅子起立時間,Timed Up and Go(TUG)を測定し,心理面はGDS-15(GDS)を用いて評価した。また栄養状態は,身長と体重からBMIを算出し,転倒リスク数は,鈴木らの転倒アセスメントを用いて評価した。統計解析は,DRACEスコアと年齢,BMI,各運動機能評価項目,転倒リスク数,GDSの関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。そして,DRACEスコアを従属変数,単相関分析にて有意差を認めた項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した。なお,いずれの統計手法とも有意水準は5%未満とした。
【結果】
単相関分析の結果,DRACEスコアと有意な相関関係が得られた項目は,BMI(ρ=-0.226,p<0.001),握力(ρ=-0.212,p<0.001),椅子起立時間(ρ=0.271,p<0.001),TUG(ρ=0.239,p<0.001),転倒リスク(ρ=0.364,p<0.001),GDS(ρ=0.317,p<0.001)であった。DRACEスコアを従属変数とした重回帰分析では,BMI(β=-0.269,p<0.001),椅子起立時間(β=0.269,p<0.001),転倒リスク(β=0.173,p=0.031),GDS(β=0.165,p=0.027)が有意な変数として抽出された。
【結論】
地域在住高齢者の摂食・嚥下機能は,運動機能や心理面ならびに栄養状態と関連することが明らかとなった。また,誤嚥リスクに影響する因子としてはBMI,椅子起立時間,転倒リスク,GDS-15が抽出され,これらの項目に着目した介入が地域在住高齢者の誤嚥リスクを軽減する可能性を示唆した。
高齢者における摂食・嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎を引き起こし,生命予後にも影響を与える。また,健康寿命の延伸を目的に,老年症候群の早期発見と介入が重要となっている現在,運動機能低下や心理面の障害,低栄養といった栄養状態のみならず,口腔機能低下に対する取り組みも重要である。摂食・嚥下機能に関する先行研究の多くは,施設入所者といった要介護認定者や虚弱高齢者を対象に,運動機能や心理面,栄養状態との関連性を検討しているが,自立した生活を送る地域在住高齢者を対象とした報告は少ない。本研究の目的は,地域在住高齢者の摂食・嚥下機能と運動機能・心理面・栄養状態との関連性を明らかにし,摂食・嚥下機能に最も影響する要因を検討することである。
【方法】
対象は自立した生活を送る地域在住高齢者で,当施設が地域の公民館等で実施している介護予防事業に参加した高齢者194名(男性22名,女性172名,平均年齢77.3±6.7歳)とした。調査項目は,年齢,摂食・嚥下機能,運動機能,心理面,栄養状態,転倒リスク数とし,摂食・嚥下機能評価は,地域高齢者誤嚥リスク評価指標(DRACE)を用いて評価した。DRACEは12項目からなる質問紙であり,各項目3件法で回答を求め,高得点ほど摂食・嚥下機能低下リスクが高いことを示す。運動機能は,握力,開眼片脚立位,椅子起立時間,Timed Up and Go(TUG)を測定し,心理面はGDS-15(GDS)を用いて評価した。また栄養状態は,身長と体重からBMIを算出し,転倒リスク数は,鈴木らの転倒アセスメントを用いて評価した。統計解析は,DRACEスコアと年齢,BMI,各運動機能評価項目,転倒リスク数,GDSの関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。そして,DRACEスコアを従属変数,単相関分析にて有意差を認めた項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した。なお,いずれの統計手法とも有意水準は5%未満とした。
【結果】
単相関分析の結果,DRACEスコアと有意な相関関係が得られた項目は,BMI(ρ=-0.226,p<0.001),握力(ρ=-0.212,p<0.001),椅子起立時間(ρ=0.271,p<0.001),TUG(ρ=0.239,p<0.001),転倒リスク(ρ=0.364,p<0.001),GDS(ρ=0.317,p<0.001)であった。DRACEスコアを従属変数とした重回帰分析では,BMI(β=-0.269,p<0.001),椅子起立時間(β=0.269,p<0.001),転倒リスク(β=0.173,p=0.031),GDS(β=0.165,p=0.027)が有意な変数として抽出された。
【結論】
地域在住高齢者の摂食・嚥下機能は,運動機能や心理面ならびに栄養状態と関連することが明らかとなった。また,誤嚥リスクに影響する因子としてはBMI,椅子起立時間,転倒リスク,GDS-15が抽出され,これらの項目に着目した介入が地域在住高齢者の誤嚥リスクを軽減する可能性を示唆した。