[P-YB-05-1] 高齢者における身体組成と要介護の関連性について
キーワード:高齢者, 要介護, 身体組成
【はじめに,目的】
本邦の要介護の要因として,体力低下や転倒が挙げられる。その他の要因として,身体特性に関する報告では身体機能に着目したものは多くみられるが,筋肉量を代表とする身体組成に関する報告は少ない。臨床で,体力低下や転倒により介護を要した高齢者では,四肢が細い痩せ型の患者や,逆に肥満傾向にある患者といった印象が強く,要介護への身体組成の影響が予測される。そこで本研究では,高齢者を対象にした要介護に影響する身体組成の要因を検討した。
【方法】
対象は,当院入院,外来患者41名,平均年齢77.9±6.7歳とした。介護度の内訳は,要支援1:6名,要支援2:8名,要介護1:3名,要介護2:1名であり,自立:23名である。
測定項目として,身体機能評価は握力,膝伸展筋力を測定した。身体組成は,InBody770を用いて骨格筋指数であるSMI(Skeletal Mass Index),四肢・体幹筋肉量割合,四肢・体幹脂肪割合,四肢周囲長を測定した。栄養状態評価は,簡易栄養状態評価表(MNA-SF)を測定した。ADL評価はBarthel Index(BI)を用いた。その他測定項目は,年齢,性別,BMIとした。
統計学的解析は介護保険の有無をもとに自立群と要介護群の2群に分類し,各測定項目を独立サンプルのMann-whitneyのU検定を用いて分析した。また,要介護の有無を従属変数とし,四肢周囲長を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い,要介護の影響因子を検討した。統計処理はSPSS ver.21.0を使用し,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
自立群と要介護群の比較において握力,膝伸展筋力,SMI,四肢・体幹脂肪割合,四肢周囲長,BIの整容を除いた全ての項目,MNA-SF,体重,BMI,体脂肪率の項目が要介護群で有意に低値を示した。四肢・体幹筋肉量割合,BI整容,年齢には有意差は認められなかった。
要介護の有無を従属変数とし,四肢周囲長を独立変数としたロジスティック回帰分析の結果,右脚周囲長(OR=0.70,95%CI=0.533~0.887)が影響因子として抽出された。
【結論】
2群間の比較では筋力,SMI,四肢・体幹脂肪割合,四肢周囲長,BI,MNA-SFにおいて要介護群が有意に低値を示し,要介護において最も影響する四肢周囲長は右脚周囲長であることがわかった。先行研究において四肢周囲長は筋肉量を反映し,高齢者のADLと関連するとの報告がある。一方で身体機能を維持する上では筋の量よりも質を高めることが重要とする報告があるが,今回の対象である入院・外来患者のような疾患を有した高齢者に関しては,四肢・体幹の個別の筋肉量ではなく,全身の筋肉量が介護度に影響することが示唆された。また,脂肪割合では要介護群で有意に低く,脂肪量を高めることが必要であることが示唆された。以上のことから,要介護の予防には身体機能のみではなく身体組成の評価が重要であり,特に下肢の身体組成を改善するような栄養療法や運動療法の介入が重要であることが示唆された。
本邦の要介護の要因として,体力低下や転倒が挙げられる。その他の要因として,身体特性に関する報告では身体機能に着目したものは多くみられるが,筋肉量を代表とする身体組成に関する報告は少ない。臨床で,体力低下や転倒により介護を要した高齢者では,四肢が細い痩せ型の患者や,逆に肥満傾向にある患者といった印象が強く,要介護への身体組成の影響が予測される。そこで本研究では,高齢者を対象にした要介護に影響する身体組成の要因を検討した。
【方法】
対象は,当院入院,外来患者41名,平均年齢77.9±6.7歳とした。介護度の内訳は,要支援1:6名,要支援2:8名,要介護1:3名,要介護2:1名であり,自立:23名である。
測定項目として,身体機能評価は握力,膝伸展筋力を測定した。身体組成は,InBody770を用いて骨格筋指数であるSMI(Skeletal Mass Index),四肢・体幹筋肉量割合,四肢・体幹脂肪割合,四肢周囲長を測定した。栄養状態評価は,簡易栄養状態評価表(MNA-SF)を測定した。ADL評価はBarthel Index(BI)を用いた。その他測定項目は,年齢,性別,BMIとした。
統計学的解析は介護保険の有無をもとに自立群と要介護群の2群に分類し,各測定項目を独立サンプルのMann-whitneyのU検定を用いて分析した。また,要介護の有無を従属変数とし,四肢周囲長を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い,要介護の影響因子を検討した。統計処理はSPSS ver.21.0を使用し,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
自立群と要介護群の比較において握力,膝伸展筋力,SMI,四肢・体幹脂肪割合,四肢周囲長,BIの整容を除いた全ての項目,MNA-SF,体重,BMI,体脂肪率の項目が要介護群で有意に低値を示した。四肢・体幹筋肉量割合,BI整容,年齢には有意差は認められなかった。
要介護の有無を従属変数とし,四肢周囲長を独立変数としたロジスティック回帰分析の結果,右脚周囲長(OR=0.70,95%CI=0.533~0.887)が影響因子として抽出された。
【結論】
2群間の比較では筋力,SMI,四肢・体幹脂肪割合,四肢周囲長,BI,MNA-SFにおいて要介護群が有意に低値を示し,要介護において最も影響する四肢周囲長は右脚周囲長であることがわかった。先行研究において四肢周囲長は筋肉量を反映し,高齢者のADLと関連するとの報告がある。一方で身体機能を維持する上では筋の量よりも質を高めることが重要とする報告があるが,今回の対象である入院・外来患者のような疾患を有した高齢者に関しては,四肢・体幹の個別の筋肉量ではなく,全身の筋肉量が介護度に影響することが示唆された。また,脂肪割合では要介護群で有意に低く,脂肪量を高めることが必要であることが示唆された。以上のことから,要介護の予防には身体機能のみではなく身体組成の評価が重要であり,特に下肢の身体組成を改善するような栄養療法や運動療法の介入が重要であることが示唆された。