[P-YB-05-2] 一次介護予防運動の情報発信者としての理学療法士の信頼度に影響を及ぼす要因
高齢者の一次介護予防運動への態度要因に注目して
Keywords:介護予防運動, 信頼度, 運動行動変容
【はじめに,目的】
近年,介護予防の運動内容や効果に関する研究は数多くなされてきている。しかし,特に一次予防分野において積極的な介護予防事業への参加増進には課題が残されている。今後,後期高齢者となる世代に対する理学療法士(以下,PT)への期待も高まる中,PTが現在の前期高齢者を一次介護予防運動(以下,予防運動)に導くための有効なマーケティングの視点は明確になっていない。
本研究では,高齢者の予防運動の実態とその関連特性を把握するとともに,予防運動に関する情報発信者としてのPTの信頼度とその影響要因を明らかにすることにより,今後の予防運動推進のための基礎的資料を得ることである。
【方法】
調査期間は,2016年9月19日から28日である。調査対象は,2016年2月1日時点で大阪府泉佐野市に在住する65歳から80歳の地域住民10,904名を母集団とする選挙人名簿より等間隔抽出した男女900人である。調査方法は郵送法による質問紙調査を用い,334部の回答を得た(回収率37.1%)。調査項目は性別や年齢,情報発信者への信頼度,予防運動に関する情報収集度(6項目),予防運動に対する態度(5項目)・社会的規範(2項目)・自己効力感(4項目)で,それぞれ5段階尺度で測定した。分析にはこれらの全項目に回答かつPTを「知っている」「聞いたことがある」と回答した200部を用いた。そして情報発信者(医師・研究者・PT)へのそれぞれの信頼度を従属変数とし,性別,年齢,情報収集度,予防運動に対する態度・社会的規範・自己効力感を独立変数(それぞれ合成変数)とする重回帰分析を行った。統計解析には,SPSS(ver,22)を用いた。
【結果】
回答者の特性は男性48.2%,女性51.8%,平均年齢71.5歳であった。医師,研究者,PTに対する信頼度の平均値はそれぞれ4.24,4.02,4.20であった。重回帰分析に独立変数として用いる性別,年齢,情報収集度,予防運動に対する態度・社会的規範・自己効力感の変数間相関分析の結果,多重共線性は見られなかった。医師,研究者,PTに対する信頼度のそれぞれを従属変数とする重回帰分析の結果,医師への信頼度には「情報収集度(.192,p<.01)」と「社会的規範(.180,p<.05)」が有意な影響を与え(R2=.105),研究者への信頼度にも「情報収集度(.270,p<.001)」と「社会的規範(.234,p<.01)」が有意な影響を与えていた(R2=.164)。一方,PTへの信頼度には「社会的規範(.313,p<.001)」のみが有意な影響を与えていた(R2=.147)。
【結論】
高齢者のPTに対する信頼度に影響を及ぼす要因とその影響力は,医師・研究者と異なることが示唆された。予防運動実施に対して周りの人からの期待や応援を認識している高齢者ほどPTへの信頼度が高いことから,高齢者の周辺人物との関係性構築もPTにとっても重要な役割を果たすと推察される。また,医師と研究者への影響要因の違いから,PTからの情報発信の促進と充実の重要性も示唆された。
近年,介護予防の運動内容や効果に関する研究は数多くなされてきている。しかし,特に一次予防分野において積極的な介護予防事業への参加増進には課題が残されている。今後,後期高齢者となる世代に対する理学療法士(以下,PT)への期待も高まる中,PTが現在の前期高齢者を一次介護予防運動(以下,予防運動)に導くための有効なマーケティングの視点は明確になっていない。
本研究では,高齢者の予防運動の実態とその関連特性を把握するとともに,予防運動に関する情報発信者としてのPTの信頼度とその影響要因を明らかにすることにより,今後の予防運動推進のための基礎的資料を得ることである。
【方法】
調査期間は,2016年9月19日から28日である。調査対象は,2016年2月1日時点で大阪府泉佐野市に在住する65歳から80歳の地域住民10,904名を母集団とする選挙人名簿より等間隔抽出した男女900人である。調査方法は郵送法による質問紙調査を用い,334部の回答を得た(回収率37.1%)。調査項目は性別や年齢,情報発信者への信頼度,予防運動に関する情報収集度(6項目),予防運動に対する態度(5項目)・社会的規範(2項目)・自己効力感(4項目)で,それぞれ5段階尺度で測定した。分析にはこれらの全項目に回答かつPTを「知っている」「聞いたことがある」と回答した200部を用いた。そして情報発信者(医師・研究者・PT)へのそれぞれの信頼度を従属変数とし,性別,年齢,情報収集度,予防運動に対する態度・社会的規範・自己効力感を独立変数(それぞれ合成変数)とする重回帰分析を行った。統計解析には,SPSS(ver,22)を用いた。
【結果】
回答者の特性は男性48.2%,女性51.8%,平均年齢71.5歳であった。医師,研究者,PTに対する信頼度の平均値はそれぞれ4.24,4.02,4.20であった。重回帰分析に独立変数として用いる性別,年齢,情報収集度,予防運動に対する態度・社会的規範・自己効力感の変数間相関分析の結果,多重共線性は見られなかった。医師,研究者,PTに対する信頼度のそれぞれを従属変数とする重回帰分析の結果,医師への信頼度には「情報収集度(.192,p<.01)」と「社会的規範(.180,p<.05)」が有意な影響を与え(R2=.105),研究者への信頼度にも「情報収集度(.270,p<.001)」と「社会的規範(.234,p<.01)」が有意な影響を与えていた(R2=.164)。一方,PTへの信頼度には「社会的規範(.313,p<.001)」のみが有意な影響を与えていた(R2=.147)。
【結論】
高齢者のPTに対する信頼度に影響を及ぼす要因とその影響力は,医師・研究者と異なることが示唆された。予防運動実施に対して周りの人からの期待や応援を認識している高齢者ほどPTへの信頼度が高いことから,高齢者の周辺人物との関係性構築もPTにとっても重要な役割を果たすと推察される。また,医師と研究者への影響要因の違いから,PTからの情報発信の促進と充実の重要性も示唆された。