The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-08] ポスター(予防)P08

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-08-3] 理学療法開始時の骨格筋量減少が急性期病院退院時のADLに与える影響について

保木本 崇弘1, 樋口 謙次1, 竹川 徹2, 安保 雅博2 (1.東京慈恵会医科大学附属柏病院リハビリテーション科, 2.東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座)

Keywords:サルコペニア, 急性期, 低栄養

【はじめに,目的】

近年,高齢化に伴いサルコペニアを予防することの重要性が増している。急性期病院において高齢者は,侵襲や安静臥床にて容易に廃用症候群を認めサルコペニアやサルコペニア予備軍となり,ADLの低下が生じやすいと予想される。本研究の目的は,急性期病院における理学療法開始時の骨格筋量減少が退院時のADLに影響するか調査することである。


【方法】

対象は本学附属病院において2015年8月1日~9月30日,2016年1月1日~2016年3月31日までに入院した65歳以上の患者であり,脳血管疾患,内科系疾患,腫瘍疾患に診断分類できた40名(脳血管疾患11名,内科系疾患22名,腫瘍8名,平均年齢78.7±7.2歳,男性23名,女性17名)とした。ペースメーカー挿入者,入院から理学療法開始までに14日以上経過した者,理学療法開始時のBarthel Index(以下BI)が90点以上の者は除外した。データは診療録より収集した。項目は理学療法開始時の年齢,性別,BMI,骨格筋指(Skeletal Muscle Index以下SMI),栄養評価(MNA-SF),血液・生化学検査(Alb,TP,Hb),入院前の活動(mRS),ADL(BI)とした。アウトカムは,退院時のADL(BI)とBI効率((退院時のBI-開始時のBI)/理学療法介入期間)とした。骨格筋量の評価には,InbodyS10(Inbody社製)を用いた。谷本らの報告を参考に若年者の平均-SD以下を骨格筋量減少群(以下減少群)(n=18),その他を正常群(n=22)とした。統計解析は減少群と正常群の比較にはt検定,Mann-WhitneyのU検定,Fisherの直接確率検定を行った。開始時の項目で2群の比較にて有意な差を認めたものは,アウトカムとの関連をspearmanの順位相関係数にて検討した。いずれも危険率0.05未満を有意とした。


【結果】

2群の比較では減少群は正常群に比べ男性が多く,BMI,MNA-SF,Alb,Hbにて有意な低下を認めた。代表値(減少群/正常群)は,BMIは18.4±3.2/22.1±3.9,MNA-SFは5(2.75-6)/8.5(4-10),Albは2.4±0.6/3.1±0.6,Hbは10.1±2.0/11.9±2.4であった。アウトカムでは減少群は正常群に比べ退院時のBI,BI効率に有意な低下を認めた。代表値は,退院時のBIは38.5±33.2/61.1±32.1,BI効率は0.3±1.3/1.3±1.6であった。Spearmanの順位相関係数の結果,退院時のBIとBMI,MNA-SF,Albにて有意な相関を認めた。BI効率に有意な相関は認めなかった。


【結論】

減少群では理学療法開始時のBMI,MNA-SF,Alb,Hbに有意な低下を認め,正常群に比べ低栄養であった。原疾患や治療時の安静や悪液質による影響と入院前からの低栄養が考えられる。減少群の退院時のADLは正常群に比べ有意に低く,改善率も低かった。開始時のBMI,MNA-SF,Albは退院時のBIと有意な相関を認めた。急性期病院退院時のADLには理学療法開始時の栄養状態と骨格筋量,その改善率に骨格筋量が関連すると考えられる。栄養状態の改善と骨格筋量の減少を予防することで機能予後を改善できる可能性が考えられる。