[P-YB-08-5] 呼吸器疾患患者に対してフレイルが与える身体機能及び日常生活活動への影響
キーワード:フレイル, FRAILscale, Functional Ambulation Categories
【はじめに,目的】
呼吸器疾患患者において呼吸機能低下だけでなく,疾病とは異なる身体変化,特に上下肢筋力や歩行耐久性の低下を認め理学療法進行に難渋するケースをよく経験する。日本老年医学会(2014年)は高齢者が筋力や活動が低下している状態を「フレイル」と提唱し,予防に取り組むことを呼び掛けている。そこで,本研究は呼吸器疾患患者におけるフレイルの有無が影響を及ぼすことが考えられる因子を検討することを目的とした。
【方法】
呼吸器疾患により当院入院となった患者のうち,コミュニケーション可能かつ,評価結果を得ることができた26名(平均年齢82.3±7.3歳 男性13名)を解析対象とした。方法はカルテより後方視的に疾患名,年齢,性別,体格指数(以下BMI),在院日数,喫煙歴,初回介入時FIM,転帰,入院時FRAILscale,入院時及び退院時Functional Ambulation classification(以下FAC)を調査した。FRAILscaleにおいて原法に基づき,0から2点をフレイル無し群,3から5点をフレイル有り群に分類し,統計学的手法として,調査項目をt検定及びχ2検定とMann-Whitney U検定を用い2群間の比較を行った。次に,入院時から退院時のFACの変化について,増悪群と維持・改善群に分け同様の検定を行った。さらにSpearmanの順位相関を用いFRAILEscaleとFACの関連性を調査した。これらの検定に先立ちshapiro-wilk検定にて正規性の確認を行った。
【結果】
FRAILscaleにおいて(フレイル有り群vsフレイル無し群:p値),BMI(21.4±2.5vs21.5±5.7:n.s),在院日数(12.1±7.3日vs17.3±11.6日:n.s),喫煙歴有(19%vs23%:n.s),初回FIM(65.1±31.2点vs60.8±28.2点:n.s),自宅退院割合(50%vs23.1%:n.s),退院時FACにおいて有意差を認めた(p<0.05)。入院時FACと退院時FACを比較した結果,増悪した症例を26%認めた。FACの変化におけるフレイル有りは(増悪群23.1%vs維持・改善群15.4%),FRAILscale得点は(増悪群3.14±1.21vs維持・改善群1.8±1.3:p<0.05)であった。FRAILscaleと退院時FACとの関係では負の相関を認めた(r=-0.54 p<0.01)。
【結論】
フレイルあり群は退院時FACが有意に低い結果であった。また,入院時と退院時のFACを比較した結果,増悪症例は26%認め,増悪群のFRAILscale得点が有意に高く,FRAILscaleと退院時FACは負の相関関係であった。このことから,入院時のフレイル有無が,退院時の歩行状態に影響を及ぼすことが分かった。これは,呼吸器疾患以外の身体機能低下を及ぼすフレイルが介助量を増加し,治療期間を延伸させることが考えられる。本研究の限界として症例数の少なさから多変量解析における影響度を測ることができなかったことである。
呼吸器疾患患者において呼吸機能低下だけでなく,疾病とは異なる身体変化,特に上下肢筋力や歩行耐久性の低下を認め理学療法進行に難渋するケースをよく経験する。日本老年医学会(2014年)は高齢者が筋力や活動が低下している状態を「フレイル」と提唱し,予防に取り組むことを呼び掛けている。そこで,本研究は呼吸器疾患患者におけるフレイルの有無が影響を及ぼすことが考えられる因子を検討することを目的とした。
【方法】
呼吸器疾患により当院入院となった患者のうち,コミュニケーション可能かつ,評価結果を得ることができた26名(平均年齢82.3±7.3歳 男性13名)を解析対象とした。方法はカルテより後方視的に疾患名,年齢,性別,体格指数(以下BMI),在院日数,喫煙歴,初回介入時FIM,転帰,入院時FRAILscale,入院時及び退院時Functional Ambulation classification(以下FAC)を調査した。FRAILscaleにおいて原法に基づき,0から2点をフレイル無し群,3から5点をフレイル有り群に分類し,統計学的手法として,調査項目をt検定及びχ2検定とMann-Whitney U検定を用い2群間の比較を行った。次に,入院時から退院時のFACの変化について,増悪群と維持・改善群に分け同様の検定を行った。さらにSpearmanの順位相関を用いFRAILEscaleとFACの関連性を調査した。これらの検定に先立ちshapiro-wilk検定にて正規性の確認を行った。
【結果】
FRAILscaleにおいて(フレイル有り群vsフレイル無し群:p値),BMI(21.4±2.5vs21.5±5.7:n.s),在院日数(12.1±7.3日vs17.3±11.6日:n.s),喫煙歴有(19%vs23%:n.s),初回FIM(65.1±31.2点vs60.8±28.2点:n.s),自宅退院割合(50%vs23.1%:n.s),退院時FACにおいて有意差を認めた(p<0.05)。入院時FACと退院時FACを比較した結果,増悪した症例を26%認めた。FACの変化におけるフレイル有りは(増悪群23.1%vs維持・改善群15.4%),FRAILscale得点は(増悪群3.14±1.21vs維持・改善群1.8±1.3:p<0.05)であった。FRAILscaleと退院時FACとの関係では負の相関を認めた(r=-0.54 p<0.01)。
【結論】
フレイルあり群は退院時FACが有意に低い結果であった。また,入院時と退院時のFACを比較した結果,増悪症例は26%認め,増悪群のFRAILscale得点が有意に高く,FRAILscaleと退院時FACは負の相関関係であった。このことから,入院時のフレイル有無が,退院時の歩行状態に影響を及ぼすことが分かった。これは,呼吸器疾患以外の身体機能低下を及ぼすフレイルが介助量を増加し,治療期間を延伸させることが考えられる。本研究の限界として症例数の少なさから多変量解析における影響度を測ることができなかったことである。