[P-YB-09-1] ライフステージにおける運動習慣の確保はフレイル発症リスクを軽減するか?
Keywords:フレイル, 運動習慣, 身体機能
【はじめに,目的】高齢者が要介護状態に至る前段階として,近年フレイル(Frailty)が注目されている。フレイルとは,加齢に伴って身体の生理的予備能が低下して脆弱化が進み,健康障害を引き起こしやすい状態のことをいう。フレイルを予防する一つの対策として,運動介入が有用であるとされている。高齢期に運動習慣がある者は身体機能が維持され,転倒リスクが減少すると報告されている。また青年期に運動習慣があった者は,高齢期でも運動習慣が維持されるとの報告もある。しかしライフステージにおける運動習慣が,高齢期のフレイル発症に及ぼす影響は未だ明らかでない。本研究では,ライフステージにおける運動習慣と高齢期の身体機能に着目し,運動習慣がフレイル発症リスクに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象者は高齢者マンション及び地域在住の65歳以上の高齢者109名とした。認知症を有する者,脳血管障害による後遺症を有する者,神経系疾患を有する者,自立歩行が不可能な者を除外基準とした。青年期から高齢期10年毎の運動習慣を聴取し,握力,TUG(Time Up and Go),SPPB(Short Physical Performance Battery),筋量(インピーダンス測定装置),骨密度(超音波)を身体機能として評価した。ライフステージにおける運動習慣の結果より,青年期から高齢期にかけてあり(A群),青年・中年期あり・高齢期なし(B群),青年・中年期なし・高齢期あり(C群),青年期から高齢期にかけてなし(D群)の4群に分類し比較した。4群間の身体機能の比較にはカイ二乗検定,一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定を用いた。その後,年齢,性別で調整したロジスティック回帰分析を用いてオッズ比を導き出し,運動習慣による(プレ)フレイル発症リスクについて検討した。(プレ)フレイルの判定はFriedらの判定基準である,体重減少,筋力低下,疲労感,歩行速度低下,身体活動量に従った。
【結果】除外基準に該当した者と欠損データがあった者を除外した結果,89名が解析対象となった。各群での(プレ)フレイル発症人数は,A群が18人中13人(72%),B群が7人中4人(57%),C群が49人中29人(59%),D群が15人中11人(73%)であった。4群間において(プレ)フレイル発症率の差は認めなかった(p≧0.05)。またフレイル発症リスクを検討した結果,A群を基準としたB群のフレイル発症のオッズ比は1.39(95%CI:0.27-7.04),C群は2.43(95%CI:0.34-17.24),D群は1.91(95%CI:0.51-7.14)となり,有意なリスクの増加は認めなかった。
【結論】本研究において,ライフステージにおける運動習慣の確保はフレイル発症リスクを軽減することはなかった。今後,運動強度や頻度の検討,若年者を対象とした大規模な前向き研究を実施することで,運動習慣とフレイル発症リスクに関するより詳細な関係を明らかにしていく必要がある。
【方法】対象者は高齢者マンション及び地域在住の65歳以上の高齢者109名とした。認知症を有する者,脳血管障害による後遺症を有する者,神経系疾患を有する者,自立歩行が不可能な者を除外基準とした。青年期から高齢期10年毎の運動習慣を聴取し,握力,TUG(Time Up and Go),SPPB(Short Physical Performance Battery),筋量(インピーダンス測定装置),骨密度(超音波)を身体機能として評価した。ライフステージにおける運動習慣の結果より,青年期から高齢期にかけてあり(A群),青年・中年期あり・高齢期なし(B群),青年・中年期なし・高齢期あり(C群),青年期から高齢期にかけてなし(D群)の4群に分類し比較した。4群間の身体機能の比較にはカイ二乗検定,一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定を用いた。その後,年齢,性別で調整したロジスティック回帰分析を用いてオッズ比を導き出し,運動習慣による(プレ)フレイル発症リスクについて検討した。(プレ)フレイルの判定はFriedらの判定基準である,体重減少,筋力低下,疲労感,歩行速度低下,身体活動量に従った。
【結果】除外基準に該当した者と欠損データがあった者を除外した結果,89名が解析対象となった。各群での(プレ)フレイル発症人数は,A群が18人中13人(72%),B群が7人中4人(57%),C群が49人中29人(59%),D群が15人中11人(73%)であった。4群間において(プレ)フレイル発症率の差は認めなかった(p≧0.05)。またフレイル発症リスクを検討した結果,A群を基準としたB群のフレイル発症のオッズ比は1.39(95%CI:0.27-7.04),C群は2.43(95%CI:0.34-17.24),D群は1.91(95%CI:0.51-7.14)となり,有意なリスクの増加は認めなかった。
【結論】本研究において,ライフステージにおける運動習慣の確保はフレイル発症リスクを軽減することはなかった。今後,運動強度や頻度の検討,若年者を対象とした大規模な前向き研究を実施することで,運動習慣とフレイル発症リスクに関するより詳細な関係を明らかにしていく必要がある。