第52回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-12] ポスター(予防)P12

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-12-2] 地域在住高齢者における身体活動量と口腔・嚥下機能,誤嚥リスク指標との関連

森下 元賀1, 佐能 三保子2, 安田 真弓2, 齋藤 奈津恵2, 高尾 茂子3 (1.吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科, 2.浅口市健康福祉部高齢者支援課, 3.吉備国際大学保健医療福祉学部看護学科)

キーワード:摂食嚥下機能評価, 身体活動量, 介護予防

【はじめに,目的】介護予防分野において,転倒やロコモティブシンドロームの予防だけでなく,他職種と連携して口腔・嚥下機能の低下にも対策を行うことが誤嚥性肺炎の予防として重要である。サルコペニアによる嚥下障害の指標として,近年舌圧の測定が多く実施されており,嚥下機能や食事形態,握力,歩行能力との関連が報告されているが,日常生活の活動量と舌圧などの口腔・嚥下機能との関連の報告は少ない。理学療法士が嚥下障害の予防に関わる上で,日常生活での活動量と口腔・嚥下機能との関連を明らかにすることは,日常生活の指導をする上で重要である。本研究の目的は地域在住高齢者の身体活動量と口腔・嚥下機能,自覚的な誤嚥リスク指標との関連を明らかにすることである。


【方法】対象は岡山県A市の介護予防事業に参加している地域在住高齢者57名(男性15名,女性42名,平均年齢76.4±7.4歳)とした。口腔・嚥下機能の測定は口唇閉鎖力,随意的最大舌圧(以下,MTP),反復唾液嚥下テスト(以下,RSST),オーラルディアドコキネス(パ,タ,カ音)を実施した。身体機能の指標として握力を測定し,日常生活の身体活動量は国際標準化身体活動質問票short version日本語版(以下,IPAQ)を使用して聴取した。自覚的な嚥下状態は地域高齢者誤嚥リスク評価指標(以下,DRACE)を使用して聴取した。統計学的解析は口腔・嚥下機能,握力,IPAQ,DRACEのそれぞれの項目の関連性をピアソンの積率相関係数により求めた。統計学的有意水準は5%とした。


【結果】IPAQはどの項目とも相関を認めなかった。握力はMTP(r=0.779),オーラルディアドコキネス(パ音:r=0.584,タ音:r=0.580,カ音:r=0.630)に有意な相関を認めた。MTPはRSST(r=0.465),オーラルディアドコキネス(パ音:r=0.471,タ音:r=0.455,カ音:r=0.486)に有意な相関を認めた。DRACEは口唇閉鎖力と有意な負の相関(r=-0.334)を認め,誤嚥リスクが高いほうが口唇閉鎖力は低くなる関係が見られた。


【結論】身体活動量はどの項目とも関連がなかった。しかし,自覚的な嚥下状態は口唇閉鎖力と関連しており,握力は嚥下能力を反映する舌圧や口腔機能としてのオーラルディアドコキネスと関連していた。また,舌圧は嚥下反射の強さを反映するRSSTと関連していた。舌圧と握力との関連は,これまでの報告と同様に全身のサルコペニアが生じると嚥下に関連する筋出力の低下を引き起こすことを示している。これらのことから,理学療法士が口腔・嚥下機能低下の予防に取り組む際には日常生活の活動性の向上だけではなく,レジスタンストレーニングを含めた全身の筋力向上と口腔・嚥下機能に対して直接的にアプローチをする必要があることが明らかとなった。