The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-12] ポスター(予防)P12

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-12-3] 地域在住高齢者における咳嗽能力の関連因子

久保 宏紀1,2, 浅井 剛3, 福元 喜啓3, 岡 智大4, 糟谷 明彦1, 門條 宏宜1, 大島 賢典1, 中川 昭夫3 (1.神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 2.伊丹恒生脳神経外科病院リハビリテーション部, 3.神戸学院大学総合リハビリテーション学部, 4.あんしん病院リハビリテーション科)

Keywords:地域在住高齢者, 咳嗽, 内臓脂肪

【はじめに,目的】

肺炎は本邦の死亡原因の第3位でありその数は増加の一途をたどっている。肺炎による死亡の95%以上は65歳以上の高齢者であり,その70%以上が誤嚥性肺炎である。咳嗽は,気道に入った異物を排出する役割を担う,誤嚥予防に不可欠な呼吸器の機能である。咳嗽能力は加齢とともに低下するため,高齢者において咳嗽能力を維持することは肺炎予防に有効である。咳嗽能力を維持するには,その関連因子を明らかにし,適切な治療的介入を行うことが必要である。現在までのところ,身体活動量・握力との関連は報告されているが,その他の身体的関連因子については明らかになっていない。本研究の目的は咳嗽能力と運動機能や体型等の身体的要因の関連を明らかにすることである。


【方法】

対象は地域在住高齢者83名(男/女:28/55,年齢:73.8±6.4歳)であった。身体機能の測定は全身筋力の指標として握力(竹井機器),包括的な運動機能としてTime up and Go test(TUG),持久性として3分間歩行を測定した。また呼吸筋力として吸気筋力,呼気筋力を呼吸圧測定器(ポリテックス社製)にて測定した。内臓脂肪の測定には内臓脂肪計EW-FA90(Panasonic製)を用い立位にて計測した。咳嗽能力の測定にはピークフローメーター(東京エム・アイ社製)を用い,随意的な咳嗽最大流量(Peak Cough Flow:PCF)を咳嗽の強さとした。統計学的解析は,PCFと性別の比較にはt検定を用い,PCFとその他の因子の比較にはピアソンの積率相関係数を用いた。続いてステップワイズ法を用いてPCFを従属変数,2変量の解析により有意差がみられた因子を独立変数とする重回帰モデルを作成し,咳嗽能力を説明する因子を抽出した。統計学的有意水準は5%とした。


【結果】

PCFは男性328.0±162.7L/min,女性234.1±105.9L/minであった。PCFと有意な関連を示した因子は性別(p=.002),握力(r=.37,p<0.001),TUG(r=-.31,p=.004),呼気筋力(r=.34,p=.002),吸気筋力(r=.25,p=.025),内臓脂肪(r=.32,p=.004)であった。ステップワイズ法の結果,CPFを説明する因子としてTUG(標準β係数:-.292,p=.007),内臓脂肪(標準β係数:.286,p=.009)が抽出された(自由度調整R2=.225)。


【結論】

地域在住高齢者において咳嗽能力はTUG,内臓脂肪と関連していた。包括的な運動機能を維持し,栄養摂取により内蔵脂肪を蓄えておくことで,高齢者の咳嗽能力の維持が期待できる。