[P-YB-12-4] 地域在住高齢女性における咳嗽力変化量と呼吸機能および運動機能変化量の関連
Keywords:高齢者, 咳嗽力, 運動機能
【はじめに,目的】
誤嚥性肺炎の予防において咳嗽力は重要な要素の一つである。我々は地域高齢者を対象にした調査において,咳嗽力の指標となる咳嗽時最大呼気流速(CPF)が努力性肺活量(FVC)と最大吸気圧(MIP)に関連することを示した。しかし,CPFの変化量がFVCやMIPの変化量に関連するかは不明であり,CPFを保つためにはCPF変化量がどの機能の変化量に影響しているかを明らかにする必要がある。そこで,本研究では地域在住高齢者のCPF,呼吸機能,運動機能の再調査を行い,CPF変化量が呼吸機能および運動機能の変化量に関連するかを検証した。
【方法】
対象は地域在住で介護予防事業(一次予防事業)に参加している65歳以上で歩行が自立している高齢者のうち,1年後にCPF,呼吸機能,運動機能の再測定を行った女性61名(平均年齢78±6歳:初回時)を対象とした。一秒率が70%未満,MIPと最大呼気圧(MEP)が20 cmH2O未満の対象者は除外した。CPFはフェイスマスクとピークフローメータを用い最大吸気位からの随意咳嗽を行わせた。呼吸機能ではFVC,MIP・MEP,胸腹部可動性(呼吸運動評価スケール)を測定した。FVCとMIP・MEPは,それぞれスパイロメータと口腔内圧計を使いガイドラインに準じて測定した。呼吸運動評価スケールは,呼吸運動測定器を使い上部胸郭,下部胸郭,腹部における深呼吸時のスケール値(0~8)を測定し,その合計(0~24)を算出した。運動機能は,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)による起立回数とTimed up and go test(TUG)の所要時間を先行研究に準じて測定した。統計分析は,初回時と1年後の調査結果の比較に対応のあるt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いた。また,CPF変化量を従属変数,FVC,MIP,MEP,合計スケール値,起立回数,所要時間の変化量を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
1年後の調査では,初回時に比べ,CPFにおいて有意な低下が認められた(初回時:288±64 L/min,1年後:265±75 L/min)。しかし,その他の測定項目に有意差は認められなかった。また,重回帰分析におけるCPF変化量の有意な独立変数は,TUG所要時間の変化量(β=-0.30,p<0.05)であった。
【結論】
地域在住高齢女性のCPFは,1年後に有意な低下を示した。しかし,CPFの関連因子であるFVCとMIPに有意差は認められず,CPF変化量にはTUG所要時間の変化量が関連することが示された。つまり,高齢女性におけるCPFは,呼吸機能や運動機能より低下しやすく,バランス能力に関連した運動機能に影響を受けている可能性が考えられる。本研究は高齢女性を対象とした結果であることから,今後は高齢男性も含めたより長期的な変化について検討していく必要がある。
誤嚥性肺炎の予防において咳嗽力は重要な要素の一つである。我々は地域高齢者を対象にした調査において,咳嗽力の指標となる咳嗽時最大呼気流速(CPF)が努力性肺活量(FVC)と最大吸気圧(MIP)に関連することを示した。しかし,CPFの変化量がFVCやMIPの変化量に関連するかは不明であり,CPFを保つためにはCPF変化量がどの機能の変化量に影響しているかを明らかにする必要がある。そこで,本研究では地域在住高齢者のCPF,呼吸機能,運動機能の再調査を行い,CPF変化量が呼吸機能および運動機能の変化量に関連するかを検証した。
【方法】
対象は地域在住で介護予防事業(一次予防事業)に参加している65歳以上で歩行が自立している高齢者のうち,1年後にCPF,呼吸機能,運動機能の再測定を行った女性61名(平均年齢78±6歳:初回時)を対象とした。一秒率が70%未満,MIPと最大呼気圧(MEP)が20 cmH2O未満の対象者は除外した。CPFはフェイスマスクとピークフローメータを用い最大吸気位からの随意咳嗽を行わせた。呼吸機能ではFVC,MIP・MEP,胸腹部可動性(呼吸運動評価スケール)を測定した。FVCとMIP・MEPは,それぞれスパイロメータと口腔内圧計を使いガイドラインに準じて測定した。呼吸運動評価スケールは,呼吸運動測定器を使い上部胸郭,下部胸郭,腹部における深呼吸時のスケール値(0~8)を測定し,その合計(0~24)を算出した。運動機能は,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)による起立回数とTimed up and go test(TUG)の所要時間を先行研究に準じて測定した。統計分析は,初回時と1年後の調査結果の比較に対応のあるt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いた。また,CPF変化量を従属変数,FVC,MIP,MEP,合計スケール値,起立回数,所要時間の変化量を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
1年後の調査では,初回時に比べ,CPFにおいて有意な低下が認められた(初回時:288±64 L/min,1年後:265±75 L/min)。しかし,その他の測定項目に有意差は認められなかった。また,重回帰分析におけるCPF変化量の有意な独立変数は,TUG所要時間の変化量(β=-0.30,p<0.05)であった。
【結論】
地域在住高齢女性のCPFは,1年後に有意な低下を示した。しかし,CPFの関連因子であるFVCとMIPに有意差は認められず,CPF変化量にはTUG所要時間の変化量が関連することが示された。つまり,高齢女性におけるCPFは,呼吸機能や運動機能より低下しやすく,バランス能力に関連した運動機能に影響を受けている可能性が考えられる。本研究は高齢女性を対象とした結果であることから,今後は高齢男性も含めたより長期的な変化について検討していく必要がある。