[P-YB-14-3] エロンゲーショントレーニングは運動療法の代わりとなりうるか?
―虚弱高齢者を対象とした研究―
Keywords:虚弱高齢者, エロンゲーショントレーニング, トレーニング実施率
【はじめに,目的】
通所リハビリテーション(通所リハ)では,心身機能,活動,参加に対して取り組む必要度が高まっている。これまで様々な取り組みがなされているが,要介護認定者は増加の一途を辿っている。その原因は,トレーニングの実施率が低いことがその要因のひとつと考えられている。我々は,高齢者でも手軽に実施可能な,エロンゲーショントレーニング(Elongation Training,ELT)を開発し,身体機能に対する効果について検証することを目的とした。
【方法】
対象は,当院の通所リハを利用しており,研究に同意を得られた25名を対象とした男性10名,女性15名,年齢83.5±6.5歳だった。除外基準として,歩行に介助を要さないこと,認知症が認められないこと(Mini-Mental State Examinationが24点以上),関節リウマチ等による強度な関節変形がみられないこと,股関節脱臼を過去に経験していないことを条件とした。対象者25名を無作為割り付けにELT群13名と一般的な理学療法群(対照群)12名に分けた。身体機能評価を研究開始前と開始後1ヶ月ごとに6ヶ月間測定し比較検討した。評価項目は身長,体重,握力,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),大腿四頭筋筋力,股関節伸展自動可動域,肩関節屈曲自動可動域,長座体前屈,片足立ち保持時間,Time Up and Go test(TUG),Maximum Walking Speed(MWS),2STEP TEST(2ST)とした。ELT群はエロンゲーションバンドを使用したトレーニング(各肢位で10秒間姿勢保持し10秒間休憩する,これを3回繰り返す)を実施した。ELT群のプログラム内容は,ELT(背臥位,側臥位2種類)を約10分と関節可動域練習や筋力増強練習を含まない理学療法を約10分の計約20分とした。要介護と要支援1のELT群では,上記プログラム内容を最大で週2回実施し,要支援2のELT群では週1回の上記プログラム内容と週1回の集団ELT(座位6種類)を約20分実施した。対照群のプログラム内容は,関節可動域練習,筋力増強練習,起居動作練習,歩行練習等を約20分実施するとした。統計解析は,二元配置分散分析を使用し,多重比較にはBoneferroni法を使用し有意水準5%とした。
【結果】
両群間の背景に有意な差は認めなかった。両群とも全ての測定項目において,経時的な改善傾向を認めたが,交互作用は認められなかった。CS-30,大腿四頭筋筋力,股関節伸展自動可動域,長座体前屈,TUG,2STには期間の主効果を認めた。また有害事象は認めず,完遂率は90%であった。
【結論】
自動運動のELTと他動運動の運動療法は同等の効果が認められ,十分に他動運動が中心の運動療法の代用と成り得ることが示唆された。ELTは自動運動で行え,臥位や座位でも実施可能であるから自主トレーニングが容易に可能と思われ,課題であるトレーニング実施率低下の改善に寄与すると考えられた。
通所リハビリテーション(通所リハ)では,心身機能,活動,参加に対して取り組む必要度が高まっている。これまで様々な取り組みがなされているが,要介護認定者は増加の一途を辿っている。その原因は,トレーニングの実施率が低いことがその要因のひとつと考えられている。我々は,高齢者でも手軽に実施可能な,エロンゲーショントレーニング(Elongation Training,ELT)を開発し,身体機能に対する効果について検証することを目的とした。
【方法】
対象は,当院の通所リハを利用しており,研究に同意を得られた25名を対象とした男性10名,女性15名,年齢83.5±6.5歳だった。除外基準として,歩行に介助を要さないこと,認知症が認められないこと(Mini-Mental State Examinationが24点以上),関節リウマチ等による強度な関節変形がみられないこと,股関節脱臼を過去に経験していないことを条件とした。対象者25名を無作為割り付けにELT群13名と一般的な理学療法群(対照群)12名に分けた。身体機能評価を研究開始前と開始後1ヶ月ごとに6ヶ月間測定し比較検討した。評価項目は身長,体重,握力,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),大腿四頭筋筋力,股関節伸展自動可動域,肩関節屈曲自動可動域,長座体前屈,片足立ち保持時間,Time Up and Go test(TUG),Maximum Walking Speed(MWS),2STEP TEST(2ST)とした。ELT群はエロンゲーションバンドを使用したトレーニング(各肢位で10秒間姿勢保持し10秒間休憩する,これを3回繰り返す)を実施した。ELT群のプログラム内容は,ELT(背臥位,側臥位2種類)を約10分と関節可動域練習や筋力増強練習を含まない理学療法を約10分の計約20分とした。要介護と要支援1のELT群では,上記プログラム内容を最大で週2回実施し,要支援2のELT群では週1回の上記プログラム内容と週1回の集団ELT(座位6種類)を約20分実施した。対照群のプログラム内容は,関節可動域練習,筋力増強練習,起居動作練習,歩行練習等を約20分実施するとした。統計解析は,二元配置分散分析を使用し,多重比較にはBoneferroni法を使用し有意水準5%とした。
【結果】
両群間の背景に有意な差は認めなかった。両群とも全ての測定項目において,経時的な改善傾向を認めたが,交互作用は認められなかった。CS-30,大腿四頭筋筋力,股関節伸展自動可動域,長座体前屈,TUG,2STには期間の主効果を認めた。また有害事象は認めず,完遂率は90%であった。
【結論】
自動運動のELTと他動運動の運動療法は同等の効果が認められ,十分に他動運動が中心の運動療法の代用と成り得ることが示唆された。ELTは自動運動で行え,臥位や座位でも実施可能であるから自主トレーニングが容易に可能と思われ,課題であるトレーニング実施率低下の改善に寄与すると考えられた。