[P-YB-14-4] 廃用症候群症例に対する重心動揺リアルタイムフィードバックを用いた介入効果
Keywords:廃用症候群, 姿勢制御, 重心動揺リアルタイムフィードバック
【はじめに,目的】長期臥床などによる廃用症候群を呈する症例の場合,運動機能の減退や訓練意欲の低下などによって理学療法介入に困難を伴うことが多い。本研究では廃用症候群を呈した2症例に対して,姿勢調節に関わる残存機能の賦活を企図した重心動揺リアルタイムフィードバックを用いた介入を試みたので報告する。この方法は,立位姿勢時の足圧中心(COP)の前後変位をフィードバック信号として床面をリアルタイムに動揺させ,姿勢動揺量を操作的に減弱(in-phase条件),あるいは増幅(anti-phase条件)させることで,立位姿勢調節の改善を図るものである。今回は,重心動揺を増幅させるanti-phase条件を用いて,潜在的に保持している脊髄反射系の賦活を狙いとした介入を行い,重心動揺特性及び筋活動の変化の観点から,その効果について検討することを目的とした。
【方法】対象は本研究に同意を得た廃用症候群症例2名とした。症例1(70歳代女性)の特徴は,心不全後の臥床による廃用症候群で立位が不安定となり,後方に重心を移動させた際には立位姿勢の保持が困難であった。症例2(70歳代男性)の特徴は,転倒歴が多く左上腕骨近位端骨折を受傷し,骨折後の活動量の低下により廃用症候群を呈し,歩行には見守りが必要な状態であった。対象者には,重心動揺リアルタイムフィードバック装置(BASYS,テック技販社製)上に立位姿勢を取るよう指示を与え,開眼静止立位を30秒間実施した。立位姿勢に対する介入として,足圧中心の前後方向と逆方向にフィードバックを与えることにより,動揺量を増幅させる設定(anti-phase)を用いた。フィードバックゲインはCOP動揺量の5%,10%,15%の3段階とした。1症例目はanti15%では,立位困難となったため5%及び10%のみの介入とした。各試行30秒を1セットとし,介入前の静止立位,anti-phase条件(5%,10%,15%),介入後の静止立位を測定した。介入効果の評価には,静止立位姿勢時のCOPと筋電図(前脛骨筋,ヒラメ筋)の計測を実施した。
【結果】症例1は介入後に,前後方向の平均値は前方に変位し,95%信頼楕円面積,前後の動揺範囲,LF/HF,前脛骨筋及びヒラメ筋の活動量は減少し,後方への重心移動時の立位の保持が可能となった。症例2も介入後にCOP動揺の前後方向の平均値は前方に変位し,動揺速度,95%信頼楕円面積,前後の動揺範囲,LF/HF,前脛骨筋及びヒラメ筋の共収縮に減少を認め,歩行は自立レベルとなった。
【結論】本研究の結果は,廃用症候群を呈した症例に対してanti-phase条件での介入を行うことで,下腿筋の共収縮が減弱するとともに,脊髄反射による自律的な姿勢制御が促されたことを示唆するものであった。この方法は,患者自身は装置上に通常の立位姿勢をとるのみで,特別な教示や課題に関する努力要求を要しない。すなわち,BASYSを用いたanti-phase条件での介入は,廃用による立位不安定性を呈する症例に効果的な介入手段となり得る可能性が示された。
【方法】対象は本研究に同意を得た廃用症候群症例2名とした。症例1(70歳代女性)の特徴は,心不全後の臥床による廃用症候群で立位が不安定となり,後方に重心を移動させた際には立位姿勢の保持が困難であった。症例2(70歳代男性)の特徴は,転倒歴が多く左上腕骨近位端骨折を受傷し,骨折後の活動量の低下により廃用症候群を呈し,歩行には見守りが必要な状態であった。対象者には,重心動揺リアルタイムフィードバック装置(BASYS,テック技販社製)上に立位姿勢を取るよう指示を与え,開眼静止立位を30秒間実施した。立位姿勢に対する介入として,足圧中心の前後方向と逆方向にフィードバックを与えることにより,動揺量を増幅させる設定(anti-phase)を用いた。フィードバックゲインはCOP動揺量の5%,10%,15%の3段階とした。1症例目はanti15%では,立位困難となったため5%及び10%のみの介入とした。各試行30秒を1セットとし,介入前の静止立位,anti-phase条件(5%,10%,15%),介入後の静止立位を測定した。介入効果の評価には,静止立位姿勢時のCOPと筋電図(前脛骨筋,ヒラメ筋)の計測を実施した。
【結果】症例1は介入後に,前後方向の平均値は前方に変位し,95%信頼楕円面積,前後の動揺範囲,LF/HF,前脛骨筋及びヒラメ筋の活動量は減少し,後方への重心移動時の立位の保持が可能となった。症例2も介入後にCOP動揺の前後方向の平均値は前方に変位し,動揺速度,95%信頼楕円面積,前後の動揺範囲,LF/HF,前脛骨筋及びヒラメ筋の共収縮に減少を認め,歩行は自立レベルとなった。
【結論】本研究の結果は,廃用症候群を呈した症例に対してanti-phase条件での介入を行うことで,下腿筋の共収縮が減弱するとともに,脊髄反射による自律的な姿勢制御が促されたことを示唆するものであった。この方法は,患者自身は装置上に通常の立位姿勢をとるのみで,特別な教示や課題に関する努力要求を要しない。すなわち,BASYSを用いたanti-phase条件での介入は,廃用による立位不安定性を呈する症例に効果的な介入手段となり得る可能性が示された。