第52回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-18] ポスター(予防)P18

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-18-4] 老年内科受診高齢者の転倒に関与する筋

青山 満喜1,2 (1.常葉大学保健医療学部, 2.名古屋大学地域在宅医療学老年科学)

キーワード:高齢者, 頻回転倒, 非頻回転倒

【はじめに,目的】高齢者が増加している本邦では,高齢者が要介護となる原因の第三位に転倒とそれに伴う骨折が挙げられている。後期高齢者の8%-17%は1年間に数回は転倒するといわれている。転倒により身体的な障害だけでなく,転倒後症候群のような心理的機能障害も惹起されるため,要介護者を減らすには,転倒の予防が不可欠となる。本研究では転倒予防のため,転倒と下肢筋力の関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】老年内科を受診している65歳以上の高齢者100名(平均年齢80.5±5.7歳)を対象とした。「転倒リスク調査票」にて過去一年間の転倒歴を調査,対象者全員には「転倒記録手帳」を配布し,6ヶ月間の観察期間中に発生した転倒回数を記録した。運動機能評価にはMotor Fitness Scale(MFS)とTimed Up and Go(TUG)を用いた。下肢筋力は徒手筋力測定器を使用し,股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈,足関節底屈の各筋力を測定した。

「転倒予防ガイドライン」に基づき,6ヶ月の観察期間中に2回以上転倒した者を「頻回転倒者」,転倒なし,または転倒1回の者を「非頻回転倒者」として二群に分け,これら二群の単変量解析を行った。次にロジスティック回帰分析ステップワイズ法にて観察期間中の転倒を予測する因子を抽出した。変数間の多重共線性を確認した結果,「非頻回転倒者」の股関節屈曲筋力と足関節底屈筋力に多重共線性を認めたため,これらを除外した重回帰分析により転倒に関わる下肢筋力を抽出した。

【結果】「非頻回転倒者」と「頻回転倒者」の単変量解析の結果,性別,過去一年間の転倒歴,MFS,TUGに有意差(p<0.05)を認めた。ロジスティック回帰分析ステップワイズ法の結果,性別(p<0.05)が転倒を予測する有意な因子として抽出された。この結果をふまえ,更に,女性対象者のみを「非頻回転倒者」と「頻回転倒者」の二群に分けた重回帰分析の結果,「非頻回転倒者」では下肢の筋力に有意差を認めなかったが,「頻回転倒者」においては足関節底屈筋力に有意差(p=0.01)を認めた。

【結論】老年内科を受診している高齢者の下肢筋力に着目し,転倒に関与する筋力を検討した結果,足関節底屈筋力は高齢女性の繰り返す転倒の有意な予測因子であり,転倒リスクを評価するのに有用であることが明らかとなった。足関節底屈筋には膝関節を伸展位で安定させる作用もあり,立位時,歩行時の安定性にも関与すると考えられる。従って,足関節底屈筋力の測定が高齢女性の転倒予防に関する効果的な理学療法プログラムを立案する際の一助となることを示唆している。下肢筋力は比較的簡単に測定でき,特に高価な測定機器を必要としないため,理学療法の臨床現場においても実施できる有用な評価法であり,転倒リスクが高い高齢女性のスクリーニングに用いることも可能な評価方法のひとつといえる。