第52回日本理学療法学術大会

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[P-YB-22] ポスター(予防)P22

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-22-2] 視覚情報の違いによる跨ぎ動作の相違

加藤 結衣1, 池田 由美2 (1.地域医療機能推進機構船橋中央病院リハビリテーション科, 2.首都大学東京大学院人間健康科学研究科)

キーワード:視覚情報, 高齢者, 跨ぎ動作

【はじめに,目的】



高齢者の転倒は骨折の原因として最も多く挙げられる要因であり,転倒の原因には段差への躓きが挙げられる。先行研究において,錯視を利用した障害物のある条件下における跨ぎ動作での障害物と足部の距離を測定した報告はあるが,成人と高齢者の見え方による違いから検討したものはほとんど見当たらない。そこで,本研究では成人と高齢者体験ゴーグルを装着した成人間とで障害物の見え方や跨ぎ動作時の足部と障害物との距離に差異が生じるのかを分析し,視覚情報の違いによる跨ぎ動作に相違がみられるか検討することを目的とした。

【方法】



対象は下肢および視覚に障害を有さない健常成人30名(男性9名,女性21名,年齢21.8±0.6歳)とし,高齢者体験ゴーグルを装着した者(以下,疑似高齢者群)と装着しない者(以下,コントロール群)の2群に無作為に分けた。実験は白い歩行路にて行い,スタート地点から5m先の歩行路上に障害物を設置した。障害物は高さ20cm,横幅40cm,奥行5cmの大きさで,縦ストライプ,横ストライプ,全体が茶一色の3種類の模様を用意した。被験者は障害物5m手前から歩行を始め,右足から障害物を跨ぐように指示した。練習は1回行い,その後各障害物の試行を3回ずつ計9回行った。その様子をビデオカメラにて記録し,①右足が障害物前縁を超える際の足尖高(右足前縁足尖高),②右足が障害物後縁を超える際の踵部高(右足後縁踵部高)の2項目を測定した。また,画像解析を行った際,障害物の跨ぎ方に膝関節を大きく屈曲させ跨ぐタイプと,膝関節を必要最低限に屈曲させて跨ぐタイプがあることが確認されたため,この2つのタイプごとの分析も行った。測定結果は①右足前縁足尖高と②右足後縁踵部高において,各群を1要因(2条件),障害物を1要因(3条件)とする二元配置分散分析を有意水準5%として行った。

【結果】



コントロール群と疑似高齢者群の2群間にて,①右足前縁足尖高ではすべての障害物条件において,②右足後縁踵部高では横ストライプにのみ疑似高齢者群の方が有意に高値を示した。膝関節を大きく屈曲させて跨ぐタイプは,①右足前縁足尖高,②右足後縁踵部高ともにすべての障害物条件において疑似高齢者群の方が有意に高値を示した。膝関節を最小限屈曲させて跨ぐタイプは,①右足前縁足尖高,②右足後縁踵部高ともに茶色と横ストライプ条件で疑似高齢者群の方が有意に高値を示した。また,コントロール群では①右足前縁足尖高において横ストライプと比べ縦ストライプの方が有意に高値を示した。

【結論】



視覚情報の異なる障害物において,健常成人は錯視の影響を受けるが,健常成人が高齢者と類似した視力,視野の状態となると,色覚に対しての影響が大きくなることが分かった。また,膝関節を最小限屈曲させて跨ぐタイプは錯視,色覚ともに影響を受けやすいことが考えられた。