The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-23] ポスター(予防)P23

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-23-2] 地域在住高齢者に対する二重課題を用いた歩行能力の年代比較
―Walking Stroop Carpetによる検討―

滝本 幸治, 竹林 秀晃, 奥田 教宏, 宅間 豊, 井上 佳和, 宮本 祥子, 岡部 孝生, 宮本 謙三 (土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科)

Keywords:地域在住高齢者, 二重課題, 年代比較

【目的】我々は,Walking Stroop Carpet(WSC)という本来机上で行われるストループ課題を歩行路に模し,指示された文字や色のターゲットを踏み分けながら歩行する課題の有用性について検討してきた。WSCは,特定のターゲットを選択する認知性負荷と,ターゲットを踏み越えるために足の運びが不規則になる運動性負荷が加わる特性がある。今回,WSCによる地域在住高齢者の年代比較により,年代間で歩行能力の差異が検出されたので報告する。


【方法】対象は,高知県某市にて実施された運動啓発事業の参加者で,年代別に65~74歳の前期高齢群62名(69.8±2.9歳),75~84歳の後期高齢群68名(79.9±2.9歳),85歳以上の超高齢群18名(88.2±2.2歳)とした。なお,年代別に認知機能(MMSE)と転倒歴に有意差は認めなかった。WSCは,幅1m×長さ5mの歩行路に「赤色」「青色」「黄色」「緑色」と書かれたターゲットを横4列×縦10列に配置したものである。ターゲットの文字は異なる色彩で印刷されており,文字と色彩は一致しない(例えば「赤色」という文字が黄色で印刷されている)。WSC課題は,色彩にとらわれず指示した文字のみを踏み歩く文字条件の他,色条件,白黒条件の3条件で構成し,各条件を1回ずつ歩行し所要時間を計測した。また,一般的な歩行能力評価である10m歩行(快適・努力)とTUGも実施した。統計解析は,WSC課題3条件と歩行能力評価の所要時間について,年代別3群間で一元配置分散分析および多重比較(Bonferroni法)を実施するとともに,一元配置分散分析にて主効果を認めた変数を説明変数,年代別3群を目的変数として多項ロジスティック回帰分析を実施した。いずれも有意水準は5%とした。


【結果】WSC課題3条件および一般的歩行能力評価のいずれにも主効果を認めた。多重比較検定の結果,WSC課題3条件は前期高齢群<後期高齢群<超高齢群(いずれもp<0.01)と年代が高いほど所要時間を要したのに対し(例えば文字条件では前期高齢群13.5±2.7秒,後期高齢群16.1±3.8秒,超高齢群19.1±4.9秒),10m歩行(快適・努力)とTUGでは前期高齢群<後期高齢群(いずれもp<0.01)であったものの,後期高齢群と超高齢群の差は認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果,回帰式は有意であり(モデルχ2検定p<0.01),WSC課題文字条件(オッズ比0.8,95%CI 0.7-0.9)と10m努力歩行(オッズ比30.8,95%CI 2.2-435.0)が年代を説明する有意な変数として検出された。


【結論】WSC課題により,一般的な歩行能力テストでは検出できなかった後期高齢群と超高齢群間の歩行時間の差異が検出された。また10m努力歩行とともにWSC課題(文字条件)は高齢者歩行の年代特性を反映することが示唆された。この結果は,地域在住高齢者の年代特性に応じた自立歩行期間の延伸や転倒予防戦略の一助になると思われる。