[P-YB-25-3] 産業保健分野における理学療法士の存在意義と可能性について
Keywords:産業理学療法, 産業保健専門職, 健康管理
【はじめに,目的】
総務省によると2016年7月時点で,就業者数は6479万人と増加傾向にあり,主な産業別就業者で最も多いものは卸売業・小売業,次いで製造業である。理学療法士が産業保健専門職として,労働者の総合的な健康状態の向上に寄与するための活動報告は少ない。産業理学療法を提供する意義と可能性を検討する。
【方法】
産業医及び産業保健師等が在籍しない,労働者数50名以下の規模の事業所勤労者15名を対象とした。内訳は卸売業・小売業就業者7名,製造業就業者8名である。実際に労働時の作業活動状況を視察し,職場における労働者の安全と健康の確保を目的とし,作業環境管理と健康管理を中心に介入を行った。介入前後,紙面アンケートを実施した。
【結果】
介入前アンケートにおいて,全ての対象者が,産業理学療法という言葉を「今回初めて知った」と答えた。また,全員が「現在は特筆すべき身体・精神的不安はない」と答えながらも,11名は「労働中に身体の一部に違和感を感じた事がある」とし,その部位を「腰部・肩周辺」と答え,卸売業・小売業就業者は「肩の痛みや張りと腰痛」,製造業就業者は「腰痛」を視察時に訴えた。また女性労働者2名が「出産後の身体変化に悩みがある」とし,直接面談を希望した。卸売業・小売業就業者は,デスクワークが主であった3名に対し,パソコンや機材等と椅子の距離や高さを確認,調整し,休憩時間に取り組める肩及び腰部周囲のストレッチを提案した。主に立位での労働を行う2名に対し,立位・歩行姿勢の確認と修正を行った。製造業就業者は,一日平均6.4時間立位姿勢での労働者が2名,同時間座位姿勢での労働者が4名であり,前者に対し,腰部に負担の掛らぬよう足元に小箱を設置し,片足を交互に乗せての労働を提案,腰痛体操の指導を行った。後者に対しては,機材・工具等と座面の距離や高さを調整した。出産後の身体的問題については,個室で面談を行い,出産に伴う身体的変化の説明や浮腫に対するセルフマッサージ,肩こり・腰痛体操の指導を実施した。また,雇用者へも同様に出産に伴う身体・精神的変化について説明し,配慮を依頼した。介入後アンケートにおいて,全ての対象者が,産業理学療法士の存在について「必要性があると思う」と答え,「継続した介入を希望する」とした。また,労働に関し「作業効率が上がった」「身体の違和感が軽減した」と回答した。
【結論】
労働安全衛生法を遵守し,労働者の健康と安全を確保する事は事業主の責務である。また,従業員の健康管理は経営の躍進にも繋がる。将来的に労働者の年齢も上がり,身体状況に応じた労働支援や疾病後復職時の再発防止等の支援は,必要性を増すと言える。また,女性の活躍できる社会を進める現代において,出産前後を含めたケアも重要であり,産業保健専門職として,企業での理学療法士の貢献度は高いと考える。
総務省によると2016年7月時点で,就業者数は6479万人と増加傾向にあり,主な産業別就業者で最も多いものは卸売業・小売業,次いで製造業である。理学療法士が産業保健専門職として,労働者の総合的な健康状態の向上に寄与するための活動報告は少ない。産業理学療法を提供する意義と可能性を検討する。
【方法】
産業医及び産業保健師等が在籍しない,労働者数50名以下の規模の事業所勤労者15名を対象とした。内訳は卸売業・小売業就業者7名,製造業就業者8名である。実際に労働時の作業活動状況を視察し,職場における労働者の安全と健康の確保を目的とし,作業環境管理と健康管理を中心に介入を行った。介入前後,紙面アンケートを実施した。
【結果】
介入前アンケートにおいて,全ての対象者が,産業理学療法という言葉を「今回初めて知った」と答えた。また,全員が「現在は特筆すべき身体・精神的不安はない」と答えながらも,11名は「労働中に身体の一部に違和感を感じた事がある」とし,その部位を「腰部・肩周辺」と答え,卸売業・小売業就業者は「肩の痛みや張りと腰痛」,製造業就業者は「腰痛」を視察時に訴えた。また女性労働者2名が「出産後の身体変化に悩みがある」とし,直接面談を希望した。卸売業・小売業就業者は,デスクワークが主であった3名に対し,パソコンや機材等と椅子の距離や高さを確認,調整し,休憩時間に取り組める肩及び腰部周囲のストレッチを提案した。主に立位での労働を行う2名に対し,立位・歩行姿勢の確認と修正を行った。製造業就業者は,一日平均6.4時間立位姿勢での労働者が2名,同時間座位姿勢での労働者が4名であり,前者に対し,腰部に負担の掛らぬよう足元に小箱を設置し,片足を交互に乗せての労働を提案,腰痛体操の指導を行った。後者に対しては,機材・工具等と座面の距離や高さを調整した。出産後の身体的問題については,個室で面談を行い,出産に伴う身体的変化の説明や浮腫に対するセルフマッサージ,肩こり・腰痛体操の指導を実施した。また,雇用者へも同様に出産に伴う身体・精神的変化について説明し,配慮を依頼した。介入後アンケートにおいて,全ての対象者が,産業理学療法士の存在について「必要性があると思う」と答え,「継続した介入を希望する」とした。また,労働に関し「作業効率が上がった」「身体の違和感が軽減した」と回答した。
【結論】
労働安全衛生法を遵守し,労働者の健康と安全を確保する事は事業主の責務である。また,従業員の健康管理は経営の躍進にも繋がる。将来的に労働者の年齢も上がり,身体状況に応じた労働支援や疾病後復職時の再発防止等の支援は,必要性を増すと言える。また,女性の活躍できる社会を進める現代において,出産前後を含めたケアも重要であり,産業保健専門職として,企業での理学療法士の貢献度は高いと考える。