第52回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-25] ポスター(予防)P25

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-25-5] 産業保健領域での活用が期待できる理学療法技法に関する文献調査

明日 徹1, 松垣 竜太郎2, 佐伯 覚3 (1.産業医科大学若松病院, 2.産業医科大学病院, 3.産業医科大学リハビリテーション医学講座)

キーワード:産業保健領域, 理学療法技法, 文献調査

【はじめに,目的】

近年,中高年齢労働者の就労能力の低下,疾病の多発,労働災害の増加がみられ,その対策として,労働者の身体能力の向上が求められている。中高年齢労働者の体力増進を図るための一助となる個別管理システムの構築を検討するため,リハビリテーション医学,あるいは理学療法で用いられている運動療法などの技術の中から,産業保健領域に応用できる技術を抽出・整理することを目的とする。


【方法】

当院の理学療法士15名により,本研究の趣旨に関連すると思われるキーワードを,ブレーンストーミング方式にて日本語,英語の両方で抽出・集約し,重複した用語,類義語等を整理した。抽出されたキーワードの組み合わせから検索式を作成し,文献検索作業を行った。文献検索エンジンは日本語論文(以下和文)に関してはCiNii,英語論文(以下英文)に関してはPubMedを使用し,2015年11月から12月末までの期間に検索作業を実施した。ヒットした論文をさらに絞り込むため,取り込み基準を①抽出期間を過去5年間(2011年~2015年),②論文の内容を,“比較研究(Comparative Study)”,“比較対照試験(Controlled Clinical Trial)”,“無作為化比較対照試験(Randomized Controlled Trial)”に限定,③言語は日本語または英語のみとし,2016年1月末から2月末までの期間に検索作業を実施した。その後,論文を精査し,本研究の趣旨に合わない論文は削除した。


【結果】

最終的にヒットした論文数は,201件(和文33件,レビュー2件含む,英文168件,レビュー20件含む)で,そのうち介入研究は107件(和文16件,英文91件)であった。論文の内容は,疾病予防に関するものが28件(和文10件,英文18件),作業関連のものが79件(和文6件;うち腰痛予防3件,英文73件;うち腰痛予防26件)であった。産業保健での活用が期待できる理学療法技法の介入内容は,和文では教育的指導に関するものが多く(70%),運動介入内容はウォーキング,ストレッチ体操程度であった。一方,英文では負荷量も明記され有酸素運動,筋力増強運動,ストレッチ等の運動介入内容(47.3%)に加え,特に作業関連(腰痛予防含む)の領域で,人間工学的介入を含んだ教育的介入,認知行動療法や心理面へのサポート介入,多職種による学際的介入内容が散見された(38.4%)。


【結論】

産業保健領域で疾病予防や作業関連性筋骨格系障害の予防に関して,我々が通常行っている理学療法技法を活用することは十分可能と思われるが,英文に比較して和文の報告が少なく,具体的な介入方法が少なかった。我が国において,人間工学的介入を含んだ教育的介入,認知行動療法や心理面へのサポート介入,多職種による学際的介入を含め,臨床業務を使用している理学療法技法を用いた介入研究での科学的根拠を構築していく必要がある。