第52回日本理学療法学術大会

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[P-YB-26] ポスター(予防)P26

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-26-1] 若中年者を対象としたロコモ度テストと身体機能の関係性

本田 真一郎1,2, 上野 真副1,3, 山内 康太1,4 (1.公益社団法人福岡県理学療法士会, 2.社会福祉法人孝徳会サポートセンター門司, 3.特定医療法人東筑会東筑病院, 4.社会医療法人製鉄記念八幡病院)

キーワード:ロコモティブシンドローム, 若中年者, 気づき

【はじめに,目的】

2007年に日本整形外科学会から提唱されたロコモティブシンドローム(以下:ロコモ)は運動器の障害のために要介護になる危険の高い状態と定義されている。高齢者を対象としたロコモの取り組みは多く行われており,ロコチェックと運動機能の関連性が報告されている。しかし若中年者への研究報告は少なく,ロコモ度テストと運動機能の関係性を調査した報告も少ない。今回,若中年者を対象にロコモ度テストを行い運動機能と身体特性との関係を調査することを目的とした。

【方法】

対象は北九州市八幡西区の健康イベントに参加した,20~60歳までの地域住民91名(男性26名,女性65名,平均年齢42.1±9.5歳)である。運動機能はロコモ度テストである立ち上がりテストと2ステップテスト,握力,膝伸展筋力,長座位体前屈,片脚立位時間,functional Reach Test(以下:FRT)を測定した。なお立ち上がりテストは年代平均の方法のみ実施した。調査項目は性別,年齢,BMI,痛みと運動習慣の有無を聴取した。立ち上がりと2ステップの結果より年代基準値以下をロコモ群,基準値以上を非ロコモ群とした。

統計解析は単変量解析としてロコモ群・非ロコモ群における2群間の比較を対応のないt検定,χ2検定を用いた。多変量解析は単変量解析にて危険率0.25未満であった因子を独立変数,ロコモの有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。危険率5%未満を有意水準とし,統計解析にはSPSS for Windows(ver. 23)を使用した。

【結果】

ロコモ群は40名,非ロコモ群は51名であった。単変量解析の結果,各項目をロコモ群/非ロコモ群で表記する。握力[31.6kg/34.3kg(p=0.2245)],膝伸展筋力[22.9kg/26.6kg(p=0.0925)],片脚立位時間[87.6秒/109.4秒(p=0.0036)],FRT[36.2cm/38.6cm(p=0.1074)],性別[女性80%/女性65%(p=0.1709)]であった。これらの因子を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果は片脚立位時間[OR=0.979(95%CI 0.965-0.993),p=0.04]であった。その他の因子はステップワイズの過程で除外された。

【考察】

本研究の結果,ロコモ群は非ロコモ群と比較して片脚立位時間が低下していることが示唆された。先行研究では年齢やBMIが抽出されたが,本研究ではロコモ判定に年齢基準値を用いているため抽出されなかったと考えられる。また若中年者を対象にした研究例は少なく,信頼性に乏しい。今後は対象者数を増やし,検証を行うとともにトレーニング方法の確立が必要である。

【理学療法学研究としての意義】

ロコモは高齢者だけでなく若中年者にも関連することが明らかになった。しかし若中年者は転倒による骨折や手術件数が少なく,身体機能の衰えに気づいていない方が多い。今回の評価を通して不安や焦りを感じている方が多く見られた。今後も若年者への予防理学療法に関わっていき,介護予防や健康増進に繋げていく必要がある。