第52回日本理学療法学術大会

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[P-YB-26] ポスター(予防)P26

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-26-5] 訪問リハビリテーション利用者における上肢支持の有無による端座位からの立ち上がり動作能力の差異

澤田 圭祐1, 橋立 博幸2, 柴田 未里1, 長沼 大1, 甲田 智洋1, 笹本 憲男3 (1.医療法人笹本会おおくに訪問リハビリテーション, 2.杏林大学保健学部理学療法学科, 3.医療法人笹本会やまなしケアアカデミー)

キーワード:地域在住高齢者, 立ち上がり, 手すり

【はじめに,目的】

端座位からの立ち上がり動作能力の改善や再獲得は在宅高齢者の日常生活における重要な課題の1つであり,より安全で安定的な端座位からの立ち上がり動作を遂行するために手すりを把持することによる上肢支持を用いることが少なくない。本研究では,訪問リハビリテーション(訪問リハ)の利用者において,上肢支持の有無による端座位からの立ち上がり動作能力の差異について検証することを目的とした。

【方法】

自宅屋内の日常生活において立ち上がり動作が自立し,手すりを用いずに立ち上がり動作を実施できる訪問リハ利用者25人(平均年齢76.7歳)を対象に,端座位からの立ち上がり動作能力(STS)を,座面高を膝関節90度の高さに設定した端座位から起立して立位に至り再び端座位へ着座するまでの1回の起立/着座動作に要する時間にて測定した。STSは,自宅の手すりを把持して上肢支持しながら立ち上がる条件(支持あり条件)と手すりを用いずに立ち上がる条件(支持なし条件)にて,各条件とも3回ずつ測定し,平均値と標準偏差とともに変動係数(CV)を算出した。また,各条件のSTSを測定前には,STSを遂行する自信の程度について0点(まったく自信が無い)から10点(完全に自信がある)で,各条件のSTS測定後には,STSを遂行した際の安楽性の程度について0点(非常にきつい)から10点(非常に楽である)にて,それぞれ対象者から聴取した。

【結果】

STSの測定結果は,支持なし条件1回目4.8±2.5秒,2回目4.7±2.7秒,3回目4.4±2.5秒,支持あり条件1回目3.2±1.4秒,2回目3.4±1.7秒,3回目3.4±1.7秒であった。条件間でSTSの平均値およびCVを比較した結果,支持あり条件で3回測定したSTSの平均値(3.3±1.6秒)およびCV(8.0±6.0%)は支持なし条件の平均値(4.6±2.5秒)およびCV(12.5±8.7%)と比べて有意な低値を示した(平均値p<0.001,CV=0.036)。また,支持あり条件でのSTS遂行の自信(8.2±2.1点)および安楽性(8.1±2.1点)は支持なし条件でのSTS遂行の自信(6.2±3.3点)および安楽性(6.5±2.7点)と比べて有意な高値を示した(自信p=0.002,安楽性p<0.001)。

【結論】

手すりを用いた支持あり条件では支持なし条件と比べてSTSの成績が有意に良好であったことから,自宅屋内の日常生活において立ち上がり動作が自立し,手すりを用いずに立ち上がり動作を実施できる訪問リハ利用者でも,上肢支持の有無によってSTSのパフォーマンスが異なり,手すりでの上肢支持を用いることでさらに高い立ち上がり動作能力を発揮できると考えられた。また,手すりを用いた支持あり条件では支持なし条件と比べて,所要時間が有意に短いだけでなく,自信や安楽性が高く,CVが小さかったことから,起立/着座動作における手すりの使用は起立/着座動作を遂行する速度,自信,そして安楽性を高めるだけでなく,日常生活で都度行われる起立/着座動作の確実性や安定性を高める影響があると考えられた。